研究課題/領域番号 |
22K01216
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
池田 直人 同志社大学, 法学部, 助教 (00802662)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 不作為 / 不作為犯 / 児童虐待 / 保護責任者遺棄 / 保護責任者不保護 / 遺棄 / 不保護 / 作為義務 / 刑法 / 比較法 |
研究開始時の研究の概要 |
不作為犯に関する一般規定を持たない日本では、特別な作為義務を負う者の不作為のみが処罰されるとの理論に基づき、一定の不作為が処罰の対象とされている。 この理論に関して、近時、児童虐待、ひき逃げ、有害な不良製品の不回収といった、多様な事案の特性を的確に反映しつつ、同時に、処罰範囲を合理的に限定することも可能とするような処罰基準のあり方を模索することが重要な課題として認識されている。 本研究は、①ドイツ語法圏や英米法圏等における議論の分析を通じて、そのような処罰基準のあり方を解明するとともに、②日本の刑事実務に対して、日本の実情に即しており、かつ、比較法的にも支持可能な選択肢を示すことを目的とする。
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研究実績の概要 |
本年度は、当初の計画を変更し、日本における不作為犯の処罰の在り方について検討を加えた。また、近時ホットトピックになっている児童虐待事案を念頭に、不作為犯の特徴をより明らかにすべく、不作為犯のみならず、作為犯である暴行罪についても検討を加えた。 その結果、真正不作為犯の典型例とされている保護責任者遺棄・不保護罪(刑法218条)における実行行為やその故意について、最判平成30年3月19日刑集72巻1号1頁における不保護の解釈論を踏まえつつ、さらに、現在の日本における裁判実務の実情にも適合的な解釈を論じるに至った。具体的には、218条の処罰を基礎付ける視点には、不保護の処罰、物理的に危険な場所への移置、扶助者による救助可能性の低下という三つの視点が存在しており、裁判実務を分析するためには、これらの三つの視点を併用することが有用であることを論じた。 また、児童虐待事案については、作為犯と不作為犯のいずれにおいても、従来着目されていた民法の規定のみならず、児童福祉法を参照するとの議論がありうると論じた。 具体的な成果については、学会報告として、「児童に対する身体的暴力について」(第100回日本刑法学会ワークショップ「児童に対する暴力」パネル報告)、「子ども不保護事例と故意の不真正不作為犯」(日本刑法学会関西部会令和4年度冬季例会共同研究報告)を行った。 また、論文として、「児童に対する身体的暴力について」刑事法ジャーナル74号、「保護責任者遺棄罪の実行行為とその故意(その1)~(その3)」法学セミナー68巻2号、68巻4号、68巻5号を公表した。さらに、「同(その4・完)」法学セミナー68巻6号を公表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画においては、ドイツ語法圏(特にオーストリア及びスイス)における不作為犯の一般的規律を検討する予定であったが、その前提としての日本法の検討に大幅に研究時間を費やすこととなった。そのため、当初の計画については、文献の収集を行うにとどまり、立ち入った検討を加えるには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
二年次においては、初年次に収集した文献について立ち入った検討を加えるとともに、特にオーストリア法について一定の成果を論文として公表したいと考えている。また、スイス法についても検討を加えることを予定している。
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