研究課題/領域番号 |
22K01089
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
近藤 史 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (20512239)
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研究分担者 |
鳴海 藍 地方独立行政法人青森県産業技術センター, 工業部門, 主任研究員 (40801163)
葉山 茂 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (60592780)
高橋 憲人 弘前大学, 教育学部, 助教 (30848312)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 伝統工芸 / 技術継承 / 地場産業振興 / 科学コミュニケーション / 地場産業 / 地方公設試験研究機関 / 漆 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では青森県の伝統工芸「津軽塗」の熟練職人と彼らを支えてきた地方公設試験研究機関の活動史および技術研究蓄積を集約・再評価し、その成果に基づいて津軽塗デジタルアーカイブの構築と情報発信をおこなう。あわせて、このデジタルアーカイブを用いたワークショップ等の企画実施とその評価を通じて、地方公設試験研究機関の研究者らと若手職人、周辺産業従事者、漆器の使い手(消費者)を横断的に繋ぎ、津軽塗の多様性と持続性の向上に寄与するデジタルアーカイブの活用方法を模索する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、以下を実施した。①デジタルアーカイブ構築:Microsoft Access を用い、青森県工業試験場時代に制作された津軽塗手板310枚をデジタルアーカイブ化した。 ②アクションリサーチ:①でアーカイブ化した津軽塗手板の一部と、本プロジェクトで前年度に運用開始した津軽塗情報サイト「IPADA」(https://ipada-urushi.com)を活用したワークショップを企画・実施した。津軽塗の中でも特に多様性に富む「仕掛け」に焦点を当てた内容とし、弘前大学人文社会科学部地域行動コース「社会調査実習」の受講学生21名を対象としておこなった。鳴海が企画し、津軽漆連の若手塗師3名にワークショップ講師を依頼し、近藤と髙橋は実施をサポートするとともに参加学生と塗師らのコミュニケーションを参与観察した。 ③津軽塗産地の現代史におけるイノベーション実装プロセスの解明:津軽塗産地と公設試験研究機関である青森県工業試験場との関わりを明らかにするため、元試験場研究員の小林伸好氏へインタビュー調査を行った。小林氏は「津軽塗のデザイン開発」について、伝統的工芸品産業指定により多数ある津軽塗の内の4技法(唐塗・ななこ塗・紋紗塗・錦塗)のみが注目されていることに疑問を持ったことをきっかけに、「津軽塗の再評価」「自由パターンの再現性」をテーマとし、昭和60~平成3年まで継続的に研究をされていたことがわかった。 ④塗師による素材生産への活動の広がりの解明:塗師への聞き取り調査によって、津軽塗産地の業界団体が昭和50年頃にウルシ植樹や漆掻きの研修を実施し、現在も一部の塗師たちが自ら取り組みを継続して自家製(地場産)漆を漆器制作に用いていること、近年、障がい者就労支援施設が漆の苗木生産を開始し、前述の塗師がそのサポートをおこなっていることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料調査と聞き取り調査によって、津軽塗産地の現代史におけるイノベーション実装プロセスと、そこに関与した団体・人びとのネットワークについて、前年度に整理した視点にもとづいて、個別事例調査を始めることができた。 また、前年度に運用開始したデジタルアーカイブ(津軽塗情報サイト「IPADA」)について、情報の収集・蓄積をすすめるとともに、「津軽漆連」のメンバーらとの意見交換を通して、より職人と消費者がつながりやすい工夫を検討している。 アクションリサーチ(デジタルアーカイブを教材としたワークショップの実施と評価)については、2022年度は新型コロナウィルス感染症流行によってワークショップを実施できなかったが、2023年度に初めてワークショップを実施することができた。漆のかわりにアクリル絵具とモデリングペーストを使って津軽塗の多様な模様が生まれる仕組み(仕掛けと研ぎ出し)を体験学習するプログラムでは、材料の特性に起因して、講師役の塗師が指導の際に戸惑う場面もあった。今後、事前の研修をとりいれるなど改良をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、文献や資料の調査をすすめるとともに、津軽塗の職人や周辺産業従事者、地方公設試験研究機関の技官OBらへの聞き取り調査をおこない、津軽塗のデザインや産業構造にかんするイノベーションの個別事例に注目して深掘りしていく。調査から得た知見を整理し、デジタルアーカイブ(津軽塗情報サイト 「IPADA」)の内容の充実をはかる。また、デジタルアーカイブを教材として若手職人と一般消費者の交流ワークショップを実施し、彼らのコミュニケーションを観察・評価することを通して、デジタルアーカイブの内容を検証・改良する。
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