研究課題/領域番号 |
22K00965
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 岐阜聖徳学園大学 |
研究代表者 |
武井 寛 岐阜聖徳学園大学, 外国語学部, 准教授 (10707368)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 人種 / 公民権運動 / 都市史 / 住宅政策 / ジェンダー / 黒人史 / 階級 / 白人保守派 / 公営住宅 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は1960年代後半以降のポスト公民権運動時代のアメリカ合衆国において、住宅政策がいかに変容してきたか、住宅都市開発省や公民権運動団体に注目して明らかにする。1968年公正住宅法の成立によって、住宅の購入や賃貸の際に人種を理由に差別することが禁じられた。しかし、住宅の人種統合はその後も積極的に改善されることはなく、むしろ「人種」という言葉を用いずに黒人などマイノリティを新たな手法で搾取する構造が形成されていった。本研究はこの現象に着目し、住宅都市開発省内部の改革、公民権団体など黒人の活動、そして人種統合に反対する白人の活動が交錯する中で、連邦政府の住宅政策がいかに変容してきたか検証する。
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研究実績の概要 |
4年間の研究プロジェクトの2年目にあたる令和5年度は、住宅差別の撤廃に向けて活動する人々と住宅の人種統合に反対する白人の活動を検討した。当初の予定では、夏休みにアメリカ合衆国カリフォルニア州に行き、カリフォルニア州立大学バークレー校のバンクロフト図書館にあるNAACP西部支部の記録、女性団体や公民権運動団体の史料、さらには住宅関連の史料調査を行う予定であった。しかし、いまだ落ち着く様子もない円安の影響で、アメリカ合衆国における史料調査は経済的にも困難であった。そのため、令和5年度は本プロジェクト中に収集する予定の一つであったアメリカ市民自由連盟(ACLU)のコレクションや、白人保守派・過激派の史料(Political Extremism and Radicalism)、さらには国立公文書館(NARA)に所蔵されている機密扱いが解除された連邦機関の史料を、国内の業者を通して収集することにした。アメリカでの史料調査はかなわなかったが、電子化された史料コレクションからできる限りの史料収集を行えた。また、7月に行われた同志社大学の都市共生研究セミナーの研究会「アメリカ史から考える多文化都市」に参加し、ロサンゼルスとアトランタにおける都市と交通網の発展と人種の関係について学んだ。研究成果という面では、令和5年度に注目した保守派・過激派に関連して、白人の人種意識に関する研究書の書評を発表した。10月以降は、収集した史料とこれまで収集してきた史料をもとに白人保守派・過激派に関する史料の分析を行った。特に住宅法に反対する白人保守派の動向と、それに対して連邦政府機関がいかに対応していたか検討した。ただし、勤務校で責任ある校務の負担が増えた年でもあり、研究成果を発表するという点では、計画していたようには進まなかったのは残念である。来年度以降は、さらに研究成果が発表できるように努力していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は円安という経済的な状況が史料収集に影響を与えた。本研究プロジェクトにおいて重要なアメリカでの現地調査を今年度は行えなかったことが残念である。しかし、今年度の研究テーマに関連する複数の史料を電子媒体でアクセスして入手することができたことは、研究を推進する上で非常に大きかった。近年アメリカの大学や公文書館では、貴重な史料も電子化が進み、それらを公開している機関が少しずつ増えている。こうした史料をさらに積極的に収集し、活用していきたい。どこにどのような史料があるか、という情報も今後は積極的に調べていきたい。勤務校の仕事としては、責任の重い仕事が増えた年であり、それらに忙殺されてしまった。今後もこうした仕事が減ることはないが、そうした中でも研究時間をうまく作っていきたい。ただし、そうした中でも今年度のテーマとも関連のある白人の人種意識に関する研究書の書評を発表できたことは良かった。今年度は研究論文を発表できなかったが、令和6年度は研究成果として論文として発表していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
ここ数年コロナ禍で渡米できなかったが、ようやくそれも落ち着いてきて史料調査も見通し立つようになってきた。しかし、今度は深刻な円安の影響という経済的な要因が長期的に継続している。このことも考慮に入れて、今後は業者のデータベースの利用や無料で公開されている史料の収集も力を入れていきたい。また、一橋大学や東京大学アメリカ太平洋地域センター、南山大学など日本国内の大学で所有している電子史料の利用の可能性についても調べて、積極的に史料収集をしていきたい。R6年度は第二次世界大戦の帰還兵に対する住宅政策に注目し、それがその後の住宅政策に与えた影響について検討する。また、1968年公営住宅法の成立過程についても再考する。さらに、住宅の人種統合に反対する保守的な白人女性の活動に関する史料分析を引き続き行っていきたい。
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