研究課題/領域番号 |
22K01178
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
池島 大策 早稲田大学, 国際学術院, 教授 (50255577)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 権威主義 / 民主主義 / 中国 / 一帯一路政策 / 環境 / 海域紛争 / 気候変動 / 海面上昇 / 権威主義的体制 / 民主主義的体制 / 人権 / コロナ政策 / 国際法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、中国等の権威主義的(authoritarian)諸国がその国内・外交政策を通じて①現行国際法に及ぼす影響、②その効果が今後国際社会秩序に有する意味を、③「一帯一路政策」(BRI)等に具現化される具体例から検証する。その主題は、中国の経済力、軍事力や技術力の増大に伴い、BRIが主権平等、内政不干渉、民主主義的統治等を内実とする現行国際法の諸原理に迫る変容の有無である。特に、中国を中心に海洋、極域、宇宙、サイバー空間等の諸分野の総合的な考察から、権威主義的諸国が一般にウェストファリア諸原理やリベラルな民主的統治に影響を及ぼすかを検証し、その現行国際秩序に及ぼす影響を展望する。
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研究実績の概要 |
民主主義は西洋型のみが模範といえようか。選挙が権力の正当化に使われたり、 格差の固定や世襲の弊害が生じたり、政治の固定化、民意の分断化、金権腐敗政治などは民主主義的統治にも共通の問題である。統治の根拠たる民主主義は、政権の正統性(legitimacy)を占う装置や手段として選挙を重視する。これに対し、権威主義も現代では、一部の国を除けば、何らかの選挙または相当の装置を駆使して、自らの政権の正統性を担保する。その違いは何か。 選挙における民主主義的な手法の特性に、(世論)意見の多様性、思想表現の自由、結社・集会の自由などの保障(憲法による)を前提とする。パフォーマンスだけを重視して内実の伴わない政治は、一部の国民の人気取りから多数派への支持拡大につながりやすい。しかも、この動きはナショナリズムと結びつきやすく、メディアを駆使した扇動政治を加速させ、時には急進的な主張にもつながりやすい。こうした国内事情は、対外的にも様々な影響を政策上及ぼす。特に、条約交渉・締結の際に顕著に国内世論や統治状況などが反映される場合が多い。 以上の考察分析から、気候変動に伴う海面上昇が諸国に与える影響に関して、論文、共著書や学会発表において、政治体制を超えた人類共通の課題としての環境問題という視点から、政治的イデオロギー的な観点よりも、科学技術的な判断による国際法形成の必要性を主張した。 海洋法関連でも、南シナ海問題は、沿岸当事国の政治体制を超えた地域固有の歴史的文化的背景を踏まえた紛争管理体制が敷かれるべきである旨を海外発表で行った。これらの環境問題や海域利用問題は、国内統治体制に一定の相互的な影響を与えつつも、政治的要素を極力削減したうえで、人類共通の課題という視点から国際協力と連帯の推進が望まれることが分かる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
元々考えていた国内体制の違いからくる外交政策が国際法形成にどのような影響を与えうるかという観点は、概ね順調に、海洋を中心とした環境問題や海域紛争などを事例研究として、考察を多面的に展開できていると考えている。さらには、中国にもう少し重点を置いて深く切り込む必要性が出てきているが、分野の多面性や捉える事項の多さなどから、ある程度、取り扱う国際法上のイッシューを絞ることも効率的であり、2年目として悪くないと思われる。 むしろ、3年目に繋げる考察対象として、海洋関連の問題以外にも、大気圏や地球環境資源、サイバー空間などといった多面的な次元での国際法形成の過程に、中国をはじめとして権威主義的と捉えられる政治体制と民主主義的体制側の諸国との取組の違いがどのように顕著にみられるのかを今後は検討を広げていける道筋がつけられたと思われる。 2年目の進捗状況は、少なくとも2度にわたる海外での学会発表や、それとの関連性がある論文2本の出版が英語によって行われたことからも、一定の成果を上げるほど進展したことに顕現しているといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今のペースを保持しつつ、個別的なケーススタディをできるだけ多く見つけて、その共通の特色や課題を抽出することに専念したい。とりわけ、コロナ禍がほぼ終息に向かい、海外出張や海外発表がさらに円滑に行いやすくなっている事情を踏まえて、中国をはじめとした海外の研究者ともコミュニケーションをはかり、協働作業の可能性を高める努力を一層行いたい。 また、海外の学術誌への投稿をさらに増やし、そのインパクトとリアクションを検討したうえで、自分の研究の幅を広げたい。具体的には、国際法形成過程における民主主義的要素やその度合いがどれ程関わってくるか否かを、出来る限り広範な国際法・政治の各種分野において検討を進めていくことである。
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