研究課題/領域番号 |
22K01168
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05020:公法学関連
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
塚田 哲之 神戸学院大学, 法学部, 教授 (00283383)
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研究分担者 |
小竹 聡 拓殖大学, 政経学部, 教授 (20252299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 違憲審査 / 合衆国最高裁判所 / アファーマティヴ・アクション / 先例拘束性と憲法判例の変更 / 裁判官選任過程 / 人工妊娠中絶 / 憲法判例の変更 / 最高裁改革 / 政治的・社会的統合機能 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、激しい政治的・社会的「分断」現象として表出している構造的変動過程にあるアメリカ合衆国において、(1)合衆国最高裁判所による違憲審査権行使の与件となる法的・政治的・社会的制約要因を抽出し、(2)これらを前提としてなされる政治的・社会的に激しい対立を生む憲法上の争点についての最高裁の判断がいかなる政治的・社会的意義を有するか、(3)違憲審査に期待される政治的・社会的統合機能を果たし得ているかを検証した上で、(4)かかる統合機能を可能とする条件は何かを明らかにし、(5)もって現代民主主義国家に共通する「分断」状況下における違憲審査の理論的課題について有益な知見を獲得することを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究課題の2年目である2023年度においても、初年度から継続して、厳しい政治的・社会的対立(「分断」)状況にあるアメリカ合衆国における違憲審査の現状把握とその背景・規定要因についての検討を行った。合衆国最高裁判所は、2022年の人工妊娠中絶判例変更に続き、2023年には大学入学者選抜における人種の考慮(アファーマティヴ・アクション)について、明示的判例変更は行わなかったものの、先例が認めてきた人種の考慮を厳しく制限する判決(Students for Fair Admissions, Inc. v. President & Fellows of Harvard College)を下しており、「分断」状況下における最高裁の憲法判断の正統性は引き続き重要な検討課題となっている。 そこで2023年度においては、(1)アファーマティヴ・アクションについての上記判決を含め、最高裁による近時の重要判決について、合衆国の政治的・社会的環境とそこにおける政治・社会運動体の役割を重視しつつ、理論的には先例拘束性原理および裁判官選任過程を意識して検討を継続するとともに、(2)オバマ大統領の任期末からトランプ大統領の任期前半期(2015-2018年)を直接の対象として、上記観点から従来研究代表者・研究分担者・研究協力者が進めてきた合衆国最高裁判例の検討を書籍にまとめる作業に注力することとした。(1)については、2023年9月、10月および2024年3月に研究会(対面方式)を開催して、判決計6件および研究報告・書評計3件を検討した。また、(2)については、『法学セミナー』誌連載「アメリカ憲法判例の最前線」から選択した判決および書き下ろしを加えて、小竹聡・塚田哲之編著『アメリカ憲法判例の展開2015-2018』(日本評論社、2023年9月)として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度においては、近時の主要な合衆国最高裁判決についての検討を進め、とりわけ、人工妊娠中絶に関する判例変更、大学入学者選抜における人種の考慮を厳しく限定する判決など、あらためて先例拘束性原理と憲法判例の変更に関する論点を1つの重要な検討課題とした。理論面では、最高裁による憲法判断を規定する要因の1つである先例拘束性原理は、一般的には現状維持的機能を果たし、あるいは現状を変更する場合でも漸進的とする抑制的機能が想定され、これら機能を通して一定の統合作用を果たしうると考えられるが、上記論点のように先例自体が厳しい政治的・社会的対立の渦中に置かれてきた場合には、先例拘束性原理とその適用もまたその対立を免れえず、先例を変更する場合はもちろん、変更しない場合でも先例理解の当否をめぐってさらなる政治的・社会的対立を生み、その結果「分断」状況を緩和する方向にははたらいていないという理解を抽出している。また、最高裁裁判官を含む連邦裁判官人事の党派的運用が、下級裁判所レヴェルでも党派的との批判を受けるような判断につながり、さらにそれが最高裁に上訴され一定の判断を引き出すことで、「分断」状況の再生産とも呼ぶべき効果を生んでいることも確認している。これらの成果は論文・研究報告等の形で順次公表しており、また「研究実績の概要」欄記載の書籍(『アメリカ憲法判例の展開2015-2018』)においても可能な範囲で直近の諸判決にも言及するなど、本研究課題の成果が反映されている。 一方、上記以外の理論的課題については、なお検討の途上にあり、また、2023年度に予定していたアメリカ合衆国出張は実施できていないことから、十分研究を進められていない面も残されているが、総体としてはおおむね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる2024年度においては、(1)引き続き重要な最高裁判決をその政治的・社会的背景も含めて検討する作業を進め、(2)最高裁による違憲審査と政治体制・社会構造との関係の理論的把握、最高裁による憲法判断の規定要因についての理論研究に注力する。また、(3)前年度実施できなかったアメリカ合衆国への出張を行い、資料収集および可能であればインタビューを通して上記(1)(2)に関する知見を補強することを計画している。これらを通して、本研究課題のとりまとめ作業を行う。
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