研究課題/領域番号 |
22K01253
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
青竹 美佳 大阪大学, 大学院高等司法研究科, 教授 (50380142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 離婚法 / 財産分与 / 親権 / 養育費 / 家族と国家 |
研究開始時の研究の概要 |
離婚を原因として家族に生ずる問題とりわけひとり親家庭の困窮の問題を解決するために、親権法がどうあるべきか、とりわけ離婚後の共同親権、その他離婚後に親の双方が子の養育に介入する仕組みを導入することが妥当であるかということを明らかにする。諸外国の例を参考にしながら親権概念を明らかにし、離婚をめぐる親子の現状を調査した上で、公的機関が離婚時および離婚後の家族にどのように支援を行うべきかという観点からこの問題を追求する。
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研究実績の概要 |
家族への公的支援との関係において離婚法の進むべき方向性を追究することを目的としている。離婚法には、離婚後の子の養育の側面と、夫婦間での財産の清算の側面があるが、当該年度には、主に夫婦間での財産の清算の側面から、ドイツ民法における離婚時の財産の清算およびその前提となる婚姻財産制と比較しながら研究した。 日本の離婚法の問題点を、ヨーロッパとくにドイツから導入した法制度と日本の家族の実情との齟齬という観点から析出して今後のあるべき離婚法の在り方を検討した。その成果については、2022年9月5日にドイツのEuropean University Viadrinaで開催された国際シンポジウム(法の継受の方法論)にて、”Europaeischer Rechtstransfer in das japanische Familienrecht“,というテーマの下で口頭報告をした。同報告において、ヨーロッパから導入した夫婦財産制度が、日本の社会の実情を熟考せずに導入され、また時代の変化に対応しないまま妥当しているという問題を指摘し、この問題が現在では、夫婦間の経済格差に由来する離婚後のひとり親家庭、とりわけシングルマザー家庭における貧困の問題となって表れているという分析を示した。 また、ドイツ民法の婚姻財産制の部分の翻訳(BGB1363-1563条)を担当し、共著の法務資料第468号ドイツ民法典第4編(親族法)は、2022年12月に公表された。 日本において、ひとり親家庭の貧困の問題に対策を図るべきであるとする問題が共有されて、その対策の1つとして離婚法の改正が検討されている中で、ヨーロッパの離婚法と比較しながら日本の離婚法の方向性を検討することは、今後の法改正の具体的な内容を形成する上で有意義である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
家族への公的支援の側面については、当該年度は重点を置かずに、離婚法における夫婦間での財産の清算の問題に焦点を当てて検討を行った。 日本の離婚では、裁判所が関与せず当事者の合意と届出により成立する協議離婚が大半を占め、そのために、婚姻中に夫婦の協力により蓄積された財産が公平に分配されているかについて第三者のチェックを受けることがなく、不平等、不公正な離婚が生じ、これが離婚後のひとり親家庭、とりわけシングルマザー家庭の困窮の原因の1つになっていることが指摘されている。 この問題は、離婚法の財産分与制度だけではなく、その基礎となる夫婦財産制に起因するという観点から、民法典成立時のヨーロッパ法継受および戦後の民法改正の経緯についての資料、夫婦の経済格差と男女の賃金格差を、世界のジェンダーギャップ調査および日本のひとり親調査の資料をもとに、夫婦財産制の問題点を分析した。 分析において、とりわけ、戦後の民法改正において、法定夫婦財産制として別産制を採用したことに原因があるとの見解を示した。夫婦間の経済格差が婚姻関係解消時までは解消する手段がほとんどないという民法の仕組みには問題があり、離婚法の進むべき方向性を追究するためには、財産制の仕組みをも考慮する必要があるとの提言をした。 家族への公的支援を視野に入れた検討については、当該年度は十分には行っていないが、5年間の研究期間において、この点を視野に入れた検討を十分に行うことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度は、離婚法の中で、とりわけ夫婦財産の清算という側面から研究を進めた。引き続き、夫婦財産の清算について検討を加えると同時に、離婚後の子の養育の問題をも検討する計画である。また、家族の公的支援の問題について、国外の状況の調査が参考として有意義であるため、今後はさらに国外の研究者と共同しながら調査・研究を行う計画である。
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