研究課題/領域番号 |
22K01017
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
横山 佐紀 中央大学, 文学部, 教授 (70435741)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | メモリアル・ミュージアム / 記憶 / 負の遺産 / ホロコースト写真 / ハンセン病 / 多文化共生 / モノ / ミュージアム / 多文化 / 災禍の展示 / 展示デザイン / 視覚メディア / 負の記憶 |
研究開始時の研究の概要 |
ホロコーストを伝えるミュージアムにとって、災厄の現場に建つことは重要な意味をもつ。しかし、アメリカのホロコースト・ミュージアム群にはその現場が欠けており、それゆえに、写真や映像などの視覚メディアと優れた展示デザインによってホロコーストを再構成せざるを得ない。だが、複数館で定型的に用いられているのは、ナチスやその協力者によって撮影された視覚メディアである。本研究はアメリカにおけるホロコースト・ミュージアム群を横断的に比較し、視覚メディアと展示デザインがホロコーストの表象を定型化していることを検証した上で、負の記憶の定型化ではなく、真に多声的な災厄のミュージアムがいかにして実現可能かを考察する。
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研究実績の概要 |
本研究が対象とする合衆国ホロコースト・ミュージアム(以下、USHM)との比較のために、本年度より、国内のメモリアル・ミュージアム、国立ハンセン病療養所邑久光明園の社会交流会館における展示、資料調査に着手した。 USHMは、ホロコーストの現場を欠きつつも、効果的な展示デザインによってこの出来事を伝えるメモリアル・ミュージアムである。これに対し、日本の国立療養所に設置されているハンセン病関連ミュージアム(社会交流会館)は、ハンセン病患者の隔離施設であった場所に設置され、負の出来事の実態を来館者が実感をもって体験することができることが特徴である。そこにたどり着くまでの不便さをも含んで「場所」がきわめて重要なメディアとして機能している点においても、社会交流会館はUSHMとは対照的なミュージアムである。 その一方で、邑久光明園社会交流会館の展示室は一室のみであり、そこに常設展と小さな企画展コーナーが設けられている。開館時のプランを尊重し、常設展示はほとんど変更されていない。ここには、社会交流会館が、場所のもつ力と学芸員の研究成果としての展示との間でいかにバランスを取り、「現場に立つミュージアム」としての役割を果たしうるのかという課題の一端が表れている。また、社会交流会館の事業には入所者自治会の協力が不可欠であること、入所者の高齢化に伴い資料収集をいかに進め活用するのかといった事柄が、療養所の将来構想とも関連する課題であることも明らかとなった。 以上の調査において、ホロコーストと日本のハンセン病問題には優性思想など共通する論点があることが確認された。これに伴い、メモリアル・ミュージアムに関する文献、日本におけるハンセン病に関する資料(法律、宗教、医学関連、自治会刊行物等)、アメリカの隔離療養所に関する資料、ハンセン病の表象(絵画作品、写真など)に関する資料を渉猟した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度はアメリカでの調査を行うことができなかったため、当初の計画よりはやや遅れている。一方で、国内のメモリアル・ミュージアム(邑久光明園社会交流会館に加え、国立ハンセン病資料館)での調査を開始し、関連する国内外の文献も一定程度渉猟することができたため、メモリアル・ミュージアムをより広い視野から検討する方向性を見出すことができたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の方向で研究を進める予定である。なお、調査にあたっては個人情報の保護に最大限の注意を払うものとする。
(1)海外調査:アメリカでの調査を実施する。2024年7月から8月にかけてアメリカ本土唯一のハンセン病療養施設であるカーヴィル療養所およびナショナル・ハンセン病ミュージアムで調査を行い、メモリアル・ミュージアムとしてのハンセン病関連ミュージアムの日米の比較を試みる。併せて合衆国ホロコースト・ミュージアムの展示調査を行い、出来事の現場を欠く大規模なメモリアル・ミュージアムの展示デザインを検証する。(2)負の出来事の表象の調査:合衆国ホロコースト・ミュージアムについては、展示における写真の使用に焦点を当てるが、ハンセン病関連施設においても同様の問題を検証する。「負の出来事の表象」との観点に立ち、ハンセン病がこれまでどのように表象されてきたのかを、絵画作品や19世紀の医学写真を含めて検証する。(3)ハンセン病関連ミュージアムでの資料調査:社会交流会館の担当学芸員の協力のもと、引き続き、展示調査、収蔵資料調査、文献渉猟を行う。国立ハンセン病資料館でも文献調査を進める。
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