研究課題/領域番号 |
22K01218
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
金子 博 近畿大学, 法学部, 准教授 (90633826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 共同正犯 |
研究開始時の研究の概要 |
従来、刑法上の共同責任(共同正犯)は、特に故意作為犯を中心に「現実の意思疎通」または「結果に対する相互の事実的促進」によって説明されてきた。しかし、近年の特殊詐欺などの裁判例において、共同正犯の成立とその限界が従来の判断枠組みによって十分に画されているとはいえない。そこで、共同正犯の判断枠組みを再構成するために、近年の故意犯の共同正犯に関する裁判例を手がかりとして従来の判断枠組みの問題点を示すとともに、共同正犯それ自体の検討ではなく、共犯類型の1つである従犯(二次的責任)に焦点を当て、ドイツにおける議論を参照しながら検討することを通じて、共同正犯との差異を明らかにすることを試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、①近年の判例・裁判例を素材とした故意(作為)犯またはそれに準じる共同正犯の分析・検討、及び、②従犯(幇助犯)との質的差異に関する分析・検討を通じて、共同正犯の規範的な判断枠組みを構築することを目的とするものである。 本年度は、前年度の課題でもあった、判例・裁判例を手がかりとした故意作為犯の共同正犯の分析・検討を行い、「意思連絡」や「犯罪結果への物理的ないし心理的促進」でもって共同正犯を基礎づける従来の理論構成の限界を示す一例を明らかにした。すなわち、現行法上の共同正犯に関する規定の沿革を出発点とし、立法者の趣旨を踏まえながら、近年錯綜している実行共同正犯と共謀共同正犯の関係を整理するとともに、特別刑法上のけん銃等所持罪や危険運転致死傷罪に関する判例・裁判例(最決平成15年5月1日刑集57巻5号507頁、最決平成30年10月23日刑集72巻5号471頁等)の分析・検討を通じて、個別の犯罪構成要件の特性を踏まえる必要性を説いた。なお、規範的見地から共同正犯と従犯(幇助犯)の質的区別が重要となる事例(金沢地判令和5年6月21日LEX/DB25595762)が存在することも言及した。 他方、前年度に当初の計画を変更して研究対象とした同時傷害の特例(刑法207条)について、最近の最高裁判例(最決平成28年3月24日刑集70巻3号1頁、最決令和2年9月30日刑集74巻6号669頁)の動向を踏まえ、その制度趣旨及び適用要件ないし方法の検討を行っている。共同正犯の判断枠組みの観点から、最高裁が示した刑法207条の適用要件である「各暴行が外形的には共同実行に等しいと評価できるような状況」(刑集70巻3号1頁)、及び、同条の適用範囲に着目しながら、同時傷害の特例のあり方を具体化する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度は、コロナ禍の影響や研究方法の一部変更により、やや遅れる結果となったが、本年度は、特別刑法を素材とした故意作為犯の共同正犯の研究を最低限進めることができたと考えている。現在、再度、同時傷害の特例(刑法207条)と共同正犯(共同責任)の関係性に着目した検討を進めており、両者の判断枠組みを見据えた研究を継続している。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度と同様、学会や研究会への参加を継続しつつ、共同正犯とその周辺領域に関する文献・判例研究を中心に進める予定である。共同正犯それ自体の検討にとどまらず、とりわけ2022年度も研究対象とした同時傷害の特例(刑法207条)を視野に入れながら、故意犯の共同正犯を中心に検討を加えていきたい。
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