研究課題/領域番号 |
22K01177
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
種村 佑介 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80632851)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 国際私法 / 国際知的財産法 / 知的財産に関する国際私法原則 / 先端科学技術 / AI / WTO・TRIPS体制 / 統一法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、知的財産の国際的保護の実現のために、日本はもちろん、韓国、中国その他の東アジア諸国からも受入れ可能な、知的財産に関する国際私法の共通原則を見出すことを目指すことにある。本研究は先行研究に改めて光を当て、これを継承・発展させるものであるけれども、とりわけ東アジア地域の特性を見極めてさらなる共通原則の発見や望ましい発展の提案を目指しており、従来の研究成果の批判的検証にとどまらず、各地域の特性や技術の進展、実質法の動向を見極めながら「進化した共通原則」の策定を最終的な到達点とする。
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研究実績の概要 |
2023年度は、前年度の韓国における国際学術大会で知見を得た2022年の韓国国際私法改正についてさらに深く検討するために、この法改正と先端科学技術との関係に焦点をあてた国際シンポジウムを開催した。その研究成果のうち、英語で書かれたものを『比研オンライン・フォーラム』に掲載したほか、一部原稿を日本語訳して『比較法学』に公表する予定である(李鍾赫(種村佑介監訳=衛藤凜哉訳)「韓国国際私法の新展開」比較法学58巻2号(2024)に掲載決定済)。 また、2023年度に公表した知的財産権侵害事件に関する判例評釈(種村佑介「ネットワーク関連発明の越境的実施とわが国特許権の効力」新・判例解説Watch33号(2023)333頁)を契機として、日本工業所有権法学会からの依頼によりEU国際知的財産法の基礎に関する論説を寄稿した。 さらに、2023年度は研究成果の国際発信も積極的に行った。まず、早稲田大学においてドイツ・ハイデルベルク大学との共催で開催されたシンポジウムに参加し、戦前日本の共通法の概要を英語で報告した。その研究成果は、Yusuke Tanemura, “Annexations and Territorial Conflicts in Private International Law: Some Comments from a Perspective of Prewar Japanese Law”早稲田大学比較法研究所オンライン・フォーラム・シリーズ2023-1として公表されている。次に、韓国東亜大学にて開催された日韓国際私法学会の共同学術大会に日本国際私法学会からの派遣で参加、特許権侵害における属地主義の緩和に関する日本の近時の裁判例の動向を英語で報告し、議論を交わした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2023年度は早稲田大学での日韓共同シンポジウムの開催(早稲田大学比較法研究所主催・日韓共同シンポジウム「2022年の韓国国際私法改正と先端科学技術」2023年9月23日)のほか、複数の国際シンポジウム(初期キャリア研究者の国際フォーラム「日欧における近時私法の展開」2023年6月7日;第3回韓国国際私法学会・日本国際私法学会共同学術大会「日本の準據法決定規則の法と實務の最近動向」2023年9月16日)に招待され、報告機会を得たり研究成果を公表したりしたことで、東アジア地域における先端科学技術と国際私法の関係、およびEU国際知的財産法に関する考察を当初の計画以上に深めることができた。特に、特許権侵害と属地主義の緩和に関する判例評釈が日本工業所有権法学会の目にとまり、学会誌に論説の形で研究成果を公表する機会を得た(種村佑介「特許権侵害と国際私法の基礎に関する一考察──保護国法をめぐるウルマーとマルティニーの所説を中心に」日本工業所有権法学会年報47号(2024)掲載決定済)ことは、研究のインパクトという面でも特筆すべき研究成果といえる。 また、上記日韓共同シンポジウムでも話題になった国際私法と生成AIとの関係に関する議論は、2024年度に韓国で開催予定の韓国次世代コンテンツ財産学会の国際学術大会の統一テーマにも選定され、今後さらに深化していくことが期待される。この論点は、次年度上半期における研究の中心的課題となることが予想される。 以上の研究活動を通じて、次年度に取り組むべき課題が一層明確になったことに加え、EU国際知的財産法の基礎理論に関する研究成果も順調に公開できている。これらのことから、本研究課題は当初の計画以上に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はまず、9月開催予定の韓国次世代コンテンツ財産学会の国際学術大会への参加に向けて、国際知的財産法分野の先端的問題、とりわけAIに焦点をあてた研究を進め、英語による成果の公表を目指したい。これと並行して、2023年度のEU国際知的財産法の研究のなかから抽出した基本原則ともいうべき保護国法主義に関する仮説の検証、さらにはILAガイドラインやアメリカ抵触法第3リステイトメントの最新動向を探る研究も進めていく。その際には、前年度に参加した複数の国際シンポジウムで議論を交わしたドイツや韓国の研究者らとも適宜意見交換をするなどして、研究課題を多角的な視点から分析することを心がけたい。
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