研究課題/領域番号 |
22K01189
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
川濱 昇 京都大学, 法学研究科, 教授 (60204749)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 競争プロセス / 公正競争阻害性 / 自由競争減殺 / 市場支配力基準 / 効率性 / Theory of harm / デジタル・プラットフォーム / 消費者厚生基準 / 新ブランダイス主義 / 予防原則 / 市場支配力 / プラットフォーム |
研究開始時の研究の概要 |
自由競争減殺は、市場支配力基準の予防的基準と位置づけられる。しかし、その内容は不明な点も多い。米国法においては予防的規制への冷淡な対応が一般化したこともあって、二重規制不要論有力化し、予防規制の具体的内容に関する理論的な検討は日米ともに長らく低調であった。本研究は、自由競争減殺型の行為類型に関する比較法研究と経済分析、さらに市場支配力基準の洗練された研究を背景にして、自由競争減殺効果を、理論的に考え得る様々なタイプに分けて厳密に検討するものである。それらのタイプがどのような局面で適切であるかを検討するとともに、なぜ市場支配力基準と予防的規制の二本立てが必要であるかの実質的な論拠も検討する。
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研究実績の概要 |
自由競争減殺型公正競争阻害性は競争の実質的制限を危険性レベルでとらえるものである。前者についての判断基準を検討するには後者の分析方法を確定させる必要がある。本年度は競争の実質的制限すなわち市場支配力の形成等の分析(市場支配力分析)の全容を明らかにした。特に、行為の態様から市場支配力の形成等を推認する手法を検討した。ここで行為の態様の問題とは、当該行為が競争促進的目的で行うことが一般的な類型なのか、市場支配力の形成等の目的(その予備的目的を含む)を持つことなしには合理的でないことが多い類型なのかといった観点からの行為の性質決定である。従来の研究は市場支配力レベルで効果の強い推認をもたらすような類型(当然違法型)に呪縛されるあまり、行為の態様、主体と市場の特性、理論的枠組み(Theory of harmと競争促進的理論)との連関で自由競争減殺型公正競争阻害性を把握するという観点が看過されてきた。今年度の研究ではその観点からの分析方法を整理した。米国ではここ40年ほどの判例が極度に積極過誤を避けようとするあまり、危険性レベルでの介入を避けてきたため、危険性レベルでの規制の経済理論的基礎の解明は判例法では展開されていないことを明らかにした。これに対して、EUでは101条の目的による制限の法理の妥当範囲が近時拡張されるとともに、目的による制限の法理が妥当するための前提条件の探求という作業が行われてきた。これは公正競争阻害性についての本校のアプローチと整合的であることを明らかにした。さらに、目的による制限と実質的に同視されるような規制類型が102条の判例法でも存在すること、またそれが効果ベースの規制が主流化した状況下でも確固たる地位を示していることも明らかにできた。また、デジタル・プラットフォームでのEU及びわが国の新たな規制が、この観点から正当化されることも示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
自由競争減殺型公正競争阻害性を不公正な取引方法の典型類型の各種Theory of harmに照らして、その危険確率と平均効果に照らして検討するという当初の研究計画は順調に進展している。平均効果については競争促進的効果も含めて考える必要があるという問題は、今年度検討した行為の態様からの競争制限効果の推認という問題のコロラリーとして対処できた。また、昨年度に重要課題として浮かび上がった、EUの目的による制限の現代型展開の検討も、タイムリーなEU司法裁判所の重要な先行判決の登場によって作業仮説を肯定する形で進展できた。さらに、大きな市場支配力を持つ事業者の予防的規制のとして公正競争阻害性を考察するという課題も、デジタル・プラットフォーム分野における日本版Degital Markets Actともいうべき立法の準備段階の作業に関与することで、単なる抽象的議論を超えた、実践的価値のある形で進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績及び進捗状況で説明したように、当初の研究計画は順調に進展している。初年度に浮かび上がったEU法の目的による制限の検討やデジタル・プラットフォーム規制の検討も順調に進捗している。ただし、前者については重要な判決の二次文献の検討が残っている。後者についてはようやく成案となった法律案を素材に再検討する必要がある。これらの作業とともに、これまでの研究成果を研究会で報告し、論文として公表する作業を最終年度に進める予定である。
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