研究課題/領域番号 |
22K01260
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
小山 泰史 上智大学, 法学研究科, 教授 (00278756)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 物上代位 / 私的実行 / シリーズ実行 / 形式主義 / 機能主義 / カナダ法 / UCC第9編 / PPSA / 動産・債権担保法改正 / 事業成長担保権 / 動産譲渡登記 / 相殺 / 事業再生 / 包括担保 / 事業担保 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、相殺権者の相殺期待が、包括担保の個別執行段階においてどのような効力を有するかを、動産・債権担保法改正の文脈においてイギリス法の浮動担保における相殺の議論を参照しつつ、債務者の事業再生の場面で、新たに導入が検討されているプライミングリーエン(priming lien)について、カナダ倒産法を検討の対象として、包括担保や事業担保等の価値変形物に対する追及と相殺の対抗関係を検討していく。
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研究実績の概要 |
2023年度には、1件の論文を公表し、別に1件の論文を査読付き雑誌に投稿し、掲載決定を得た。 まず、「動産譲渡担保権に基づく物上代位ーー動産・債権担保法改正における中間試案までの議論を中心に上智法学論集67巻1=3号合併号1ー70頁を公表した。最決平成22・12・2民集64巻8号1990頁は、集合動産譲渡担保の実行後に物上代位をすることを肯定している。しかし、民事執行法では、一回の担保権の実行により複数の順位の担保権が全て消滅するという消除主義が取られている(民事執行法82条)。しかし、現在進められている動産・債権担保法改正では、集合物譲渡担保は、数回の実行を許容する方向で議論が進められている(「シリーズ実行」)。では、前掲最決平成22・12・2のような私的実行後の物上代位は改正後もなお許容されるのか。論文ではその点を中心に検討し、改正の議論の審議過程を小論している。 次に、「担保制度における形式主義(formalism)に依拠したカナダ銀行法担保権の概要――機能主義(functionalism)を採るPersonal Property Security Actとの関係を中心に――」という論文を民商法雑誌に投稿し、2月の編集会議において査読にかけられ、掲載決定を得た。ただ、内容の修正の要請があり、その修正原稿を4月1日に編集部に送付したところである。民法専攻の編集委員のチェックのみを経て、再度の編集会議にかけられることなく、いずれ掲載になる予定であるが、この書面を書いている時点では、掲載時期は未定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたとおり、2023年度中には論文を1本公表し、さらに別の論文を査読ありの雑誌に投稿し、掲載の内定を得た。研究1年目の2022年度には公表論文がなかったことに比べれば、2023年度は比較的順調に研究成果を公表できたということが言えるだろう。下記「今後の研究方策」で述べるように、2024年度に取り組むべき具体的な研究課題もすでに用意している。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、6月初めに最判令和5・11・27(裁判所ホームページ)についての報告を予定している。この判例は、「物上代位と相殺」に関する新判例であり、その射程の検討は、申請者の研究課題に直結するものといえる。その報告原稿は、商業誌に公表されることとなろう。また、近時刊行されたInge Van De Plas, Retention of Title in Secured Transactions Law from a Creditor's Perspective(Intersentia, London UK 2023)は、所有権留保に関する本格的な比較法研究を試みる、最新の研究である。その著作では、担保としての機能を有する各制度は、共通のフレームワークのもとに置かれるべきとする「機能主義」と、「所有権の移転」という法形式にこだわる「形式主義」との対立が将来に論じられ、著者の母法であるベルギー法では、むしろ「形式主義」が採用されるべき、と著者が主張する根拠が提示される。この著作の分析が、2024年度の大きな課題となる。 ただ、懸念材料もある。カナダ方の著作を多く発行するThomson Reutor社が、社内の再編により、出版部門がうまく機能しなくなっているようであり、紀伊国屋書店を通じて発注してもなかなか納品がされなくなっている。場合によっては、2025年3月時点で、1年程度の研究計画の延長の希望を出すかもしれない。
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