研究課題/領域番号 |
22K01137
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
高橋 正人 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (60580735)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 不当概念 / 行政裁量 / 解釈基準 / 裁量基準 / 周知機能 / 判断過程審査 / 社会観念審査 |
研究開始時の研究の概要 |
裁量論において未解明な点が多い「不当」概念について、行政不服審査会答申等を参考にしつつ、「不当」判断に至る過程を分析することで、「不当」概念の明確化を試みる。 裁量基準・解釈基準について、裁判規範性の観点から考察する。その上で、法規命令/行政規則というこれまでの区分が妥当であるか否かという論点について、先行研究を踏まえつつ両者を相対化させる方向での検討を試みる。
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研究実績の概要 |
①「不当」概念につき、国や地方自治体の審査会答申を参照しつつ、「不当」の判断過程について検討を行った。「不当」判断においては、「解釈基準」及び「裁量基準」の果たしている役割が大きく、行政の専門性が反映されたこれらの基準の「合理性」が判断過程においても一定の影響を及ぼしている。 特に、「不当」概念を検討するにあたり着目したのが、「解釈基準」が実務において果たしている役割である。実際の審査会答申を見る限り、「解釈基準」と「裁量基準」の扱いには相違がなく、行政の専門性が尊重されていることがうかがわれた。同様の傾向は裁判例においても指摘することができると思われ、答申例及び裁判例の分析を通して、「解釈基準」の法適合性審査は、「裁量基準」の合理性審査と差異がないことが多いといえる。 ②また、研究課題に関連するものとして、行政裁量に関して、裁判実務が今日の審査手法にたどり着くまでの戦後の行政裁量論を、学説・実務の双方をフォローしながら明らかにすることを試みた。学説においては、戦後暫くは自由裁量(便宜裁量)と覊束裁量(法規裁量)の区分論に重点が置かれていたと考えられる。そのため、裁量審査の手法については、判例実務先行型であった。学説・実務の双方において、裁量審査の手法に重点が置かれたのは、1980年代以降と思われる。1980年代以降の学説・実務の「対話」状況を分析しながら、この点を明らかにした。双方の「対話」が活性化した近年においては、学説における審査手法の分析も判例実務に一定の影響を及ぼしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、新型コロナウイルスにより対面での研究会開催の機会が少なく、資料収集活動をメインに行った。概要においても触れた「解釈基準」の答申例及び裁判例における位置づけについては、関連資料の収集を進めているところである。なお、「不当」の判断過程については、当初審査会事務局関係者へのインタビュー等も念頭に置いていたが、新型コロナウイルス等の影響もあり、インタビューが行いにくい状況が続いている。 「行政裁量」に関しても、関連資料の収集をしているところであり、対面での研究会が増えてくると想定される中、研究会報告等を行いたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
①「解釈基準」に関しては、「裁量基準」との関係を意識しながら、答申例及び裁判例の分析・検討を引き続き行い、成果を公表する予定である。裁判例の分析においては、「解釈基準」に関連して論じられる「周知機能」の果たしている役割につき、裁判規範性の問題とどう関係してくるのかを最高裁判例を中心に検討していきたいと考えている。一方、答申例の分析で中心となる「不当」概念については、新型コロナウイルスにより審査会事務局関係者等へのインタビューが憚られる中、総務省の「行政不服審査裁決・答申検索データベース」を活用して、答申例における「裁量審査」の合理性審査と「解釈基準」の法適合性審査の類似性を検討していきたいと考えている。 ②研究課題に関連する「行政裁量」については、法曹実務家による論説等を参照しつつ、判例実務先行型で明確化されていったと考えられる裁量審査手法についてその特徴を明らかにしていきたい。併せて、現在の行政裁量審査にの特徴について、学説において一定の評価がなされている「判断過程審査」が実際に審査密度を向上させているのか、また、「社会観念審査」との間に明確な線引きができるのかを重点的に検討していきたい。
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