研究課題/領域番号 |
22K01072
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
鈴木 伸隆 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10323221)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | コールセンター産業 / 労働者 / 経済的エンパワーメント / 社会的・文化的少数派 / フィリピン / コールセンター / シングルマザー / ゲイ / ネオリベラル開発政策 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、世界規模で展開する海外コールセンター産業の躍進が目覚ましい。高度な英語力を有する人材を必要とするコールセンターは、「知の集積地」を目指す途上国の注目を集めている。そうした中、英語を母語としないフィリピンは、2011年にインドを抜き世界最大規模の拠点となったが、男性が市場を独占するインドとは対照的に、フィリピンでは女性(シングルマザー)やゲイが優位の職場へと転換している。本研究はネオリベラルな開発推進政策と、近代的な生き方を賞賛するメディア言説空間を複眼的に捉えながら、フィリピンの社会的・文化的少数派が知的労働者として、コールセンターへと誘い出される規律権力作用を解明する。
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研究実績の概要 |
研究初年度にあたる本年度は、フィリピンICT産業開発政策は何を契機に構想され、どのような知的労働者像を創造しようとしたのかといった歴史的背景を扱った。具体的には、1992年以降のラモス政権(1992-1998)からアロヨ政権(2000-2010)までの18年間を対象とし、フィリピン経済自由化を推進するためにICTの規制緩和が行われた軌跡を追った。フィリピンにおいて新自由主義的政策が取り入れられるようになったのは、規制緩和を推し進めようとしたラモス政権以降である。 しかし、より重要な点はラモス期とアロヨ期の経済政策における連続性である。フィリピン初の総合的IT国家戦略「21世紀に向けた国家情報技術計画」には、OECDが提唱した『知識基盤経済』(1996)が大きな影響を与えている。これはラモス期で完成されたわけではなく、むしろラモス期が契機となって、アロヨ大統領期に引き継がれ、IT情報化社会で主導的な役割を果たす知的労働者の人材育へと拡大していくという特徴が浮かび上がってくる。これはまさに、外資系コールセンター産業の招致と連動した開発ビジョンが両政権下で展開されていたことを示唆する。また、同時に国民の英語力の商品化がフィリピン国家経済戦略の要諦であったことも、文献資料から明らかになった。アロヨ期には教育言語政策において、英語回帰ともいうべき展開がなされるなど、ラモス期とアロヨ期の特徴(共通性と差異)を析出することができた。コロナ禍の影響によりフィリピンの図書館での現地調査が若干影響を受けたが、これは2年目の計画を前倒しして行ったものであり、全体の進捗には全く問題はない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、21世紀におけるフィリピンの政治経済状況とコールセンター産業の進展についての基礎的な資料を収集するとともに、その軌跡について把握することにあった。その結果、当初の仮説通り、ラモス期には新自由主義的経済政策が導入され、アロヨ期には国民経済の発展のために英語を操れ、知的労働に従事する担い手のすそ野を広げ、なおかつそれを支援するために教育言語政策において、英語回帰(教授言語の英語化)が行われたことが見えてきた。 しかし、コールセンター産業との関連から言えば、アロヨ期の政策は大学新卒者に対して、多くの雇用を提供する一方で、英語という単一言語化を過度に推し進めたことから、国民の分断と社会的断絶を生む結果となった。この結果については、すでに新自由主義的経済が必然的にもたらす負の成果であると先行研究の多くが指摘するところであり、同国の経済政策が極めてエリート志向型性格のものであったことが見えてくる。以上のことを総合すると、現在までの進捗状況は順調と評価できる。 一方、本務校で海外渡航制限が緩和されたことを受け、2年目の課題である図書館での資料収集を前倒して行った。初年度に予定していなかった作業が実施できたこと自体、大きな前進であったが、コロナの影響で図書館の利用者制限があるなど、想定外の事態に直面した。思った通りの前進が出来なかったことは残念である。しかし、これは2年目の調査研究で挽回できることであり、初年度の研究計画全般に関して言えば、順調と総括できる。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、コールセンター産業に充実する労働者を対象とした、聞き取り調査を行うことになっている。現在のところ、首都圏のマニラ、もしくはルソン島北部地方のバギオか近郊地区で行うことを計画している。必要に応じて、調査アシスタントを雇用して、聞き取りデータの精度を高めたい。その上で先行研究と比較考察する予定である。なお、フィリピンも2020年3月より3年間にわたり、コロナ禍の影響により、ロックダウンが行われるなど、コールセンター産業の活動にも大きな影響があったことが推察できるが、その詳しい状況について、現在信頼できる情報は確認できていない。活動停止に追い込まれた企業もあることを踏まえ、聞き取り調査地の変更等は、柔軟に行なえるように配慮するつもりである。 一方、初年度での研究の成果を踏まえ、2年目にあたる2023年度は国内外学会等で積極的に発表を行い、研究成果の批判的検討に向けた作業も本格化させたい。具体的には、日本文化人類学会、東南アジア学会、日本オセアニア学会の地区例会ならびに研究大会での成果還元を行う。それと連動させ、国際共著論文を執筆するべく、共同執筆者との調整も開始する予定である。初年度は2023年度で行うはずの文献調査を前倒ししたことから、当初の予算と若干減少が生じたが、これはあくまでも研究の前倒しであり、研究の遅れではないので問題ない。
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