研究課題/領域番号 |
22K01174
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
中西 優美子 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (80327981)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | EU法 / EU基本権 / 人権 / 環境 / EU市民権 / 権限 / 裁判所 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、EUにおける個人、企業、NGOなどの権利および義務を中心としてEU人権法の体系を構築することである。 そのために、EU市民権および基本権憲章にかかわる、EU司法裁判所の判例の発展並びに欧州人権裁判所および国内憲法裁判所の判例法の発展を検討する。 また、EU条約、EU運営条約、EU基本権憲章の中の市民、人、市民社会がどのように位置づけられ、どのような権利および義務を付与されているのか検討する。「人」には、現代世代の人のみならず、将来世代の権利や利益も考える。また、現代世代の持つ権利のみならず、将来世代に対する責任・義務、動物を含めた自然に対する責任・義務も考慮の対象とする。
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研究実績の概要 |
EU人権法の体系化を目指し、本の出版化に向けてきたが、2023年度は、文献を読むとともに、執筆をし続けてきた。それが形となったのが、『EU基本権の体系』(法律文化社 2024年)である。これは、これまで権限を中心に研究してきたが、権限の行使が基本権に密接に関係していることを認識し、これまでの研究成果を活かしつつ、人権・基本権という観点からまとめたものである。本書は、約360頁、12の章から構成される。 また、複数の英語論文が公表された。主なものとして、EU運営条約267条に規定される、先決付託が、EU司法裁判所だけではなく、ドイツ連邦憲法裁判所や欧州人権裁判所によっても義務づけられていることを示した、"Parallel Obligations to Seek Preliminary Rulings from the Court of Justice of the European Union in the European Legal Space", Zur Verwirklichung eines Vereinten Europas, Festschrift fuer Rudolf Streinz zum 70. Geburtstag, 2023, C.H.Beckが出版された。国際法学会での英語報告を基礎にして執筆した、“The Development of, and Issues Associated with, EU Legal Spaces”が、Japanese Yearbook of International Law, Volume 66, 2023において公表された。また、EU司法裁判所において1960年代に確立されたPlaumann事件に基づく判例法のために、私人の原告適格が認められないことに鑑み、この判例法を克服する方法を探った論文、”Possibility of Extending Legal Standing under Article 263 (4) TFEU in the Matter of Climate Litigation”が Hitotsubashi University of Law and Politics, vol. 52が公表された。 加えて、6本の判例研究が公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
EU人権法の体系化したものとして、『EU基本権の体系化』(法律文化社)として、2024年3月末に刊行された。これは、これまで権限を中心に研究してきたが、権限の行使が基本権に密接に関係していることを認識し、これまでの研究成果を活かしつつ、人権・基本権という観点からまとめたものである。 概要であげた論文に加え、ビジネスと人権について日本とヨーロッパを比較し英語で執筆した論文がイタリア語に翻訳され、“LA DUE DILIGENCE D’IMPRESA IN EUROPA E IN GIAPPONE”Traduzione di Erica Lombardozzi., ANNUARIO DI DIRITTO COMPARATO E DI STUDI LEGISLATIVI, 2023に公表された。 また、EU司法裁判所の判例研究が6本公表された。「EU予算保護のためのコンディショナリティ規則と法の支配」EU法研究 13号、「女性に対する暴力及びDVの防止に関するイスタンブール条約をめぐるEUの締結権限と締結手続」自治研究 99巻5号、[EUが当事者でない国際海事機関(IMO)におけるEUの代表性と権限」国際商事法務52巻1号、「EUにおける一事不再理(ne bis in idem)原則と相互信頼」自治研究99巻7号 、「EUにおける気候訴訟と原告適格」自治研究 99巻10号、「オーフス条約九条三項及びEU基本権憲章四七条によるEU構成国における司法アクセスの保障」自治研究100巻1号が公表された。 加えて、国際シンポジウムやセミナーで英語やフランス語で報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
『EU基本権の体系』(法律文化社、2024年)で十分に取り扱えなかった、デジタル化における基本権や将来世代の基本権等を引き続き、研究していく。デジタル化については、EUにおいては、デジタルサービス法(DSA)、メディア自由法及びAI法が基本権の保護に関わっており、その発展を注視していく。また、欧州人権裁判所で高齢女性の人権侵害が気候訴訟で認められたこともあり、気候訴訟と人権の関係を検討し、次世代・将来世代の利益の保護の在り方を探っていきたい。 2024年6月に欧州議会選挙が実施されることから、EUにおける民主主義について再考していきたいと考える。また、今回の選挙ではSpitzenkadidatenと呼ばれる選挙候補者が前面にでて、選挙を戦っており、欧州委員会の委員長が選出される際に、EU条約17条に定められるように欧州議会選挙がどのように考慮されるのかも注目していきたい。さらに、法の支配の問題がポーランドで改善し、他方、ハンガリーでは引き続き問題となっていることから、EUの諸価値との関係で、検討を続けていきたい。 加えて、EUでは欧州グリーンディールやFit for 55などを通じた環境への移行が進んでおり、数多くの措置が矢継ぎ早に採択されてきている。それらを分析すると同時に、EU市民との関係で検討することを考えている。 引き続き、日本語と外国語で論文を執筆し、公表していきたい。また、判例研究を執筆し、自治研究や国際商事法務に公表していく予定である。 さらに、国際シンポジウムやセミナーに引き続き、積極的に参加していく予定である。
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