研究課題/領域番号 |
22K01263
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
棚橋 洋平 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (90758070)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 清算価値保障原則 / 債権者一般の利益 / 事業再生 / 再建計画 / EU倒産法 |
研究開始時の研究の概要 |
再建計画の認可要件である「債権者一般の利益」は、一般に清算価値保障原則を指すと理解されるものの、その内実はいまだ明らかでない部分が多い。そこで、本研究では、再建計画における債権者の取扱いについて新たな規定を設けたEU倒産法を軸として、我が国における「債権者一般の利益」概念について検討する。すでにEUの新概念についてはイギリス、アメリカといった各国で議論がなされているため、こうした諸外国からのリアクションも含めて検討することとしたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、EUでの新たな「債権者一般の利益」概念の分析・検討を軸とし、かかる新概念についての諸外国での評価も分析しながら、わが国における「債権者一般の利益」概念において保障される価値とは何か、また、この概念に他にいかなる構成要素が含まれうるか、について検討するものである。 本年度においては、まず、前年度に引き続いて文献調査を実施した。EU指令の策定に携わった研究者の手になる論稿はもちろん、コンメンタールおよびWeb記事も含めて渉猟し、分析することができた。また、EU指令をもとに国内法が立法されたドイツの文献なども、(網羅的ではないものの)調査することができている。その結果、新たな「債権者一般の利益」概念の全体像は概ね把握ができたところである。他方、こうした調査・分析によっても、なぜEUが新概念の採用に踏み切ったのか、その根源的な理由については突き止めることができていない。 また、わが国の議論との関係では、いわゆる「私的整理の多数決化」に関する立法動向との関係性も意識した検討を進めることができた。わが国の「私的整理の多数決化」をめぐる議論においても、反対債権者に「清算価値」が保障されればよい、という立場が採用されるようであるが、EUにおける議論はまさに「私的整理の多数決化」に伴って反対債権者にいかなる価値を保障しなければならないか、という点に関するものであるために、わが国でなされている議論を意識して分析・検討の軸を設定することができたのは、本年度の大きな収穫の一つである。 次に、本年度は米国においてヒアリングを実施した。上記文献調査の結果、やはり、EUでの新概念導入の背景には、米国の議論動向の大きな影響力があることが改めて認識できたためである(もちろん、ドイツをはじめとしたEU諸国において実施することができればベストであったが、諸般の事情からこれは難しかった)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述の通り、EUの新概念それ自体の把握、および、EU各国での対応については明らかにできてきているものの、新概念が採用された理由については、前年度の研究結果も踏まえても、まだ明らかにできたと確言できる状況にない。また、上記のようにドイツにおける議論やわが国の「私的整理の多数決化」をめぐる議論との関連性など、新たな視点・分析対象を獲得できたことそれ自体は本研究にとって望ましいことなのであろうが、他方ではこれは調査の対象が拡大された、ということをも意味する。そして、新概念に関する文献は、導入から4年が経過したにもかかわらず、充分とはいえず、文献の探索に苦労しているのが実情である。こうしたことから、現状は「遅れている」と評価せざるを得ないところである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、新概念に関する文献をとりわけその採用理由という観点から調査・分析する。その中で解明できない部分については米国やドイツなどの議論を踏まえて分析を試みること等も視野にいれながら、新たな概念が採用された理由を明確化したい。他方、わが国における「私的整理の多数決化」をめぐる議論動向も注視し、わが国におけるあるべき「清算価値」について検討し、結果を公表できるよう、研究を進める。
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