研究課題/領域番号 |
22K01146
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
多田 一路 立命館大学, 法学部, 教授 (00313453)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | ミニ・パブリックス / シティズンシップ / 社会的民主主義 / ロトクラシー / 民主性のオルタナティブ / 自己決定権 / 社会的権利 / 社会保障制度 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、一般に民主主義論において用いられるシティズンシップと、基本的人権論において用いられる自己決定権との異同を解明し、その上で、基本的人権の実現、主に社会的権利の実現のために効果があるような、民主主義またはその制度を探究するものである。その際、前者は理論的な解明を中心とし、後者は外国の制度を参照して比較研究を行う。 権利実現のための以上のような民主主義の探究は、統治システムが基本的人権を保障するためにあるとする近代立憲主義の基本的考え方に合致し、その発展につながる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、社会的権利の実現のために効果的な民主主義の探究である。 この点、2022年度は、フランスの「黄色いベスト」運動の中から生まれた、「国民大討論会」と「気候市民会議」を素材に、これらを民主政の一つのあり方として捉えるべく検討を行った。同種の市民会議はフランスではすでに生命倫理法改正の際に採用されていたが、「気候市民会議」はそのもっとも本格的なものといってよい。 以上のものは、いわゆる「ミニ・パブリックス」の一種であるが、一般選挙による代表議会制とは区別して理解する必要がある、という中間的結論に達した。というのも、①そもそも何らかのアジェンダが設定された上で議論するには有用だが、アジェンダ設定そのもの又は政権の基本政策それ自体について議論の対象にすることは困難だと思われるし、②採用されたくじによる議員の任命も、選挙に替わりうるようには考えられないからである。しかし、熟議のプロセスとして見るならば評価すべき点も多い。市民が議員として判断する際に、学習が行われより合理的な判断がなされる可能性を高めているからである。以上の研究について、研究会において報告を行った。 日本においても、自治体レベルでミニ・パブリックスが実践される例が散見されるが、フランスと比べて日本では大衆の政治意識が低いことを踏まえると、これを本格的な熟議のプロセスとして学び取る意義を見出すことができるだろう。 なお、当初計画では、シティズンシップ論及び、それと自己決定権論との理論的関係を検討する予定であったが、上記研究は前者のものに関する具体例の分析にとどまっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
【研究実績の概要】で示したように、当初計画との関係では、シティズンシップ論と憲法学における自己決定権論との理論的関係については、いまだ手が付けられていない。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画から遅れている状況にあるが、他方で、フランスの具体例の分析は、当初計画では2年目以降での実施を予定していたものであるから、回復的な方策がとりわけて必要な状況にはない。今後は、当初計画で示した自己決定権が保障されることの意味や、それとシティズンシップとの意味内容との重なりを検討し、そのことを通じて自己決定権論を再検討する予定である。 さらに、2022年度の研究から、フランスにおけるミニパブリックスを整理することが課題として見えてきたので、これについても本研究課題の中に入れ込んで検討したい。
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