研究課題/領域番号 |
22K01180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05030:国際法学関連
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
松井 章浩 大阪工業大学, 知的財産学部, 准教授 (20511645)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 主権免除 / 裁判権免除 / 執行免除 / 戦後補償 / クラウド法 / 国際法と国内法 / 国内裁判所 / 人権侵害 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、韓国における対日慰安婦訴訟と国内法改正案、イタリアにおけるドイツ主権免除事件ICJ判決以降の対ドイツ戦後賠償訴訟、米国法上の国際法違反行為免除例外規定に関する判例、国際法が要求する以上に執行免除を絶対化する各国国内判例を手がかりに、国際法上の主権免除規則とされている規範の変更を試みる国内法の新たな制定・改正、および、国内裁判所の判決は国際法にとって事実に過ぎないのかを問うものである。国際判例、国内判例、国内法を渉猟して、研究発表、論文投稿を重ねて、主権免除をめぐる国際法と国内法の相克を再検討することを目的とする。
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研究実績の概要 |
主権免除をめぐる国際法と国内法の相克を明らかにする本研究課題は、(1)韓国における対日戦後賠償訴訟の動向、(2)ドイツ主権免除事件ICJ判決以降のイタリア国内法・国内判例の意義、(3)米国外国主権免除法上の国際法違反行為免除例外規定に関する判例、(4)制限免除主義が妥当する執行免除が拡大している根拠を検討している。当該年度においては上記のうちの(1)を中心に検討した。 (1)については、二つの韓国慰安婦訴訟のうち、いわゆる第二訴訟であるソウル中央地裁2021年4月21日判決が日本に裁判権免除を認めていたが、この訴訟の控訴審判決であるソウル高等裁判所2023年11月23日判決は一転、裁判権免除を否定した。2023年11月23日の前後で、韓国慰安婦訴訟における裁判権免除の状況は大きく変化したのである。そこで、裁判権免除否定の論理構成について、先に裁判権免除を否定していた第一訴訟の第一審判決と比較検討した結果、控訴審判決は国際法上の論点について慎重に整理されている一方、慰安婦に関わる行為がドイツの主権免除事件ICJ判決が前提とする「武力紛争の遂行中」に発生したものではないとするときの「武力紛争(armed conflict)」の定義は特徴的であることが明らかになった。国内、国外における研究発表を重ねながら、研究成果公表に向けた準備を進めた。 (2)については韓国慰安婦訴訟でICJ判決に言及している部分の検討を進めた。(3)については韓国慰安婦訴訟に類似する米国判例を検討した。(4)については、昨年度に引き続き、米国のいわゆる「クラウド法」(米国国内の企業が管理しているデータの保存場所が米国国外であっても米国捜査当局が強制的にアクセスするための司法手続を明確化する米国法)と主権免除の関係を検討した。韓国慰安婦訴訟と結びつけて、研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のうち、(1)韓国における対日戦後賠償訴訟の動向、および、(4)制限免除主義が妥当する執行免除が拡大している根拠については、最近の動向を追いながら、一定程度の検討を進めることができた。研究成果を取り纏めている途中であり、研究成果を公表する準備が進んでいる。他方、(2)ドイツ主権免除事件ICJ判決以降のイタリア国内法・国内判例の意義、および、(3)米国外国主権免除法上の国際法違反行為免除例外規定に関する判例については、研究計画において現地での資料調査と研究成果の発表を予定していたが、当該年度中には円滑な渡航を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題のうち、(1)韓国における対日戦後賠償訴訟の動向、および、(4)制限免除主義が妥当する執行免除が拡大している根拠については、今後も最新の状況を精査して、研究成果を公表する。 また、(2)ドイツ主権免除事件ICJ判決以降のイタリア国内法・国内判例の意義、および、(3)米国外国主権免除法上の国際法違反行為免除例外規定に関する判例については、当初の研究計画のとおり、現地での資料調査と研究成果の発表を可能なかぎり遂行し、資料調査を進めて、研究成果好評の基礎を形成したい。
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