研究課題/領域番号 |
22K01127
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05010:基礎法学関連
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
和田 仁孝 早稲田大学, 法学学術院(法務研究科・法務教育研究センター), 教授 (80183127)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
|
キーワード | 医療事故 / 無過失責任 / 無過失補償 / 医療事故紛争 / ACC / WHO / 責任 / リスク認知 / 紛争処理 / 不法行為 / 責任観念 / 比較法社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、リスク認知と責任および損害観念の差異の検証を基礎として、それらが不法行為制度の具体的運用や、判決、法的構成にいかに反映していくかを具体的に抽出し、検証し、差異の法社会学的説明を試みることを目的とする。①まずは、定性的調査(各国でのインタビュー調査)および法制度の実態の基本的検討を実施し、それぞれの項目に関する各国の特徴、および不法行為制度の運用面での特質を踏まえ仮説構成していく。その知見をもとに、②事故被害者へのインタビュー調査、③事故加害者へのインタビュー調査、④法制度と運用の実態調査を、定性的アプローチを中心に各国で実施していく。
|
研究実績の概要 |
本研究は、リスク認知と責任および損害観念の差異の検証を基礎として、それらが不法行為制度の具体的運用や、判決、法的構成にいかに反映していくかを具体的に抽出し、検証し、差異の法社会学的説明を試みることを目的とする。 本年度は、引き続き、文献等での検討を進めるとともに、調査の主要対象国であるニュージーランドでの現地調査を実施した。無過失補償制度を運用する事故補償公社(ACC)を訪問し、主席顧問であるJames Funnell 氏、およびTerence Routledge氏と面談し、近年の状況や、とりわけ医療事故補償についての問題点などの聞き取りを実施した。これまで人身損害のみが補償対象であったが、事故に起因する精神損害も給付対象に含まれるようになったなどの制度改変や、医療事故補償をめぐって、ACCが補償を否定した場合に、ACCを被告としその判断を争う訴訟が何件も起こされている状況について、事案を収集することができた。医療事故加害者の医師や病院に対する損害賠償訴訟は無過失補償の制度上提起することはできないが、それに代わって、ACCを対象とする訴訟が行われている状況である。このことは、医療現場における医療者の責任意識に、どのような影響を及ぼしているかについて、今後も検討していく予定である。これらのニュージーランド調査については、早稲田大学で開催したシンポジウムに置いて、発表を行った。 また、本年より、WHOのグローバル医療安全ネットワークに参加し、医療事故対応をめぐる国際的な議論や情報収集を行うようになった。研究範囲を拡大し、世界的な同種課題への対応状況なども、今後視野に含めて検討していくことにしたい。 2024年度は、これらを手掛かりに、WHOにおける更なる情報入手や、ニュージーランででの現地調査も実施していきたいと考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、引き続き、文献等での検討を進めるとともに、調査の主要対象国であるニュージーランドでの現地調査を実施した。無過失補償制度を運用する事故補償公社(ACC)を訪問し、主席顧問であるJames Funnell 氏、およびTerence Routledge氏と面談し、近年の状況や、とりわけ医療事故補償についての問題点などの聞き取りを実施した。これまで人身損害のみが補償対象であったが、事故に起因する精神損害も給付対象に含まれるようになったなどの制度改変や、医療事故補償をめぐって、ACCが補償を否定した場合に、ACCを被告としその判断を争う訴訟が何件も起こされている状況について、事案を収集することができた。とりわけ、産科事故に関する事案が多く、因果関係の認定が難しいことから、判断が難航する事例が多いという。この点は過失責任主義を取る多くの国でも、無過失補償制度を取るニュージーランドでも、変わるところはなく、産科医療事故をめぐる因果関係が門難かつ重要な課題となっていることがわかる。ちなみにわが国も、部分的な無過失補償制度である産科医療性補償制度を2015年に創設したが、やはり、補償を否定した事案に関して訴訟が提起されるなど、同様の傾向が見られる。ニュージーランドでも、医療事故加害者の医師や病院に対する損害賠償訴訟は無過失補償の制度上提起することはできないが、それに代わって、ACCを対象とする訴訟が行われている状況である。これらのニュージーランド調査については、早稲田大学で開催したシンポジウムに置いて、発表を行った。 また、本年より、WHOのグローバル医療安全ネットワークに参加し、医療事故対応をめぐる国際的な議論や情報収集を行うようになった。研究範囲を拡大し、世界的な同種課題への対応況なども、今後視野に含めて検討していくことにしたい。
|
今後の研究の推進方策 |
2024年度は、興味深い知見が得られたニュージーランドにおいて追加調査を実施するほか、本年から参加したWHOのグローバル医療安全ネットワークでの情報収集、意見交換を継続していく。可能であれば、WHOを訪問し、現地でも意見交換の機会を設定していきたいと考えている。これによって、グローバルな医療事故についての責任意識の在り方や制度設計の全般的状況の把握が可能となり、その背景の中で、ニュージーランド、アメリカ、タイ、日本など対象国の制度特性や課題が浮き彫りになると考えている。 また、その際、日本と同じく部分的な無過失補償制度を導入しているフランスも検討対象に加え、その現況や問題も調査することとしたい。フランスは、労働能力喪失率25%以上の重篤な被害を生み出した医療事故については、無過失補償で磯を設定し、過失の有無にかかわらず、経済補償する制度を有している。ニュージーランドとは異なり過失責任主義がベースとなっているため、この面でも責任意識の際が制度にも反映していると考えられる。このように本年度は、調査致傷の範囲を少し広げ、より的確な比較研究の成果が上がるよう努力していく。 また、成果の還元については、医療系の学会や団体との協働し、早稲田大学にて、アメリカ、オーストラリア、台湾の医療事故研究者を招いた国際損保痔有無を6月に計画している。自身の成果の協会とともに、こうした機会が、知見のさらなる獲得にも反映すると考えている。 また本科研費のみでは、海外調査費用が不足すると思われるため、早稲田大学の特定課題研究費に申請し、採択されたことから、無理なく調査計画を進行することが可能と考えている。
|