研究課題/領域番号 |
22K01034
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04010:地理学関連
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
長谷川 均 国士舘大学, 文学部, 教授 (80208496)
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研究分担者 |
中井 達郎 九州大学, 比較社会文化研究院, 共同研究者 (10550915)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 造礁サンゴ / 生サンゴ / 死サンゴ / 生サンゴ指標 / UAV / ドローン / サンゴ礁 / サンゴ被度 / モニタリング / マルチカメラ / サンゴ礁のマッピング / サンゴ礁のモニタリング / マルチバンド |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、多チャンネルUAVで撮影した高解像空撮画像を使用し,カラー画像では判別できない生きた造礁サンゴの分布を, 564nm前後の波長帯を使って周囲の底質から区分する手法を開発し発展させるものである.さらにこの手法も応用し,2014年以降8年間にわたりUAV画像を記録し続けている底質が短期間で劇的に変わる特異なサンゴ礁で,海草・海藻類の消長や生サンゴの変動を指標とした10年間にわたるサンゴ礁環境変化の要因解明を試みる. サンゴの分布や底質がきわめて短期間に劇的に変化するという特徴を持つ地域で,これらの動態を明らかにすることは,学術的,社会的波及効果が大きいと考えられる.
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研究実績の概要 |
マルチカメラを搭載したUAV でサンゴ礁浅海域を撮影し,広範囲にわたる画像から生・死サンゴの分布を捉える試みは2023年度で2年目を迎えた.1年目の成果として,可視域の画像では生・死サンゴの判別はできないが,Red Edgeの波長域では白色に輝く特徴的な部分が存在し,この部分は生きたコブハマサンゴのマイクロアトールや塊状ハマサンゴ,外側礁原の卓上ミドリイシ類に相当することがわかった.その結果を応用して,Normalized Difference Live Coral Index (生サンゴ指標)を考案した.2023年度は,生サンゴ被度の変化に敏感な波長領域を使って,天候や水深などさまざまな条件下での撮影を試み検証を継続することを目標とした. 調査内容は,サンゴ礁海域の測線に沿う底質調査,断面測量などのグランドトゥルースとUAV空撮である.調査地域は,沖縄県国頭村の赤崎海域,恩納村真栄田岬,島尻郡伊平屋島北西海域の3箇所である.赤崎は経年変化の追跡を続けており,真栄田岬と伊平屋島北西海域は新たに追加した海域である.真栄田岬は生サンゴのマイクロアトールが多数分布し,伊平屋島北西海域は様々な種類の造礁サンゴが分布する健全なサンゴ礁環境にある海域である. 生サンゴ,死サンゴの分布をマルチスペクトル画像の解析を通じて明らかする前提で,実証データを収集することが目的であった.調査は天候・海象に恵まれ,予定していた撮影とフィールドワークを無事終了することができた. 1年目に得られた「生サンゴ指標」の検証をおこない有効性を確信したが,Red Edgeの波長域だけを使う簡便な方法でも生死サンゴの判別ができる可能性も示唆された.3年目の最終年度は,この方法を確立し,現場での保護,保全活動など社会貢献に向けた活用を提案したいと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の理由で,研究はおおむね順調に進展していると考えている. ①:複数の地域で,様々な条件における空撮データの収集に成功していること.また,②:生サンゴと死サンゴを判別できる波長帯の抽出に成功していること が主な理由である.①,②のことから,本研究は当初に掲げた主目的の達成は可能であると考えている.また.③:生サンゴ指標の提案も可能と考えている. ただ,1年目に「今後は天候や海象,水深など様々な条件下で検証したい」という点に関しては,検証が不十分であると考えている.特に様々な水深でもこの生サンゴ指標が有効に使えるかどうかに関する検証は不足している.限られた調査日数下では,大潮,中潮,小潮などに対応した水深下での調査は限界があることが理由である. このような点はあるものの,研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えている.成果は,研究集会等で公表している.また成果の一部は,2023年に論文として公表済みである.
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今後の研究の推進方策 |
2024年の最終年度は,研究成果のまとめを主眼とするが,調査も継続して実施する予定である.調査地域は2023年度と同一の以下の地域を候補としている. ①:沖縄県国頭村赤崎海岸 ②:沖縄県恩納村真栄田海岸 ③:沖縄県島尻郡伊平屋島北西海岸. 調査項目,調査方法は調査データの均質性を保つことが重要と考えるので,同一機材を用いた空撮並びに海域でのグラウンドトゥルースを実施したい.なお,最終年度にあたり可能であれば現地での分光測定を実施し,今後の生死サンゴの判定に必要なデータも収集したいと考えているが,現有機材が劣化しているので,これに関しては整備状況に応じて実施を検討したい. 本研究は,カラー画像では判別できない生きたサンゴの被度を,水深や水質の変化にはほとんど影響を受けない564nm前後の波長帯の画像を使って周囲の低湿から区分する手法を開発し,「生サンゴ指標」に相当する指数を見いだすことを一つ目の目的にしている.低空を飛行し画像を撮影するUAV(ドローン)とRTKを使ったオートパイロットで画像を得るため,同一サイトで繰り返し,継続的にモニタリングできる.上にあげた3つのサイトは,海草・海藻類の被度が劇的に変化する特異なサンゴ礁であったり,生サンゴの分布が後半に見られるサンゴ礁浅海域である.本研究では,生死サンゴの判別方法の開発だけでなく,生サンゴの変動を指標とした環境変化の要因解明を試みることもまたこの研究の到達点としたい. 研究実績の概要で述べたように,red edge 領域だけで生死サンゴの判別が可能である可能性が示された.2つ以上の波長領域を使って計算するサンゴ指標は,撮影時の太陽高度や天候などに大きく影響を受けてしまう可能性がある.使用する波長帯が増えれば増えるほどパラメータが複雑になり,「光環境」の影響が増幅されてしまう.現場でより簡便に使用するための工夫も必要である.
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