研究課題/領域番号 |
22K01119
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
齋藤 哲志 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (50401013)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 死者 / 人格 / フランス法 / 遺言 / 信託 / 比較法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、フランス法上の「デジタル空間における死」の議論を基に、死者・生者関係の法的把握を更新する試みである。第一に相続法上の人格承継原理の系譜を解明する。19世紀における人格概念と資産概念との結合は、相続法を財産法として純化したが、非財産的利益を相続外に放逐した。これに対抗して「死者の人格」が措定され、別建ての死因承継原理が生み出されたのではないか。仮説を検証し現代的問題への応用を企図する。第二に「死者の意思」による義務付けの射程を問う。データの死後の取扱いについて故人の指示を基礎とすることが考えられるが、遺言との類比は近親者を過度に拘束しかねない。実態調査を行い、枠付けの方途を探る。
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研究実績の概要 |
本年度は、申請当時の計画通り、【目的(1)人格承継原理の史的解剖】に関連する資料の収集・分析を着実に進めた。人類学・宗教学へのアプローチも比較的順調に推移した。 他用務を主目的とするフランス出張を本予算にて延長し、パリ・キュジャス図書館にて、国内でのアクセスが叶わなかったいくつかのテーズや講義録を参照・撮影した(当然ながら利用規則を遵守し、適式に許可を得た)。財団につき同時に遂行していた研究課題からのフィードバックも踏まえながら、人格承継原理の転回をきっかけとして相続外承継のメカニズムが分離された、という仮説の検証を続けている。また、上記の出張に際して、相続法分野の複数の研究者(本研究課題に直接的に関連する論文を著したフレデリック・ビシュロン教授も含まれる)と意見交換の機会をもち、多くの有益な示唆を得ることができた。 本研究課題との関連性は小さく、直接の成果とはいえないものの、法史パートのスピンアウトとして、フランス革命前後の所有権論に関する著作の書評を挙げておく。また、国際シンポジウム(日仏民法セミナー於関西大学)での「家族財産法における特種な合意」と題した報告において、信託を扱った。本研究の【目的(2)死者による義務付けの射程解明】にかかわる発展的課題として予期していた主題である。先んじて検討を開始したことになるが、もちろん萌芽的なものにとどまる。研究本体との接合を適切に図る必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上述のとおり、法史パートの検討は順調といってよい。しかし「デジタル空間における死」を対象とする実定法パートの進捗は芳しくない。フランスにおける議論に大きな進展がみられないこともあり、初年度に予定していた次年度の調査の準備が遅れている。また、本研究と連携するはずであった国際共同研究が、メンバーの多忙により宙に浮いてしまっていることも痛手である。 その一方で、もうひとつの主題である墓地・葬儀法制への見通しを得ることはできている。また、わが国の世情を騒がせた事案を背景に、宗教法人法制について検討する機会を得た。本研究との接続の方途を探っている。加えて、研究機関で行った同僚との共同演習で、人格・人(personne)の概念を鳥瞰する著作を講読した。課題の深化にとって非常に有益であった。 以上を総合して「やや遅れている」との評価を付す。
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今後の研究の推進方策 |
実定法パートに関する遅れを取り戻すことが求められる。上記の実態に鑑みて、現在の動きを徒に追うのではなく、直近の立法過程・報告書提出に至る経緯の精査に転ずることも考えられる。インタビュー対象の変更も検討することとする。他用務との関係で出張は年度末に設定される可能性が高く、比較的余裕のある工程表で準備を進めることができそうである。可能な限り視野を広くとり、仮説の再構築に努めるものとする。 法史パートについては、計画どおり、Demogueの学説の進展の背景を探ることとする。
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