研究課題/領域番号 |
22K01075
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
森部 絢嗣 岐阜大学, 社会システム経営学環, 准教授 (50456620)
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研究分担者 |
山口 未花子 北海道大学, 文学研究院, 准教授 (60507151)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 黒焼 / 伝統療法 / 民間療法 / 薬草 / 生薬 / 伝統薬 / 生物資源 / 民間薬 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、黒焼の伝統療法としての文化的価値を再評価する。さらに過去の動物資源利用が、地域文化や日本人の動物観の形成にも寄与している可能性もあることから、日本人と動物との関係を新たな視点から問いなおすという文化的意義の観点からも重要な研究と考えている。そのために黒焼に関する伝承情報と現存技術を収集し、体系づけられたデジタル情報へ変換・整理・保存することで、検証可能な科学技術へ発展させ,文化的価値の評価と意義を解明する。さらに黒焼は、創薬・新薬開発への可能性も秘めていることから、これらの科学的検証に向けた基盤を整備する。戦前の黒焼利用世代が生存している今こそ、黒焼の可能性を探究し、再考できる。
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研究実績の概要 |
文献資料より哺乳類の黒焼に関する伝統的な利用法を分析した。哺乳類が黒焼では,のべ106種類の利用法が確認され,特にモグラ(18種)と鹿角(16種)が頻繁に用いられていた。効能については,78種類が報告され,鼠咬傷や淋病,痔疾,毛生薬,脱肛,催生藥が多く確認された。使用方法白湯での服用や胡麻油での塗布が一般的であった。 現代の黒焼利用を把握するため,ヒアリング及びアンケートを東北の狩猟イベント及び沖縄県で実施した。狩猟イベントにおいては,30名のうち,黒焼を知っていると答えたのは10名で,聞いたことがあるが分からないと答えたのは4名であった。黒焼の利用については,サルが6件,クマが3件,テン,ウサギ,サンショウウオが1件ずつであった。効能に関しては,サルは頭痛や婦人病,クマが骨折や関節痛といった骨に関連していた。また沖縄本島および石垣島において黒焼に関するヒアリング調査48名に実施した。調査の結果,全員が黒焼きを見たことも聞いたことも使ったこともないと回答した。しかし,他の民間療法に関しては各々の知識や経験が豊富であった。具体的には,猫肉が喘息に効く,ハブ由来の精力剤,モリンガ茶が鼻炎に効く,ヨモギやグァバの葉を煎じて飲むなどの事例が挙げられた。現時点で黒焼文化は沖縄地方では記録が確認できず,利用実態がなかったのか,消失したのかは不明である。広範なサンプルを対象に調査を拡大し,失われつつある黒焼文化の記録とその歴史的背景の解明が求められる。 以上より,黒焼は沖縄地方では記録が確認されず,本州では利用対象に地域性があることが確認された。また黒焼は現在ではサルやクマなど一部の種で利用されているが,文献では多様な症状の治療に利用されてきており,戦後に多くの黒焼利用が消失していた。今後は,具体的な効果の検証と現代医学との関連性を探る研究が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
元黒焼生産者の体調が優れず,再現実験が予定よりもかなり遅れ,生産技術再現性の検証が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
他の分類群の鳥類などの黒焼利用の種類・効能を整理する。黒焼文化がどの地域で利用され,残存しているか,全国的な分布を資料やヒアリング等により整理する。また黒焼の生産に関わった方以外の年配者にアンケートやインタビューを実施し,当時の黒焼利用の実態について情報を収集する。黒焼生成技術については,現在得られる資材での好条件を元黒焼生産者と調整し,生産技術の再現性を向上させる。
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