研究課題/領域番号 |
22K01093
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
上村 明 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 研究員 (90376830)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | のど歌 / 英雄叙事詩 / ツォール / オリアンハイ人 / 山の主信仰 / 家畜のかけ声 / 音の世界 / 声の技 / 西モンゴル |
研究開始時の研究の概要 |
無生物の世界、あるいは世界自体との交渉はいかにして可能か。これまでの非人間の人類学の多くが動物を主な対象としてきたのに対し、本研究は生命の希薄な西モンゴルの世界=環境が擬人化されたアルタイの山の主との交渉をテーマとしこの問いに答える。そのため、モンゴル西部の牧畜民が、音声というチャンネルを通じて、どのように環境あるいは世界と交渉するか民族誌的に記述する。具体的には、音声のチャンネルであるのど歌とアルタイ山脈の山の主の信仰との結びつきを解明し、参照軸として家畜のかけ声を通じた家畜との交渉を明らかにする。そして、それらを「声の技術」として体系的にとらえ、「声の技術」の人類学を構築することを目指す。
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研究実績の概要 |
西モンゴルの調査地で牧畜作業の参与観察を行うとともに、家畜の呼び声やそれに対する家畜の応答を録音し、のど歌等に関する伝承を記録した。また、風など自然音の録音と景観の撮影を行った。そして、ツォールという笛の演奏者のナランバト氏や英雄叙事詩の語り手バルダンドルジ氏らと数回にわたり面会し、インタビューと録画をおこなった。 さらに、ウランバートル市郊外やスフバートル広場で開催された民族フェスティバルに参加し、西モンゴルの芸能が現在のモンゴル文化や社会のなかでどう実践されているか観察した。これと関連して、モンゴル国立文化財センターを訪れ、所長のエンフバト氏に伝統芸能の保存と継承についてインタビューをおこなった。さらに、今年3月オックスフォード大で行われたデザート・コンフェランスに参加し、コロナの流行によって西モンゴルの舞踏や音楽に対する評価が変わり、どのように実践されるようになったかについて研究発表を行った。また、ガンダン寺で行われた国際シンポジウム「オリアンハイ人の歴史、宗教、文化遺産」では、英雄叙事詩やツォール音楽の伝承されるオリアンハイ人の歴史的背景について「オリアンハイ統治者ハルハのモニジャブについて」というタイトルで発表し、モンゴルの研究者たちと交流した。 現地調査によって、ツォールや英雄叙事詩の語りなどのど歌や、家畜への呼び声やそれに対する応答、自然音を録音し、西モンゴルの音の世界を明らかにするための資料を収集できた。とくに、ハイゾレ録音や全方位環境音の録音は、これからの研究に有用な資料となる。また、伝統芸能者や現地の住民へのインタビューによって、のど歌の伝統が受け継がれてきた社会の状況が明らかになってきた。それによると、現在一般に語られているより過去の伝統継承者の層はあつく、さまざまな言い伝えも現在に語り継がれていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口頭での発表はあったが、論文等の発表ができなかった。 また、夏の調査でホスト・ファミリーが旅行に行って不在で、家畜へのかけ声やヤギの搾乳などの調査が十分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
この年度に十分できなかった家畜へのかけ声やヤギの搾乳などの調査に重点を置く。ただし、調査地は現在深刻な雪害に見舞われており、1993年から訪問し調査を行っている世帯も家畜と健康への被害を被っている。したがって、この夏調査ができない可能性もあり、その場合べつのもっと若い世帯で調査しなければならなくなる。 そのほかの伝統継承者へのインタビューや録画等は、引き続き行う。 口頭発表の内容を論文等にまとめ発表する。
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