研究課題/領域番号 |
22K01148
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
上田 健介 上智大学, 法学部, 教授 (60341046)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 裁判を受ける権利 / 司法権 / 司法判断適合性 / 原告適格 / 統治行為 / 法の支配 / 政府統制 / イギリス法 / アカウンタビリティ / 憲法原理 / 司法審査 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、たとえば臨時国会の召集を長期間しなかったことの違憲性を争う訴訟など、執政府(内閣)の行為・不作為の合憲性・適法性について裁判所に問う訴訟を提起することがある。しかし、このような訴訟で勝つことは、日本の現行法では、「原告適格」「法律上の争訟性」「統治行為論(政治問題の法理)」などを理由に困難であるとも理解されている。そのような理解に修正の可能性はないのか、日本と同様の司法裁判所でありながら大臣の政治的な行為の違法性を認める判決を下したことで知られるイギリスの考え方との比較を通じて、その可能性を探る。
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研究実績の概要 |
イギリスにおける裁判所による執行府統制の在り方に関して、とくに「司法判断適合性(justiciability)」をめぐる判例の動向に注目して、まず文献の調査を進めた。2月に現地調査を行い、3名の教授からミラー第2判決の議論や評価を中心にこの論点に関連する判例や文献の所在も含めヒアリングを行い有益な教示を得た。司法判断不適合の概念が訴訟で用いられる場面は、イギリス法では多岐にわたり、日本法でいえば広く「司法権の限界」の問題で分類して取り扱われる諸領域がとくに整理されることなく司法判断不適合だとされてきたようである。もっとも、国王大権に対する司法審査についてみると、従来、大権行使の適否は一切判断不適合とされていたところ、GCHQ事件でこれが覆され一定の基礎(ground)に基づく判断はできるとされ、さらにGillick事件で特定の者の権利又は義務を変動するものでない行為も判断対象とされるなど、判断対象が拡大してきていることが看取できる。これらの点につき、2023年度内での公表には至っていないが、2024年度中の公表に向けて、論文の執筆を始めている。 また、臨時国会の召集を長期間行わなかったことの違憲性を争った訴訟で2023年度に出された最高裁判決(最大判令和5年9月12日)の判例解説の依頼を受け、執筆した。この判決は、確認の訴えについて、法律上の争訟であることを認めつつも即時確定の利益を否定して訴えを不適法とし、国家賠償請求について、臨時会召集要求をした国会議員の権利または法律上保護された利益は召集遅滞により侵害されないとして否定したものである。召集後の臨時会における個々の議員の議員活動の利益を否定したものとまで読むべきではなく、確認の訴えにつき法律上の争訟性を認めたことと合わせて、将来、この領域で司法的統制の可能性をなお残したものといえるのではないかという分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イギリスにおける裁判所による執行府統制の在り方に関して、とくに「司法判断適合性(justiciability)」をめぐる判例の動向に注目して、まず論文を公表する。そして、それをフォローするかたちで、この論点をめぐる学説の対立を検討していきたい。さらに、この論点と密接に絡み合う問題として、「憲法原理(constitutional principle」の近時における判例での使われ方や、他方でとくに統治行為の領域に関わる「敬譲(deference)」の問題についても検討を深めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
2024年2月に行った現地調査は、コロナ禍で途絶えていたイギリスの研究者との交流が復活できたという意味でも、また私がお世話になっていた研究者(私より上の世代である)だけでなく、その下の世代との知己を得たという意味でも、非常に有用なものであった。また、この間、別の調査との関係で、パリ在住のイギリス法研究者とも知己を得た。当初計画から組み込んでいたものではあるが、2024年度にも現地調査を行うことで、さらに知見を広めるとともに、それまでに自分自身での書籍・文献調査を進める契機としたい。
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