研究課題/領域番号 |
22K01150
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐々木 雅寿 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90215731)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 違憲審査 / 憲法訴訟 / 立法事実 / アミカスキュリィ / 第三者の訴訟参加 |
研究開始時の研究の概要 |
裁判所が法令等の違憲審査を行う場合、訴訟当事者以外の第三者が提出する、法令等の必要性・合理性を示す立法事実の検討は不可欠である。しかし日本では、第三者が立法事実を提出する制度が未整備で、裁判所の憲法判断の根拠は十分に示されていない。本研究は、立法事実を収集するため、アミカスキュリィを利用するアメリカと、第三者の訴訟参加を活用するカナダとを比較検討し、それを参考に、日本の憲法訴訟において、第三者(国、地方公共団体、私人等)が訴訟に関与し、立法事実を裁判所に提出する方法、立法事実の取扱方法に関する適正なルールについて、具体的制度設計を提言する。
|
研究実績の概要 |
2022年度前半は、アメリカのアミカスキュリィの現状を、制定法、裁判所規則、判例、学説を分析し、実証的に確認した。また、2022年度後半は、カナダの憲法訴訟における第三者の訴訟参加に関し、法的根拠、裁判所が参加を認める基準、参加が認められる第三者の類型・役割・機能、運用実態、利点と欠点等を、そして、立法事実の内容、提出方法、手続保障、重要性等に関する制度内容を、制定法、裁判所規則、判例、学説を分析し、実証的に確認した。 特に、カナダの立法事実に関しては、(1)立法事実の内容(どのような事実が立法事実に該当するのか)、(2)立法事実の許容性(当事者は立法事実を裁判所に提出することが許されるのか、また、裁判所は立法事実を考慮することが許されるのか)、(3)立法事実の提出方法(当事者はどのような方法で立法事実を裁判所に提出するのか、専門家による証拠か、ブランダイス・ブリーフか、また、裁判所はどのような立法事実を司法確知することができるのか)、(4)立法事実を認定する際の手続保障(提出された立法事実について、双方の立場に反論の機会を認めるべきか)、(5)立法事実の重要性(各種の立法事実はどの程度の重要性をもちうるのか)等に関するカナダ最高裁の判例、学説の分析を行った。 以上の検討を踏まえつつ、研究初年度に、日本の憲法訴訟における第三者の関与の現状に関し、国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律、行政事件訴訟法が定める行政庁の訴訟参加制度等の運用実態等を、法律、判例、学説等をふまえて、現状とその問題点を明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度においては、アメリカのアミカスキュリィの現状、カナダの憲法訴訟における第三者の訴訟参加の実情、カナダの立法事実に関する実証的研究を行う計画を立て、実際、研究は予定通りに進んでいる。 特に、カナダの立法事実に関しては、(1)立法事実の内容、(2)立法事実の許容性、(3)立法事実の提出方法、(4)立法事実を認定する際の手続保障、(5)立法事実の重要性等に関するカナダ最高裁の判例、学説の分析を行い、その内容を論文として公表する準備作業に入った。この論文は、2023年度中に公表する予定で、本研究の中間報告として位置づけることができる。この論文の準備作業は、当初の計画と比較すると、多少進んでいると評価することができる。 以上を踏まえて、研究はおおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度前半は、アメリカとカナダの異同について検討する予定である。両国の共通点としては、(1)連邦と州の政府には特別な配慮が必要であること、(2)憲法上の争点に専門知識をもつ私人や団体は関与が認められること、(3)当事者や他のアミカスが言及していない論点や情報がある場合、裁判所がアミカスを任命する場合があること等がある。それに対し、カナダにのみある制度は、(a)連邦と州の法務総裁に対する通知制度、(b)訴訟参加が認められた者を、文書提出と口頭弁論が認められる者と、文書提出のみが認められる者等に区別する運用、(c)裁判所の憲法判断に有用な者のみの訴訟参加を認める運用等である。また、カナダでみられる多様な立法事実の認定方法((i)公知の事実に属する立法事実は司法確知が認められる、(ii)異論のある立法事実については、反対尋問と反論の機会が認められる専門家の意見による証明が多用される、(iii)立法事実に関する資料等が信頼に値し、異論のない場合は、証拠としてではなく、ブランダイス・ブリーフとして裁判所に提出される等)、裁判所に提出された立法事実に反論の機会を与える運用は日本への示唆に富むものと考えられる。 2023年度後半は、カナダ・トロントに海外出張し、トロント大学の複数の教授、裁判官等に、カナダの訴訟参加制度の現状と問題点、問題点を改善する方向性等、また、立法事実の提出・認定方法、その際の適正なルール等についてインタビューし、資料収集も行う予定である。 以上、アメリカとカナダの異同の分析と海外調査の結果を踏まえて、日本が導入すべき制度の大枠を示す予定である。
|