研究課題/領域番号 |
22K01172
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤澤 尚江 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (60533750)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | ギグワーク / プラットフォームワーク / 労働契約 / 国際私法 / 法性決定 / 準拠法 / 国際裁判管轄 / 労働法 |
研究開始時の研究の概要 |
コロナ禍を受け、ギグワークという新しい働き方が国内外で注目されている。ギグワークでは、国境を超えた仕事の発注も活発に行われるが、事業者と就労者とが異なる国にあれば、いずれの国で紛争解決ができ(国際裁判管轄)、いずれの国の法を適用するか(準拠法)が問題となる。ところが、ギグワークは、時間的・場所的拘束性や指揮監督が希薄であるため、労務提供地に着目する日本の国際裁判管轄や準拠法の決定規則が想定している働き方とは大きく異なる。 本研究は、ギグワークについて、米国法やEU法等を比較対象とし、判例・文献の分析及び現地調査により、あるべき国際裁判管轄・準拠法の決定ルールを明らかにしようとするものである。
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研究実績の概要 |
近年、ギグワークという、インターネット上のプラットフォーム技術を経由して仕事を請け負う働き方が増加している。ギグワークは、時間的・場所的拘束性や指揮監督が希薄であり、労務提供地に着目する日本の国際裁判管轄や準拠法の決定規則が想定している働き方とは大きく異なる。本研究は、ギグワークという新しい働き方について、あるべき国際裁判管轄・準拠法の決定ルールを探るものである。 令和4年度は、EU法との比較から、特に「労働契約」の国際私法上の性質について検討した。準拠法・国際裁判管轄について、法の適用に関する通則法(適用通則法)12条、民事訴訟法(民訴法)3条の4第2項等には労働者保護に関する特則がある。しかし、特則の対象となる「労働契約」の定義は条文から明らかではない。 研究成果として、下記「現在の進捗状況」にあげる拙稿を公表し、次を示した。すなわち、欧州司法裁判所は、近年、個別労働契約事件の国際裁判管轄に関して3件の判断を示している。いずれも当事者間の従属関係の存在を重視して、労働契約の有無を判断する。従属関係を重視する理由は、労働契約に適用される規定の労働者保護にあるためである。保護に値すべき弱者でないとすれば、保護の規定は適用されないとするのがその趣旨である。 日本の国際私法でも、法律関係の性質決定は、その規定の趣旨・目的を考慮してなされるべきと考えられる。適用通則法12条も、労働者保護をその目的とする。従って、EUの裁判例と同様に、本条は、保護に値しない者への適用は排除されるものと考えられる。 しかし、2022年脱稿時、新しい働き方に対する労働法規のあり方について、欧州・日本で立法が進んでいるところであった。したがって、実質法の進展も踏まえて再度検討の必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、予定通り、EU法に関する資料の収集・分析を行った。研究成果は、拙稿「EU国際私法と労働契約の概念」筑波ロー・ジャーナル(2022年)に公表する。紙ベースで資料収集を行うだけでなく、疑問の解決や意見交換のため、Roxana Banu講師(Queen Mary University of London)、Ugljesa Grusic准教授(University College London)等と検討の機会を持つことができた。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、欧州法との比較から「労務提供地」の意味を検討している。民訴法、適用通則法ともに、労務提供地を基準とすることが労働者保護にとって重要であるとしながら、必ずしもこの語の意味が明らかではないからである。この研究の成果は、本年令和5年度中の公表を予定している。 また、令和4年度、令和5年度のEU法に関して得られた成果と比較しながら、本年令和5年度後半からは、米国法の本格的な分析を予定する。令和4年度に検討した「労働契約」の意味に関して、日本で新たな裁判例を確認したため、本判例に関する分析も予定してる。 さらに、令和5年度は、研究会報告を行い成果を公表するよう調整している。
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