研究課題/領域番号 |
22K01026
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03070:博物館学関連
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研究機関 | 北九州市立自然史・歴史博物館 |
研究代表者 |
真鍋 徹 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (90359472)
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研究分担者 |
蓑島 悠介 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (80714435)
中原 亨 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (10823221)
中西 希 北九州市立自然史・歴史博物館, 自然史課, 学芸員 (40452966)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 里山景観 / 生物間相互作用 / 展示用資料作製法 / 視覚化・知覚化 / 情報伝達手法 |
研究開始時の研究の概要 |
里山がもつ地域に特有の人と自然との関わりや、里山の成因、里山の現状、里山にくらす生物の多彩な営みなどを科学的に記録し、広く市民に伝えることは地域博物館の責務である。 本研究では、里山で繰り広げられた人の活動とその変遷などの社会科学的な視点も含め、里山の成因や変化、現状などの科学的な「里山のすがた」を、博物館来館者にわかりやすく伝え、知覚してもらえる汎用性の高い展示手法の構築に向け、効果的な展示資料の作製法を開発し、わかりやすい展示資料の見せ方を確立する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は、以下の項目を中心とした調査や資料収集を実施した。 ①調査対象地である山田緑地(北九州市)が里地里山として利用されていた時代の景観構造を市民にわかりやすく(直感的に)伝えることのできる解説グラフィック作成に向け、景観復元に活用できる資料の収集、および収集した資料を用いた解説グラフィック作成手法の検討を実施した。 ②山田緑地において、かつての里山環境の復元を目的に皆伐を実施している区域(伐採区)で、皆伐後の植物相や植生の変遷を把握するための調査を継続実施した。また、本科研の一環として実施する「現在およびかつての里山のすがたを科学的かつわかりやすく紹介するための展示」の実施に向け、これまでに収集した調査データの展示への実装に向けた解析方法や視覚化方法の検討を実施した。一方、山田緑地におけるかつての主要樹木であるコナラの老齢化などのため、当該年度に山田緑地においてナラ枯れ被害が急速に拡大した。これを受け、放置された現在の里山が抱える(ナラ枯れなどに代表される)課題も上記展示に組み込むべく、展示構成(シナリオ)の再考および新たな展示用資料の収集を開始した。 ③山田緑地において、市民を対象とした里山の観察会を企画・実施し(2回の企画のうち1回は雨天中止)、市民が身近な林にどのような意識や関心を持っているかなどを、対話をとおして把握した。本観察会は、今後も継続し、市民の声のさらなる収集に努める予定である。 ④伐採区および隣接する非伐採区(現在の里山)における鳥類相および哺乳類相を把握するため、自動撮影カメラを設置し画像(静止画・動画)データを収集した。また、これらの画像データを上記の展示資料とするための手法検討を進めている。あわせて、上記展示において、動物類の剥製などの実物標本の展示に好適なケースの構造などの検討も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、暖温帯域における「里山のすがた」を市民に科学的かつわかりやすく伝え、知覚してもらうことのできる汎用性の高い展示手法を構築することである。この目的の達成に向け、①里山の利用状況・植生・景観構造・生物相の把握、②生物間相互作用の把握、③展示用資料作製法の開発、④展示用資料の見せ方(情報伝達方法)の確立、⑤展示効果の検証と展示手法の標準化を実施する。 研究2年度目も、引き続き調査対象地とした山田緑地(北九州市)において、上記①、③および④を中心とした研究を実施した。このうち、植生・景観構造・植物相の把握は、ほぼ予定どおり実施することができた。調査対象地の昆虫・鳥類・哺乳類相把握に向けた調査は、研究代表者および分担者の勤務する博物館の常設展示リニューアルに伴う業務が想定以上に多かったことなどのため、やや計画どおりに実施することができなかった。ただし、鳥類および哺乳類相把握および生物間相互作用把握手法検討に向け、伐採区(かつての里山を想定)および隣接する非伐採区(現在の里山)に自動撮影カメラを設置し、継続的なデータ収集が行えている。 また、人間による自然への働きかけの変化に起因する「ナラ枯れ被害の激甚化」などの新たな社会的課題の発生といった、現在の里山が内包する課題を顕在化(展示において視覚化)し、個々人の問題として捉えてもらう(知覚化してもらえる)展示手法検討や展示資料収集も実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究3年目には、かつておよび現在の里山における生物相、特に昆虫類・鳥類・哺乳類相の把握に向けた調査および関連標本・資料の収集を加速させる。また、かつての人による里山の利用状況をより具体的に現出するための聞き取り調査や文献調査も継続する。 生物相の把握とあわせ、伐採区(かつての里山を想定)および隣接する非伐採区(現在の里山)における開花植物や結実植物の種類把握や、それら植物を利用する生物相の把握を行い、かつておよび現在の里山における生物間相互作用復元に向けた科学的情報を蓄積する。わせせて、 ナラ枯れに関連する資料や実物標本の収集を実施する。 また、「里山のすがた」を科学的にわかりやすく伝えるための展示資料の収集を行う。合わせて、収集した資料の見せ方(情報伝達方法)を検討し、特に温湿度や虫害対策がままならない場所での出張展示に用いることのできる実物標本用の展示ケースなどの試作品を作製する。
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