研究課題/領域番号 |
22K01219
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05050:刑事法学関連
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研究機関 | 獨協大学 (2023) 長崎総合科学大学 (2022) |
研究代表者 |
柴田 守 獨協大学, 法学部, 教授 (90551987)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 量刑 / 犯罪リスク / 再犯防止 / エビデンスベースト / 再犯 / リスク / RNR原則 / ガイドライン |
研究開始時の研究の概要 |
米国では犯罪リスクアセスメント情報(RNA情報)を量刑手続でも利用・検討しており,保護観察の対象者のリスク軽減と管理を行って,公共の安全を促進する政策(Evidence-Based Sentencing; EBS )が多くの州で採られている。日本でも今後同様に,再犯防止対策として,低リスク者を実刑ではなく一部執行猶予や保護観察付執行猶予にして,地域社会の矯正資源や福祉につなげる政策を展開することが想定され,その場合には,量刑手続でのRNA情報の利用・検討が不可欠となる。そこで,本研究では,EBSを導入した米国の代表的な州のシステムを分析し,日本での導入可能性を現実的な文脈で具体的に検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、量刑手続で犯罪リスクアセスメント情報(RNA情報)を利用・検討する米国の実証的根拠に基づいた量刑[Evidence-Based Sentencing; EBS]を参考に、その制度的な正当性【調査研究①】と、EBSを導入した米国の代表的な州のシステムとその動向を詳細に分析・検討し【調査研究②】、それを踏まえ、日本での導入可能性を現実的な文脈で具体的に検討する【調査研究③】ものである。 令和5年度の研究実績は、以下のとおりである。【調査研究①】では、令和4年度に引き続き、2007年(EBS提唱年)から現在までの米国でのEBS関連文献や裁判例に関する調査を行い、EBSの正当性について憲法論なども参照して、具体的な検討を重ねた。そして、RNA情報のアルゴリズムによって生じる可能性がある偽陽性の問題を中心に、情報科学的な視点からも分析したうえで、それが平等原則になど近代法の原理に抵触する可能性があるのかを検討した。【調査研究②】では、特に、バージニア州 [VA]を中心にして、量刑システムに関する文献と量刑委員会の年次報告書を調査して、制度設計や量刑の動向に関する分析を行った。【調査研究③】では、日本の「窃盗犯」に関する平成年間の判例テキストデータを対象に、数量化理論と変数増減法を用いて再犯リスク(再犯可能性、更生可能性)の影響力を定量的に測定し、テキストマイニングによってその心証形成メカニズムを解析した。 令和5年度までの研究成果については、「刑罰制度改革研究会」と「獨協刑事法研究会」において報告する機会を得た。また、後藤弘子=宮園久栄=渡邉和美=柴田守編集代表『女性犯罪研究の新たな展開―岩井宜子先生傘寿・安部哲夫先生古稀記念論文集』(尚学社、2023年5月)において、研究成果の一部を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【調査研究①】では、特に、RNA情報のアルゴリズムによって生じる可能性がある高リスクの偽陽性の問題を中心に、情報科学的な視点からもある程度分析を重ねたうえで、それが平等原則になど近代法の原理に抵触する可能性があるのかを検討した結果、やはり平等原則に対する違反には当たらないという令和5年度に示した考え方を補強するに至ったからである。 【調査研究②】では、バージニア州 [VA]等の量刑制度に精通した研究者や関係者から現状や課題に関するインタビュー調査を渡米して実施する予定であったが、学務等により渡米することがかなわなかった。しかし、令和4年度において、VAのほか、ミズーリ州 [MO],ウィスコンシン州 [WI]の量刑制度・政策に関する主要な文献を先取って収集することができていたので、令和5年度においては、これらを順次分析し、知見を整理することができた。よって、調査研究②の遅れ自体は生じていない。 【調査研究③】では、当初の予定どおり、日本の窃盗事犯に関する平成年間の判例テキストデータを対象に、数量化理論と変数増減法を用いて再犯リスク(再犯可能性、更生可能性)の影響力を定量的に測定し、テキストマイニングによってその心証形成メカニズムを解析することができた。この成果については、令和6年度に発表していく予定である。 以上のとおり、令和5年度における本研究では多少の変更が生じたものの、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(本研究の3年目となる)令和6年度に予定している各調査研究の具体的な計画は、以下のとおりである。 【調査研究①】では、令和5年度に引き続き、RNA情報のアルゴリズムによって生じる可能性がある偽陽性の問題を中心に、情報科学的な観点からさらに深く検討を重ねたうえで、それが平等原則になど近代法の原理に抵触する可能性があるのかを分析する予定である。 【調査研究②】では、VAやWIなどの量刑制度や政策に関する文献調査の結果を踏まえて実際に渡米し、米国の量刑制度などに精通した研究者や関係者から現状や課題に関することをインタビュー調査する予定である(現在の研究計画では、研究経費の状況や、為替・物価高などの影響から1度渡米する予定である)。また、令和6年度は、ウィスコンシン州 [WI]を中心に、量刑制度や政策に関する文献資料の分析を行う予定である。 【調査研究③】では、日本の強盗事犯に関する平成年間の判例テキストデータを対象に、数量化理論と変数増減法を用いて再犯リスク(再犯可能性、更生可能性)の影響力を定量的に測定し、テキストマイニングによってその心証形成メカニズムを解析する予定である。
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