研究課題/領域番号 |
22K01116
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
吉良 貴之 愛知大学, 法学部, 准教授 (50710919)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 法哲学 / 行政法 / ナッジ / 誘導行政 / 正統性 / アルゴリズム公正 / 行政国家 / 行政立憲主義 / 行動科学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、現代の先進各国に共通の現象である「行政国家化」を念頭に置き、そこで肥大化・多様化する行政活動の立憲的な統制原理を追究する。主たる課題は以下の4つ。 (a) 現代行政の規制主体への転換と技術的背景をふまえた規制態様の規範的意義の検討。 (b) 行政国家にとっての「正統性」概念の哲学的整理(手段的理解と規範的理解の対比)。 (c) 行政活動の正統性を手段的に理解した場合の民主的政治過程の位置付け、とりわけ近年の「認識的民主主義」理論における主体性の実現条件の探求。 (d) 行政活動の制約だけでなく、エンパワーも視野に入れた司法の法解釈方法の探求。
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研究実績の概要 |
初年度の2022年度は、行政活動が多様化・肥大化し、また価値にかかわる領域にも積極的に進出する「行政国家」状況を念頭に、その正統性(legitimacy)のあり方、規制手法の変容(いわゆるナッジなど、誘導行政的な手法)とその倫理的条件、などについて基礎的な考察を進めた。 (1) 規制手法の変容とその倫理的条件については、ナッジの倫理的条件を問うという形でいくつかの論考を発表した。ナッジ論の第一人者であるアメリカの公法学者キャス・サンスティーンの議論を検討するなかで、彼の重視する「透明性」要件が必ずしもあてはまらない場合が多くあることを明らかにし、また、ナッジの「効きやすさ」の個人差にどう対応するかという分配的正義の問題も重要であることを示した。これらは個人向けにカスタマイズされたパーソナル・ナッジの問題、ひいてはアルゴリズム公正と行政活動という大きな問題系につながることが確認された。また、ナッジは分野横断的な新しい課題のツールとして使われやすいが、その場合、従来の行政の縦割りを超えた取り組みが必要になる。そこでのチームワークのような「徳」の促進ナッジの可能性や、そうした分野横断化にともなう正統性概念の変容(単に行政活動のパフォーマンスにとどまらなくなった)を射程に入れるべきことが確認された。 (2) そうした状況のもと、権限配分原理としての行政法の基礎原理を問うという本課題の大きな目標に関しても、いくつかの論考を発表した。規制手法の多様化にともなってその最適化を目指すべきこと、またそのためには実験的検証を含む、社会科学諸分野との協働がますます必要になることが確認され、次年度以降の課題がより明確になったと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
関連する文献の渉猟、研究会・学会での報告、論文の執筆といった基本的なことについては比較的多くをこなすことができ、一定の成果をあげたと考えている(内容については研究実績の概要を参照のこと)。特に、行政国家状況での権限配分の最適化とその正統性調達のあり方という大きなテーマにつき、いくつかの研究成果を通じて研究課題をより具体化できたことは大きな収穫であった。もっとも、所属機関の変更などの事情により、十分な時間が取れず、研究成果が細切れになったことも否めないが、次年度以降は改善できるものと思っている。 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、対面での研究会開催、および資料収集等に一定の制約があったことは否めない。特に、海外での報告や資料収集はかなわなかった。もっとも、ウェブ会議等を用いることによって一定の補完はなされたので、研究計画にとって大きな支障をもたらすものではなかったが、次年度以降は海外での活動、英語での研究発信も積極的に行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、関連する文献の渉猟、研究会・学会での報告、論文の執筆といった基本的な研究方法は同じであり、変わらず進めていく。特に、まとまった時間が必要な研究成果(単著書、国際ジャーナルでの英語論文など)が出せるように準備を積み重ねており、次年度以降、いくつか公刊できるものと考えている。また、新型コロナウイルス感染状況が落ち着くようであれば、海外での報告、意見交換、資料収集といった活動にも積極的に取り組みたい。
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