研究課題/領域番号 |
22K00994
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03050:考古学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪 |
研究代表者 |
寺井 誠 地方独立行政法人大阪市博物館機構(大阪市立美術館、大阪市立自然史博物館、大阪市立東洋陶磁美術館、大阪, 大阪歴史博物館, 係長 (60344371)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2026年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 考古学 / タタキ技法 / タタキメ / タタキ板 / 異文化受容 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、タタキ技法という土器の製作技法に着目し、その際に表面に残る「タタキメ」の観察を基に、5~9世紀の日本列島と朝鮮半島の土器の比較検討を行う。そして、朝鮮半島から伝わった新しい文化要素が日本列島各地でどのように受け入れられたかということを明らかにする。この時期は中央が主導しての異文化受容が強調されがちであるが、各地域の特徴的な考古資料を基にして、時には中央を介しない異文化受容の存在に気付かせてくれ、地域主体の対外交渉の復元につなげることができる。
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研究実績の概要 |
本研究は、タタキ技法という土器の製作技法に着目し、タタキ板やタタキメの実物調査を基に、5~9世紀の日本列島と朝鮮半島の技法の比較検討を行う。そして、朝鮮半島から伝わった新しいタタキ技法が日本列島各地でさまざまな形で受け入れられるという、異文化受容の多様性を示すことを目的とする。 2022年度は5年計画の1年目で、日本列島各地の情報収集に重点を置いた。タタキ板については、日本列島内の弥生~奈良時代で6遺跡11点の出土事例を確認した。過去に実物調査したことのある資料の調査記録や写真から木目と条線の関係、タタキ面の縁の形状を再整理し、タタキメからタタキ板を復元するための視点の整理を行った。 また、格子文タタキという異文化要素が各地でどのように受容されたかを確認する研究の一環として、宮崎県域で格子文タタキが採用された在来土器(古墳時代中~後期)の調査を行った。この土器は酸化焔焼成の壺もしくは甕で、通常は平行文タタキが施されるものの、器壁が厚く、内面には粘土紐接合の痕跡が残り、当て具を使った痕跡がないことから、叩き締めではなく器面を整えるためのタタキであることがわかる。在来で一般的にある平行文タタキの土器と格子文の土器を比較して観察したところ、平行文が格子文に置換されているだけで、基本的な製作技法はいっしょであった。この点から、朝鮮半島的な要素の一部のみが採用された事例であり、古墳時代中期の河内湖沿岸のような、朝鮮半島の技法一式が土器に採用される中で格子文タタキが施されている事例とは異なることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
12月まで勤務先の業務が繁忙であったこともあり、あまり資料調査に行くことができなかった。ただ、情報収集は十分にしていることもあり、次年度以降の資料調査に生かすことができる。
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初に、①タタキ板の復元的研究、②タタキメの切り合いの観察を基にした製作工程の連続性(動作連鎖)の比較検討、③格子文タタキを部分的に採用する土器の検討を通じた異文化受容の多様性の検討、という3つの課題を掲げた。 ①については、タタキ板の縁の圧痕、ナデが施された口頸部にタタキ板が接触した痕跡、条線の凹部の中にある木目の圧痕などを基にして復元的な研究ができると考えている。これについては特定の地域・時期に限ることなく、日頃から資料観察の際に注意することによって見出し、事例を増やすことによって、復元的な研究ができる。2023年度は、平行条線と木目が斜交するタタキメをもつ須恵器が複数報告されている北陸地方での実物調査を予定している。 ②については、福岡県域の6世紀後葉の軟質系土器の調査を重点的に行う。2022年度で終了した当て具の研究(基盤研究(C)19K01106)でも研究課題としていたものであるが、コロナ禍の影響で資料調査が十分できなかった。この種の土器はタタキメについても特徴的であるので、須恵器など同時期のタタキ技法を用いる土器と比較対照しながら、研究を進める。 ③については、2022年度の宮崎県での調査成果で示したように、日本列島では在来土器に部分的に格子文タタキを採用している土器がある。時期は弥生時代後期から古墳時代後期と幅広く、北部九州や近畿地方だけではなく、北陸地方にもある。2023年度は北陸地方での事例確認の調査を進めたいと思う。 上記以外に、東北地方の8~9世紀の須恵器で、近畿地方とは異なるタタキ技法や器形の壺があることを情報収集の中で把握した。タタキ技法の地域別の比較検討を進める一環で、秋田県もしくは山形県で調査を実施する予定である。また、本研究の重要課題である朝鮮半島のタタキ板、タタキメの調査研究については、韓国の受け入れ側が可能であるならば調査を進めたい。
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