研究課題/領域番号 |
22K00984
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
松永 篤知 金沢大学, 資料館, 特任助教 (50805760)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 編む / 織る / 東アジア / 先史時代 / 編織技術 / 民族調査 / 民俗調査 / 三次元計測 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、東アジア先史時代における「編む」から「織る」への編織技術革新について、その技術進化及び生活・文化・社会にもたらした変化を考古学的実証により解明することを目的とする。 その目的を達成するために、四ヵ年計画で資料調査・民俗/民族調査・製作実験等を実施し、①編織物資料の集成・分類・編年、②「編む」から「織る」への技術革新プロセスのモデル化、③遺跡・遺構・遺物から見た編織技術革新の影響評価を行う。 本研究実施の結果、東アジア先史時代の編織技術革新が技術進化的に如何に達成され、生活・文化・社会に如何なる変化が起きたのかが明らかとなり、先史時代像に新たな一面が加わることになる。
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研究実績の概要 |
本研究では、東アジア先史時代において「編む」から「織る」への編織技術革新が、技術進化的には如何に達成され、結果として当時の生活・文化・社会の諸要素に如何なる変化をもたらしたのか、考古学的実証によって解明することを目指す。そのために、①編織物資料の集成・分類・編年、②「編む」から「織る」への技術革新プロセスのモデル化、③遺跡・遺構・遺物から見た編織技術革新の影響評価の3つを四ヵ年で実施する計画である。それぞれの前提となる実作業としては、資料調査・民俗/民族調査・製作実験等を行う。 初年度である令和4(2022)年度は、まず当初計画通り、7月までは編織物に関する情報を徹底的に集め、データを整理した。その過程で、6月に愛知県清須市朝日遺跡から出土した編織物・編織具の実見調査も行い、弥生時代の編織技術に関する良好な情報を得た。 その後、国内外の新型コロナウイルス感染流行状況等から判断して、8月以降に計画していた日本国内及び中国での編織物・編織具の資料調査・民俗/民族調査を、タイ北部山地民の民族調査に切り替えて実施した。 調査期間は8月中~下旬の半月ほどであったが、タイ北部の山地に住むモン族・ラフ族・アカ族の各村で編織物の製作・使用の実態を詳細に観察・記録することができ、想定以上の参考情報を得た。特にラフ族については、現地の方々の好意的な協力により、編物蓋付木製甑の製作過程の一部始終(素材採集から蓋・甑の完成まで)を観察・記録することができた。また、村内日常生活、水田・畑作業、治癒儀礼等、各場面における編物の使用のあり方も知ることができ、中には東アジア先史時代に当てはめることができるような民具・民族情報を得ることに成功した。現地のカゴ類や編織具などに対して、三次元計測を含む詳細な記録も取ったので、それらのデータは今後の考古資料との比較に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4(2022)年度の調査・研究は、計画変更して8月中~下旬に実施したタイ北部山地民(モン族・ラフ族・アカ族)の民族調査が想定以上の成果になったことから、その点では当初計画以上の進展と言える。本研究の重要な要素の一つである民族調査が、編織物・編織具の製作・使用の実態を捉える上で有益なものであることは改めて確認できた。これは、今後の本研究において、より一層推進すべきものと言えよう。 しかし、その一方で、国内外の新型コロナウイルス感染流行による制限が当該年度中に完全解除されることはなかったため、国内での編織物・編織具に関する資料調査・民俗調査、中国での編織物・編織具に関する資料調査・民族調査はほとんど実施できなかった。特に、中国での資料調査・民族調査については、中国政府によりかなり厳しいゼロコロナ政策が採られていて、現地調査が事実上不可能であった。また、同じく新型コロナウイルス感染流行による制限で、編織物の製作実験も人を集めることが難しく、令和4年度末時点で保留状態となっている。 また、本研究の成果の発信について、元々次年度(令和5(2023)年度)以降に積極的に学会発表するという計画ではあるが、令和4年度は連名の口頭発表1本のみとなってしまった。できることならば、もう少し文章化したものを各方面に発信したかったが、当該年度中にそこまではできなかった。 以上の進捗状況を総合的に判断すると、タイ北部での民族調査のように想定以上に進んだ部分があるとは言え、研究計画全体としては「やや遅れている。」という自己評価にならざるを得ない。ただ、論文化の手前のところまで進めているものが複数あるので、「遅れている。」というほどまで計画が大きく停滞しているわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
初年度である令和4(2022)年度については、新型コロナウイルス感染流行による制限で、タイ北部山地民の民族調査以外は遅れ気味となってしまった。しかし、その一方で、編織物・編織具の製作・使用に関して民族調査が有益であることが確認できたので、令和5(2023)年度以降も民族調査はさらに進めていくことにする。 折しも2023年5月になって、国内では新型コロナウイルスが5類感染症となり、また世界的にもWHOが新型コロナウイルスの緊急事態宣言を終了としたことから、2023年6月以降、各種調査を積極的に進めていくこととする。 まずは、国内で編織物・編織具の資料調査・民俗調査から実施する予定で、8~9月には海外での編織物・編織具の資料調査・民族調査に移る予定である。国内・海外問わず、各所の考古・民具資料に対して三次元計測を含む記録を取り、また各所における編織物・編織具の製作・使用の実態を観察・記録し、東アジア先史時代における「編む」から「織る」への編織技術革新に迫るための情報を集める。ただし、海外調査については、中国での活動がまだしばらく難しい可能性が高いため、中国の日本人受け入れ状況が良くなるまでは、台湾やタイを調査対象とする。 また、9月頃までの調査で得た知見を踏まえ、2023年の冬頃には編織物の製作実験も実施する。東アジア先史時代の編織物・編織具の構造・機能等を、実験によって検証する。 研究成果の発信については、令和4年度中に論文化を目指して進めていたものが複数あるので、2023年の調査成果も随時取り入れながらそれらを形にして、学術誌への投稿を行う。 令和5年度は上記のように研究を進め、それを受けて令和6(2024)年度も各種調査と研究成果発信を行う。そして、最終年度である令和7(2025)年度には、東アジア先史時代における編織技術革新像の結論をまとめて研究を完成させる。
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