研究課題/領域番号 |
22K01236
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
松田 忠大 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (60300620)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 船主責任制限法 / 制限債権 / 燃料油の除去清掃費用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、現在の油濁損害に対する賠償保障制度では、同じ船舶による油濁事故であっても、これによって生じた損害が、積荷油の流出を原因とするものと燃料油の流出を原因とするものとの間で、被害者救済のあり方に不合理な格差が生じていることを核心的な「問い」として設定する。そして、経営的体力の乏しい漁業者、観光業者が負担することになった漂着油の清掃費用に係る請求権に着目し、このような「問い」の起点となった「船主責任制限制度」の現代的意義の検討を踏まえ、この請求権を制限債権から除外する法理論の構築を試み、被害者救済の視座に基づく公平な船主責任制限制度の解釈・運用のあり方を提案する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、船舶油濁事故において、船主責任制限制度との関係で、その被害者救済に不合理な格差が生じていることを核心的な問いとして設定する。そのうえで、経営的体力に乏しい漁業者、観光業者等が、事故を引き起こした船舶から流出した燃料油(バンカー油)を除去するために要した費用を、わが国の船主責任制限法上の制限債権から除外する法理論を構築し、被害者の公平な救済を図ることを目的として研究を遂行する。 本研究は、このテーマに関連するわが国および外国における判例・先行研究を調査して、現時点における制限債権の範囲をめぐる解釈論の到達点を明らかにしたうえで、責任制限制度の現代的意義、契約解釈の法理等を手がかりにして、設定した問いに対する答えを導くものである。そのため、研究初年度においては、研究助成金を用いて、まず、イギリスにおける船主責任制限制度に関する文献、わが国の商法・船主責任制限制度・環境法に関する文献を購入した。特に、イギリスに船主責任制限制度に関する文献からは、同国の裁判所における船主責任制限法上の制限債権解釈における船舶から流出した燃料油の清掃費の位置づけに関する基本的な知見を得ることができた。また、同文献からはこれに関連するイギリスの裁判例に関するいくつかの手がかりも得ることができた。 わが国では、実務上は、漁業者等が自発的に行った流出燃料油の清掃を、これを流出させて船主が当該漁業者に委託したものと解釈し、これに要した費用を制限債権から除外することがあるとの先行研究がある。船主がこうした擬制に従わない場合も十分に考えられることから、漁業者等と船主との間で明示的な合意がない場合であっても、両者の間の委託契約の成立を導く必要がある。そのため、研究初年度においては、研究助成金を用いて、民法における契約法理に関する文献を購入し、この観点での理論構成を検討する準備を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の研究計画では、イギリスに限らず、アメリカ、カナダ、フランス等における船主責任制限の運用および解釈に関する文献および裁判例、契約法理に関するできるだけ多くの文献を入手して、その内容を調査・分析する計画であった。しかし、大学管理に業務が増加したことに加え、、校正作業の停滞により出版が大幅に遅延していた著書(箱井崇史教授との共編著『船舶衝突法』(第2版)(2023年2月刊行))について、その出版を急がなければならない事情が生じ、これに伴い編著者としての業務が著しく増加したことにより、主に、イギリスの船主責任制限制度、わが国の環境法、契約法理に係る基本的な文献・裁判例を利用した基本事項の調査を行うにとどまった。
|
今後の研究の推進方策 |
出版が大幅に遅れていた著書の刊行にあたり編著者としての業務が著しく増加したことが、初年度の研究が遅延することになった最大の原因である。この著書は昨年度末に既に刊行されたため、今後は、これに起因する研究の遅延は生じない。大学管理業務負担の増加による研究の遅延は依然として生じうるが、他の教員・関係事務職員との業務分担を見直すことにより、初年度に実施することができなかった学外における文献調査も実施できるよう、十分な研究遂行のための時間を確保する。
|