研究課題/領域番号 |
22K01191
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
柴田 潤子 香川大学, 法学部, 教授 (90294743)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | プラットフォーム規制 / 市場支配的地位の濫用規制 / データプラットフォーム / P2B規則 / デジタルプラットフォーム / 相対的地位の濫用規制 |
研究開始時の研究の概要 |
デジタル経済においては、独占寡占化が進展し、巨大IT企業とその取引相手方、消費者との格差は益々拡大している。ゲートキーパーとしてのデータプラットフ ォーム(以下、DPF)への取引相手方の依存・従属性は、多面的に強化されており、取引主体の自主的・自律的な判断が脅かされることになる。データ経済の進化を背景として、本研究では、消費者がデータ提供者としてコアな役割を果たすことに着目し、消費者は、取引においてより積極的にデー タコントロールに関与し、自律性を確保すべきであるという命題を基軸として、取引上の格差に基づく、独禁法上の相対的市場力の濫用規制を中心とした法規制の在り方を解明する。
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研究実績の概要 |
昨年に引き続き、オンライン上のプラットフォーム(PF)に対する競争法的な規制のあり方を研究テーマとして、特に、仲介者としてのPFとそのビジネスユーザーとの関係を前提とした規制を取り上げた。まず、欧州のP2B規則を取り上げ、PFとビジネスユーザーの取引の透明化・公正性を確保する規制の意義を検討した。P2B規則は、規模に関係なく、仲介として事業活動をするPFに対して適用される点に意義がある。オンライン上のPFは、PF上のルール設定を一方的に行いうる地位にあることに着目されており、PFがサービスを制限等する場合の理由の開示、ランキングパラメーターの開示などに関する規定があり、透明性を確保することが、不公正性の一つの重要な要素として考えられていることは注目に値すると考えている。このような欧州の規制との比較で、日本におけるプラットフォームの透明化規制を趣旨とするいわゆる透明化法について、国際的な学会ASCOLAで報告する機会を得た。日本の透明化法も、EUのP2B規制と共通するコンセプトを持っていると言えるが、日本の透明化法は、P2B規則と異なり、規制対象を一定の規模の大きなPFに限定していること、経産省に報告書を提出するという措置を中心とするなど、対話を重視している側面があり、私訴を予定しているP2B規則とは重要な相違がある。 このようなPFとビジネスユーザー間の取引の透明化に関するルールは必要であるものの、取引の公正性を確保するためには、さらなる規制が必要である。特に、PFに対するユーザーの従属性(異属性)に着目したルール策定がEUレベル、ドイツで進んでいる。これらの新しい立法の特徴は、従来の競争法規制をより規範的な行動ルールを策定していることである。EUのデジタルマーケット法とドイツの競争法の改正を比較し、その特徴を明らかにし、論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プラットフォーム経済において、特に力の不均衡から生じるプラットフォームとビジネスユーザー取引の問題として、取引条件等の透明化の問題からさらに進んで、取引それ自体のルールを策定する新しいEUの立法、ドイツの立法についてその特性を明らかにできた。特に、競争法的観点から、プラットフォーム規制のコアとなる要素、取引条件等の不透明であること自体が不公正であるという考え方、取引においてユーザーに選択可能性があることの重要性、取引条件をプラットフォームが一方的に決めるのではなく、そこにユーザーが関与することは、プラットフォーム経済が健全に展開するために必要であり、この要素は、消費者がプラットフォーム経済の中で自主的な主体として活動していくためにも重要な要素であり、次に、消費者との関係で整理する道筋を得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
課題として残っているデータの提供者としてコアな役割を果たす、消費者・ユーザーの経済的自律性をどのように競争法の枠組みで実現できるかを考察する。特に、ドイツのFacebookのケースを契機とする学説の展開をフォローしつつ、消費者の経済的自律性は経済社会の根幹であると考えており、競争法による実現のための理論を考えたい。また、日本においても独禁法とは別に、プラットフォーム規制立法が展開している。欧州・ドイツとの異同も明らかにし、プラットフォームを中心とした規制を体系的に整理する。
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