研究課題/領域番号 |
22K01209
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野澤 充 九州大学, 法学研究院, 教授 (70386811)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 刑法 / 結合犯 / 財産犯 / 刑法各論 / ドイツ刑法 / 刑事法学 |
研究開始時の研究の概要 |
平成29年に改正された現行の「強盗・強制性交等罪」(刑法241条第1項及び第2項)は、理論的観点および「犯罪段階の発展過程」という観点からは未遂犯の成立を不合理に狭めるものであった。また詐欺罪の「受け子」など、「犯罪の複数段階のうちの一部に関与した者」に対する評価は、裁判例でもきちんとした説明がなされているとは言い難い。これは、「複数の(犯罪)段階行為が合わさって1つの犯罪行為を形成する」という場合(結合犯)に、その成立要件としてどのような内容が要求されるべきかが、一般的・総論的な観点で一義的に理論化されてこなかったことが原因であると考えられ、本研究はその一般的検討を行うものである。
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研究実績の概要 |
本研究は、①具体的な各則規定を素材としつつ、「複数段階の(犯罪)行為が1つの犯罪類型として処罰の対象となる場合」における一般的・共通性質を総論的に明らかにしていくことが第一の目的となる。それにより、②「複数段階行為による犯罪(結合犯)」であると認められる犯罪類型に関して、演繹的かつ理論的に整合的で矛盾のない結論を導くこと、さらに③同種の「複数段階行為による犯罪(結合犯)」としての刑事立法を行う際に、前述の現行「強盗・強制性交等罪」のようないびつで不合理な規定ではなく、理論に基づいた整合的な処罰規定を提示することを目的としている。 令和5年度は、令和4年度に収集した文献に基づいての分析をさらに進めることにした。令和4年度の研究により、財産犯としての行為後に、当該財産犯による獲得利益の保全行為が続けて行われた場合に、これが同一法益侵害を二重に評価してしまうという弊害をもたらすことが明らかにされており、この問題にも直結する日本の裁判例も見られる状況にある(東京高裁令和5年2月10日判決)。これに基づいて、より一般化された結合犯の分析を行うために、参考となるドイツ刑法の現行法分析にもつながる歴史研究の文献の翻訳を出版した。これにより、比較対象となる素材となるドイツ刑法の各則の犯罪類型が、それぞれどのような経緯で規定されていったのかに関する基本的な知識を得ることができた。 今後は個別具体的な犯罪類型に即した形での分析結果を公表していく段階にあるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和5年度は、全体的な各犯罪類型の淵源を明らかにするための歴史研究としての翻訳文献を出すことができた。しかし個別的な「複数段階行為による犯罪(結合犯)」についての分析に基づく論文の公表が遅れており、この点での遅れが見られるものと言わざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の3年目である令和6年度においては、研究課題の最終年度でもあることから、本研究で得られた検討を公表論文の形にしていくことが必要である。その際には①「複数段階行為による犯罪(結合犯)」に関する一般的な性質を明らかにする側面(総論的側面)での検討と、②具体的な日本の刑法典における犯罪類型を素材にしての「複数段階行為による犯罪(結合犯)」としての性質から導かれる解釈論的特徴の側面(各論的側面)での検討を、両方とも進めていく必要があるものと考えている。
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