研究課題/領域番号 |
22K01235
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
遠藤 歩 九州大学, 法学研究院, 教授 (50347259)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 和解 / 民法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、「和解論の新たな展開 ―第三者の許可を要する和解」という表題の下、第三者(裁判所等)の許可を要件とした、新たな和解概念の構築を目指すものである。特に、後見人が被後見人のために和解契約を締結する場合の規律を中心に考察を行う。 そのため、まずは後見人の財産管理権とその監督権の所在について、比較私法史的研究を行う。次いで、その成果をふまえて、第三者の許可を要する和解概念を析出する予定である。
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研究実績の概要 |
本研究は、「和解論の新たな展開 ―第三者の許可を要する和解」という表題の下、第三者(特に裁判所)の許可を要件とした、新たな和解概念の構築を目指すものである。この研究を遂行するにあたっては、フランス法やドイツ法との比較を通じて、裁判所等の第三者の監督権限の意義を明らかにすることが中心的な作業となる。 まず、研究期間1年目である2022年度は、フランス法における裁判所の監督権限の意義を調査した。裁判所の認可を意味するhomologationという概念の分析を行い、homologationにもさまざまな根拠や類型が存在すること、従って、個々の類型毎に精緻な分析を加えるべきことが明らかとなった。具体的には、代理権限の確認(後見、親権)、財産行為(契約内容の確認、交通事故、消費者保護)、不動産売買、和解、健康被害の集団訴訟などの類型があることが分かった。 そこで、研究期間2年目の2023年度(本年度)は、後見、親権、消費者保護といった分野に対象を限定して、裁判所の許可という法構造に検討を加えた。 まず、消費者保護の分野では、消費者団体訴訟における和解について比較法的な調査研究を行い、その結果、フランスでは消費法典L. 623-23条1項により、また、ドイツではドイツ民事訴訟法611条3項1文により、和解内容の適正さの確保という観点から、裁判所の許可が要件となっていることが明らかとなった。逆に、日本においては、消費者団体訴訟における和解につき、裁判所の許可は必要とされていない。 また、後見、親権の分野では、主にドイツの後見裁判所の監督権の分析を行った。それに関連して、後見人が被後見人の財産行為を監督する法構造も検討した。これらの検討を通じて、本研究にとっては、19世紀ドイツ普通法のauctoritas概念の分析も重要であるとの知見を得たため、現在、この概念につき調査研究を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間1年目である2022年度においては、フランス法における裁判所の監督権限の意義を明らかにするため、フランスの近時の研究たるT. Goujon-Bethan, L'homologation par le juge (2021) に依拠しながら、フランス法における裁判所の認可(homologation)という概念を研究した。また、2016年以降の脱司法化の流れにより、裁判所の認可権限が第三者に委ねられる傾向があることを確認した。 次いで、研究期間2年目である2023年度(本年度)は、消費者団体訴訟における和解について比較法研究を行い、フランスやドイツと比べて、我が国では、和解に裁判所の許可が必要とされていないという特殊性があることが分かった。そのため、我が国においても、当該和解に裁判所の許可を必要とする立法論的提案が可能であるか、検討を要することが明らかとなった。 また、後見人の行為を裁判所が監督するという現象を検討するため、後見人の権限についての分析を行った。この問題については、ドイツの後見裁判所、非訟事件手続についての文献を渉猟して調査を行った。その結果、19世紀ドイツにおけるauctoritas概念の分析が重要な課題であることが明らかとなり、現在、この概念の調査研究を行っている。 このように、本年度の研究を通じて、日本法に対する一定の立法論を提示する可能性を獲得した。また、裁判所や第三者の監督権の分析にとって、auctoritas概念の研究が必要であるとの着想を得た。 このように、本年度の作業を通じて、立法論の可能性や重要な概念を見出すことができた。 そのため、本研究は全体としておおむね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度(2022年度)および本年度(2023年度)で得た知見にもとづき、今後も、裁判所や後見人の監督権限の根拠についての分析を行ってゆきたい。その際、フランス法、ドイツ法、日本法の三カ国比較を行い、新たな知見を獲得することに努める。 現在、現代ドイツ法および19世紀ドイツ普通法の分析を進めており、今後もこれらの研究を継続してゆく。そのなかで、これまでの研究を一層深め、さらなる問題の発見に努めることにより、研究内容をより豊かで包括的なものにすることに努めてゆきたい。 そして、最終的には、一定の研究成果を提示したいと考えている。
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