研究課題/領域番号 |
22K01053
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04020:人文地理学関連
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
藤田 佳久 愛知大学, 東亜同文書院大学記念センタ―, 名誉教授 (70068823)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 清国末期 / 民国期 / 商業組織 / 会館 / 公所 / ギルド / 荒尾精 / 東亜同文書院生 J.B.バージス / 中国近代化 / 商圏 / 移動圏 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、20世紀前半期の清国末期から民国期にかけて急速に進んだ中国近代化の中で、清国期を通じて形成されて、伝統的とされてきた商業組織のうち、その中心となっていた「会館」と「公所」を取り上げ、それが列強の進出、内乱、日清戦争、辛亥革命による帝国清国の滅亡と民国の誕生への連鎖などの激動の波の中でどのように対応し、従来の個別的で伝統的な経済地域の構成とそのシステムを改変し、新たな経済地域の再編、統合を図ったかについて、その変化過程とその要因を明らかにし、あわせてそこに派生した地域差についても明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究は中国の清朝末期から民国期における伝統的商業組織とそのダイナミックな地域的拡大を追い、そこに見出される地域的システムを分析することにより、今日の中国の商業的地域システムの底辺、基盤を解明しようとするところに目的がある。 中国の清朝末期の商業組織を担った商人たちは、江戸時代の日本と同様に「士農工商」として社会階層の最下層に置かれ、彼らには国など行政から何の保護もなく、日本以上に厳しい環境に置かれていた。そのため、元来の商業地はもちろん、他地域へ進出する際も、他の住民や集団・賊などによる敵対行為から身や組織を守るために同郷組織を形成した。その代表が「会館」と「公所」であり、省によっては他の名称もみられた。そのうち、「会館」は同郷出身の商人達の相互扶助組織で、異郷で亡くなった商人を出身地の同郷へ送り返すほどの強い組織力をもった。また、「公所」は同郷出身の同一業種の商人達のつくる組織で、西欧中世の職人集団ギルド制と類似するところもあった。この両組織は商業活動の拡大で、他省へ進出立地する時に、このような組織を進出都市に結成し、そこを核として、さらに外地へ拡大するときの拠点にもした。その際、同郷出身者同士の信頼のために、自律的で道義的内容の「章程」をつくり、商業活動上の公平性と信用性を確保した。 第1年目の研究成果は、このような組織の存在を、清国との貿易実務者養成をめざした東亜同文書院(1901上海設立)の構想をめざした荒尾精が『清国通商綜覧』で日本へ初めて紹介し、それに刺激されて東亜同文書院生の各地への踏査調査旅行でその調査を行った初期のデータから清国末期は、まだ上海が頂点ではなく、漢口が各省各地の商業組織が目指した進出都市目標であることを示した。 このような調査研究は、清末・民国期の中国では行なわれておらず、日本側(前述荒尾と書院生)および一部のヨーロッパが注目したにすぎなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
清国末期から民国期における自立的な商業組織である「会館」および「公所」の存在を歴史的文献および東亜同文書院生たちの長期にわたるフィールドワークから確認した。大枠は「会館」、「公所」として機能の差異は確認できるが、名称的には地域によって多様性があり、同郷出身者により自律的な「会館」と同業者集団をベースとする「公所」が、相互に関係しあい、必ずしも明確な差を示せないケースも見られた。ヨーロッパの研究者はこれらをギルドと称し、ヨーロッパと比較したりしているが、あえてヨーロッパの概念のギルドを使うなら「公所」の方がふさわしいこともわかった。 清国、民国期の「会館」「公所」の地域的展開を事例的にみると、列強による上海などの開港以前は、長江中流の漢口がそれら商業組織の拠点であり、それはそのまま、中国経済の拠点が漢口であることを示していた。それが開港された上海が清末に浮上してくる前景としてみられたこともわかった。なお、民国期になると、民国政府はそれまで国の管轄外であった商業組織「会館」「公所」レベルに日本から倣った「商業会議所」を設立し、影響力を及ぼそうとした。
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今後の研究の推進方策 |
今年度以降は、「会館」、「公所」のより具体的な商業組織としての機能と、この組織の他省への地域的拡大のメカニズムの解明をすすめたい。事例的には清末に国内流通および国際貿易の拠点となっていた漢口を中心とした長江流域における地域的展開過程、新興上海への「会館」「公所」の集積過程、広東や香港を中心とした華南における「会館」、「公所」の展開と集積、四川や雲南、そして満州など後発で新興拠点の形成などを明らかにしたい。資料は東亜同文書院生によるレポートを第一次資料とし、戦後刊行された中国都市情報を第二次史料として用い、なお、日本へも進出し、神戸・長崎・横浜・函館を拠点形成したその実態把握と文献調査も進めたい。
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