研究課題/領域番号 |
22K01192
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05040:社会法学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山下 昇 九州大学, 法学研究院, 教授 (60352118)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 自己都合退職 / 不本意退職 / 産業雇用安定助成金 / 転籍出向 / 労働法 / 退職 / 紛争解決手続 |
研究開始時の研究の概要 |
退職(自己都合退職や退職勧奨)をめぐる労働相談は解雇よりも多いが、労働行政が公開する資料(情報)からは、その内容が必ずしも明らかではないため、退職をめぐる相談内容を具体的に明らかにする。そのうえで、退職をめぐる紛争をより実効的に解決できるような仕組みやガイドラインの策定に向けた手続的規制の在り方を考察する。また、退職紛争解決の法規制や法解釈を課題として、裁判規範としての法理論及び失職に対する現実的な法的救済(損害賠償等)の在り方を検討するとともに、行政ADRとしての労働局の紛争調整委員会(主にあっせん)の活用を中心に、退職「合意」の実質化と労働者の法的救済を実現するための法的な考察を行う。
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研究実績の概要 |
2022年度は、現在の日本における自己都合退職の問題について、「巻頭言・民事上の個別労働紛争の第二位は?」(労働法律旬報2020号4頁)で、労働相談件数の現状(いじめ・嫌がらせに次いで第2位であること等)、自己都合退職の相談の特徴、法的規制や保護の不十分さ、今後の課題などを総論的に論じた。一方で、新型コロナウイルス感染症の影響は、2022年度においても引き続き特定業種の新規採用の抑制や雇用調整助成金による既存の雇用の維持という形で出ている。そして、他業種での雇用維持を図る方法として雇用安定事業としての産業雇用安定助成金による出向が定着しつつあることが、近時の政策の状況を分析して明らかになった。今後は、転籍出向による労働移動を促進する政策が必要となることが予想されるが、転籍は、転籍元との合意を通じて退職し、転籍先との合意を通じて就職するものであり、退職を媒介とした異動ともいえる。近年活発化しつつあるこうした労働移動の促進についても、退職の一局面として、検討することとした。 中国に関しては、文献研究を通じて、辞職に関する基本的な法規制を確認した。中国の労働契約法では、期間の定めの有無にかかわらず、労働者は、30日前までに書面で予告することにより、辞職することができる。辞職理由の制限はなく、労働者には、退職の自由が保障されている。そして、使用者は、教育訓練に関する服務期間と秘密保持・競業制限に関する特約に違反する場合を除いて、労働者に対して違約金を求めることはできない。こうした中国における辞職の自由の保障は、使用者の解雇権の制約とのバランスが取れていないとの指摘もある。現在、文献研究を進めており、中国の地方の通達や裁判例の分析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献研究が中心であるが、【研究実績の概要】で示した通り、日本と中国の辞職の問題について、研究を進めている。2022年度において、具体的な研究成果として公表したものは少ないが、2023年度ないし2024年度に公表するように準備を進めている。また、こうした辞職の問題は、法的規制が厳しい解雇や雇止めを使用者が回避する意図のもとに、労働者による不本意な退職を迫ることとも大いに関係している。そこで、解雇や雇止めの問題についても、補足的に研究を進めた。当初からコロナ禍の影響が2022年度も継続する可能性が高いことを想定して、文献研究を中心とした2022年度の研究計画を立てていたことから、研究の進捗はおおむね順調に展開していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている退職に関連する日本と中国の政策の動向や裁判例の分析を継続する。あわせて、2023年度は、個別労働紛争解決制度における退職紛争の処理状況について、聞き取り調査等を行う予定である。主に、東京労働局や大阪労働局などの処理件数の比較的多い行政機関を中心に、実態の把握に努めたいと考えているが、今後、聞取り先と調整を進める。 また、中国における労働紛争解決機関に関する研究を行う(可能であれば、北京等での聞き取りや中国の研究者との意見交換を行う)。中国における実務における退職紛争の実態(解決が難しい状況など)及び課題解決の方向性を明らかにする。
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