研究課題/領域番号 |
22K00985
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
伊藤 淳史 京都大学, 文学研究科, 助教 (70252400)
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研究分担者 |
千葉 豊 京都大学, 文学研究科, 准教授 (00197625)
冨井 眞 大正大学, 文学部, 教授 (00293845)
笹川 尚紀 京都大学, 文学研究科, 助教 (00456807)
内記 理 愛知県立大学, 日本文化学部, 准教授 (90726233)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 考古学 / 都市化 / 白川道 / 土佐藩邸 / 尾張藩邸 / 歴史学 / 古道 |
研究開始時の研究の概要 |
京の東北近郊に隣接し、東国との重要な往還路たる古道白川道沿いの地域で展開される長期の歴史的盛衰に焦点を当て、街道を含めた土地利用状況の変遷・人流と物流の動態・とりまく地形環境の変化を、考古学の発掘調査によって具体的痕跡や出土遺物から検討する。その結果から、「都市化」と呼びうるような事象を定義づけるとともに、それを左右する要因が何かを示す。そのうえで、京との関係を双方向的な視点で検証することを通じて、近郊地域にとっての「都市化」の歴史的意義とそのもつ本質的意味の呈示を、最終的な目標とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、①古道の白川道に関連する発掘調査成果の精査と検証を継続し、対象を地域住民も含めた広い範囲で広報や情報収集を展開した。また、②古道周辺の都市化に焦点を当てた研究としては、対象域で濃密な考古学的情報が得られている中世と幕末を中心に、既発掘資料の再整理や関連資料の集成分析を進行させるとともに、学術目的の発掘調査による検証と新資料の獲得を試みた。あわせて、歴史的古道にかかわる比較研究という視座からの検討も継続して行っている。 ①については、本共同研究を含めた一連のプロジェクトによる史資料の展示などを契機に、大学の所在する吉田地域において地域史への関心が高まり、要請に対応する形で包括的な成果紹介の発表を行った(千葉:吉田コミニティカフェ2023年12月)。 ②については、中世にかかわるものとして、昨年度に続いて用途不明の土師器鉢形製品についての検討をおこない、鴨東地域以外の資料集成と分析を加えて全体を完了させた(伊藤:「塩壺」と俗称されている鉢形製品の検討(下)2024年3月)。幕末期にかかわるものとしては、京都大学本部構内の尾張藩吉田邸と北部構内の土佐藩白川邸について重点的に検討を進め、両藩の故地である愛知県および高知県において成果発表と情報交換の機会をもつことができた(笹川・伊藤:尾張藩社会研究会2023年7月、および笹川:高知県立坂本龍馬記念館講演会2024年2月)。また、比較研究にかかわるものとしては、内陸アジアの歴史的交通路にかかわる踏査を報告している(内記:タキシラ探索記2024年3月)。 また、とくに上記の土佐藩白川邸に関連して、研究分担者全員が参加しフィールド活動として、京都大学北部構内において遺構確認の学術発掘調査を実施した(2023年12月)。幕末期遺構の確認には至らなかったが、遺跡の遺存度や立地環境に関する貴重なデータを得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主たる目的は、平安京・都市京都の近郊として、古道の白川道を介在させながら都市的様相と郊外農村とを反復するように推移してきた京都大学吉田キャンパス一帯の歴史的推移を、蓄積されてきた多くの発掘調査成果を主体にしながら意義づけをおこない、比較研究も加えながら、成果の活用とさらなる研究進展をはかることにある。 上記の目的に照らすと、既往の調査成果全般を広範に紹介する機会を持ってきていることや、幕末藩邸遺跡関連ではその故地の地域での発表や情報交換をおこない得ている点、また、海外での踏査についても検証を継続している状態にあることから、地域との連携も含めた成果の活用や比較研究は順調に進捗をみていると自己評価したい。 これに加えて、昨年度実施した遺跡物理探査地点において、本年度は学術発掘調査を実施できた。また、外部への発表には至っていないが、関連する既発掘調査資料の再整理を継続的に実施しており、未発表の資料は資料化を継続的に進めている。このように、最終報告書として発表する準備をおおむね整えることが出来ているという点でも、進捗は順調であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたることから、①最終成果報告書の作成②成果の紹介と活用のための広報、を軸に活動を推進する。 ①については、期間中に実施した調査の報告と、研究課題に関連して分担者各自が実施した研究の論考を掲載する。前者にかかわる調査報告は、幕末期土佐藩白川邸関連の既発掘資料の再整理、遺跡物理探査と探査地点の発掘調査、についてを中心としながら、その他の未報告史資料についても、公開可能なものは積極的に掲載紹介する。 ②については、京都大学総合博物館における展示と解説リーフレットの作成、講演やワークショップといった展示関連行事など、が活動の中心となる。 上記に加え、研究期間中には、考古学・文献史学の関連研究者との連携のみならず、大学周辺地域における一般市民の文化活動とも接点が生じてきている現状をふまえて、地域文化財を仲立ちとした持続的な地域連携に向けた多様な活動を立案し、実施することを目指したい。
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