研究課題/領域番号 |
22K01102
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分04030:文化人類学および民俗学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
余語 琢磨 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (00288052)
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研究分担者 |
木立 雅朗 立命館大学, 文学部, 教授 (40278487)
黒石 いずみ 青山学院大学, 総合文化政策学部, 客員教授 (70341881)
佐藤 弘隆 愛知大学, 地域政策学部, 助教 (50844114)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 京焼 / 職人 / 伝統工芸 / 産業民俗 / 産業史 / 生活史 / 長屋 / 近代企業 / 都市民俗 / 観光開発 |
研究開始時の研究の概要 |
社会や生活文化の充実に比して、都市「京都」の「民俗」調査例は少ない。また、伝統工芸のひとつ「京焼」は、工芸美術・地場産業の記述対象ではあったものの、そこに暮らす人々の生活、職人の技と継承、地域社会の変容への関心は不十分なまま、現在、中心地五条坂の観光開発により人や資本の解体が進んでいる。 そこで本研究は、京焼の産業民俗・都市民俗の基礎調査を目的とする。まず、ものづくりの技術や文化、京町家・長屋等で形成される生活様式を記録保存し、あわせて、卸・小売問屋、料亭・割烹、茶道・華道、土産物など、独特で複合的な生産・消費文化のネットワークの聴き取り、現地旧家に残る史料の収集分析を含めた総合研究を行う。
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研究実績の概要 |
研究代表者の余語琢磨は、以前より取り組んでいる京焼五条坂地区京焼職人の悉皆調査をさらに進め、個人工房の上絵付け師・ロクロ師など一般職人への聞き取り調査やそのトランスクリプトの整理の蓄積を図る一方で、近代五条坂において大型産業施設(登り窯)・陶器工場を所有していた代表的生産者のI家(現在は転業)・N家(現在、社屋は山科に移転)などの聞き取り調査を進めた。とくにI家からは、明治期から戦後期までの窯業経営関係資料の提供を得た。その内容は多岐にわたるが、「新窯約定書」「決算書」など企業としての成長と経営の過程が追えるもの、「職工名簿」「解雇手当領収書」など陶工の就業状況が復元できるものなど、京焼企業と職人生活の近現代史を探るに好適なものであった。これらの資料分析は、研究分担者の木立雅朗が収集した同じく近代窯業企業であった入江道仙家資料との比較を要するため、相互協力のもと綿密な分析を進めている。 また、代表者および研究分担者の黒石いずみ、研究協力者の金田正夫は、以前の入江道仙長屋調査で復元された平屋の狭小職人長屋の類例調査を市内各所で進める一方で、庶民の生活実態調査で著名であった建築家西山夘三の資料を所蔵する西山文庫より「清水焼職人住宅調査」資料の写しを入手した。この1950年当時の図面やアンケート内容の分析に着手するとともに、掲載全軒の現存・家業継続状況の踏査・確認を行い、7軒を調査対象として抽出した。 研究分担者の佐藤弘隆は、五条坂北側にあたる六原元学区に残る町文書のデジタル・アーカイブを進めた。またGISを用いて、町文書のアーカイブデータに記録された地理空間情報を可視化し、明治時代前期における同地域の各町内の土地所有の復原を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究代表者の余語は、幕末に創業したI家(企業合同の後はN電磁器)の窯業経営関係資料の分析を進め、I家5代にわたる家業であった京焼生産と組織変容の過程を明らかにした。他の窯元と同様、絵付磁器の日用食器を主として生産していたI家は、明治後半に碍子などの陶製電磁器の生産に乗り出し、旧来の施設や技術を活かしながら戦前期まで近代企業として急成長を遂げた。その一方で、近世的な親方/徒弟・職人の関係性は、雇用者/職工の関係に変化して、大正期後半から昭和初期には激しい労働争議の場になり、操業停止・全員解雇という事態に至る過程が明らかになった。これらの資料分析より、既存の美術陶磁器としての京焼のイメージとは異なる、近代的伝統工芸企業の新しい類型を得ることができた。また、近現代京焼における労働運動や職人の姿は、少ないながらもいくつかの小説等に描かれ、研究分担者木立の2023年論考「澤野久雄「晩年の石」を読む」や、プロレタリア文学作品『清水焼風景』などの分析とも連携しつつ分析を進めている。 また、代表者および研究分担者の黒石いずみ、研究協力者の金田正夫は、都市計画に基づく近現代職人長屋への水道などのインフラ導入により変貌する生活実態について、京町家研究者や関連市民団体との連携を図り、基礎資料を蓄積しつつある。 研究分担者の佐藤弘隆は、浅見五郎助家文書のアーカイブデータを用いた五条橋東四丁目の土地所有の復原作業をほぼ完了させた。また弓矢町文書のデジタル・アーカイブ及び研究成果がまとまりつつある。この他、小川文齋家(五条坂東六丁目)にも同様の文書の所蔵があることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者の余語琢磨は、引き続き京焼五条坂地区京焼職人の悉皆調査を進め、個人工房の上絵付け師・ロクロ師など一般職人、および大型産業施設(登り窯)・工場の元所有者への聞き取り調査・資料収集の一層の蓄積を図り、複雑な分業・協業と階層的に成立していた京焼の生産に関する産業民俗の解明に努めたい。また、次年度の課題としては、遅れている京焼問屋・小売店など商業ブロックへの調査拡大を図る予定である。 研究分担者の黒石いずみ、研究協力者の金田正夫および代表者は、次年度の課題として、西山文庫資料「清水焼職人住宅調査」当時(1950年)から70数年後の現在を比較する継時的調査を実施し、掲載全軒のうち家屋が現存するかもしくは所有者の子孫が確認できた7軒を中心に、家業としての京焼と職人住宅や生活様式の歴史的変容についての聞き取り調査を進める予定である。 研究分担者の佐藤弘隆は、次年度、地元住民向けの報告会を行い、弓矢町の研究成果を六原学区の住民に披露することで、町文書のデジタル・アーカイブの取り組みを知ってもらいながら、他の町文書の所蔵に関する情報を収集する予定である。加えて、小川文齋家の文書調査及びデジタル・アーカイブを開始し、現時点では個別町内にとどまっている明治時代前期の土地所有の復原を、可能な範囲で面的に広げていきたい。
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