研究課題/領域番号 |
22K01179
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
洪 恵子 南山大学, 法学部, 教授 (00314104)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 欧州逮捕状 / European Arrest Warrant / 国際刑事協力 / 犯罪人引渡制度 / extradition / カタロニア / 分離独立 / 国際法 / EU |
研究開始時の研究の概要 |
刑事分野における国際協力の国際法から見た特徴は、協力を行うかどうかの決定について行政府が多くの裁量を持つことである。これに対してヨーロッパで導入された欧州逮捕状(European Arrest Warrant)手続は司法機関である裁判所を主体として位置づけ、国際刑事協力の特徴である政府の裁量を制限したとして評価された。しかし実際にこの制度が運用されると、事案に内在する政治性から依然として政府の判断も重要であることが明らかになった。本研究では欧州逮捕状をめぐって生じた具体的な事件を手がかりに(プチデモン事件)、国際刑事協力における政府と裁判所の適切な役割分担はどうあるべきかを考察する。
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研究実績の概要 |
本研究課題は「国際刑事協力における行政府と裁判所の役割分担の再検討-欧州逮捕状を手がかりとして」である。第二次大戦後、刑事分野における国際協力は伝統的な国家間の互恵的な制度から国際犯罪の規制のための国際協力の制度へと変化してきた。しかし協力を行うかどうか決定を行う際に行政府(行政権)が多くの裁量を持つこと、また国内の裁判所(司法権)の役割は限定的であるという構造に変わりはなかった。これに対して、2002年欧州逮捕状枠組決定で導入された欧州逮捕状(European Arrest Warrant)は政府の裁量を排除し、手続きを「司法化した」と言われ、国際刑事協力を客観化するものとして評価されてきた。しかし実際にこの制度が運用されるようになると、事案に内在する政治性から依然として政府の判断も重要であることが明らかになってきた。 本研究ではスペイン・カタロニア地方の分離独立の指導者たちに対して発行された欧州逮捕状をめぐって生じた国家間の対立に関する関係当局の見解の相違を検討することを通じて、国際刑事協力における各国の政府と裁判所の適切な役割分担はどうあるべきかを考察することを目的としている。より具体的には、2017年10月以来、プチデモンを始めとするカタロニア独立運動の指導者たちに対してスペイン政府により発行された欧州逮捕状(European Arrest Warrant, EAW)をめぐって、今日まで5年以上にもわたって争われている問題である。カタロニア人たちが庇護を求めたベルギーやドイツなどでの司法判断に加えて、つい先ごろ2023年1月31日に欧州司法裁判所がスペイン政府の請求によって先決的判決を下した。2022年度はこうした一連の司法判断の分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題が対象とする問題は現在進行中の問題であり、訴訟が提起されたベルギーなどにおける現地調査が必要であるところ、COVID19の影響もあり、海外出張を企画することが難しかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、カタロニア人指導者たちに対して発行された欧州逮捕状をめぐってくだされた司法判断や専門家による分析を検討することに加えて、ベルギーでの現地調査を実行する予定である。すでに関係者への調査依頼を行っており、おおむね好意的な返答があったので、海外出張により多くの知見を得られると期待している。
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