研究課題/領域番号 |
22K01265
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05060:民事法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
中村 信男 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (60267424)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 少数出資会社支配 / 複数議決権株式 / 少数出資支配株主 / Dual Class Stock / 居座りリスク / 搾取リスク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、第1に、少数出資支配株主の会社経営支配を可能にする法的スキームの理論的妥当性と法政策的妥当性を再検証し、その射程を合理的に画そうとする。 第2に、本研究は、少数出資支配株主の居座りリスク・搾取リスクに対する実効的な法的対応策を構築する観点から、少数出資支配株主の株主権に対する停止措置等の導入可能性を探る。 第3に、本研究は、イギリス会社法を始め英法系諸国の会社法に見られる影の取締役規制や少数株主救済制度を参考に、経営支配に伴う少数出資支配株主の法的責任の追及可能性を解明するとともに、少数出資支配株主に対する非支配株主の株式買取請求権等の法制化等、具体的な株主保護策を提案する。
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研究実績の概要 |
本研究は、出資比率が小さくても議決権比率において多数派となり会社経営を支配することを可能にするDual Class Stock等の少数出資会社支配のための法的スキームを対象とし、この種のスキームを必要とする上場会社ないし公開会社が現に存在している実情に鑑み、こうした少数出資会社支配を必要な範囲で許容しつつ、そのことに伴い発生するおそれのある少数出資支配株主の居座りリスク、残余の多数の非支配株主に対する搾取リスク等を効果的にコントロールし得る会社法および資本市場法上の規律の在り方を探ることを目的としている。 初年度の令和4年度は、第1に、少数出資会社支配のための法的スキームのうちDual Class Stockにつき、複数議決権株式の発行を公開会社にも会社法上認めるイギリス・シンガポールが、当該株式を創業者等に保持させて普通株式を上場することを証券取引所において許容しつつ、上記リスクを軽減するための措置を制度的に講じていることを、文献調査を基に整理した。また、イギリスでの海外調査も行った。その成果については、令和5年度中(令和6年1月末予定)に、“Comparative study on legal solutions for possible risks to be incurred by the dual class shares structure used by listing companies”という題名の英文論文を公表する予定である。 第2に、当該法的スキームが、導入会社にとっては、強力な敵対的買収防衛策として機能することから、本研究の関連業績として、2021年に最高裁決定を含め相次いで公表された敵対的買収防衛策としての差別的行使条件付・差別的取得条項付新株予約権無償割当ての差止仮処分申立事件に関する裁判例を分析・検討する英文論文を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、少数出資会社支配を可能にするDual Class Stockや複数議決権株式等の法的スキームについて、この種の仕組の利用を必要な範囲で許容しつつ、当該法的スキームの利用に伴い生じ得る居座りリスク・搾取リスクのほか、会社支配権市場としての資本市場の機能低下という問題を解消ないし防止するための会社法・資本市場法上の規律の在り方を考察することを目的とするものである。 当該研究目的の遂行のため、本研究は、第1に、研究期間初年度となる令和4年度に、この面で先行するイギリス等の海外法制に関し、規制当局や関連機関へのヒアリングを行うことを予定していたところ、規制当局へのヒアリングは日程調整等の都合から行わなかったが、戦略的研究連携関係にあるイギリスBirmingham大学のL. Talbot教授等とのミニワークショップを実施した。 第2に、海外の先行研究論文のほか、イギリス・シンガポールの規制当局や証券取引所等の公表資料を基に文献調査を実施し、比較法研究の対象となるイギリス・シンガポール等の法制度等について検討・分析を行うことで、令和5年度中に公表予定の英文論文の執筆に向けた準備を整えることができた。 第3に、本研究が検討対象とする上記法的スキームは一種の敵対的買収防衛策でもあるところ、令和3年度においてわが国で相次いで司法判断(最高裁決定を含む。)が示された複数の事案を整理・分析する英文論文を令和4年度後半に発表した。 したがって、本研究は、補助事業期間中の研究実施計画に照らし、初年度の令和4年度に関してほぼ予定通りの成果をあげることができている。 本研究の現在までの進捗状況として、「おおむね順調に進展している。」との自己評価を選択したのは、以上の理由による。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の補助事業期間は、令和4年度から令和8年度までであるところ、第1に、令和5年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限等が大幅に緩和されたことを受け、所属大学が戦略的研究パートナーシップを組んでいるイギリス・Birmingham UniversityのL. Talbot教授等との共同研究関係をもとに、イギリスでの研究交流を改めて実施するとともに、令和4年度には未実施となった規制当局(FCA等)へのヒアリングを実施する予定である。その上で、令和5年度中に、本研究に関連する英文論文を公表する予定である。 第2に、本研究の検討課題が会社法・資本市場法制に係る先進諸国の共通課題の一つでもあることから、令和5年度以降も、イギリス・Birmingham UniversityのL.Talbot教授および同教授との共同研究を通じて開拓した独仏研究者、独自にコンタクトを確保する予定のシンガポールの会社法・資本市場法研究者らとの国際共同研究を展開する。 第3に、本研究の検討課題は、わが国においては、東京証券取引所の対応の在り方とも関連するため、令和5年度以降、東京証券取引所の担当者へのヒアリングを実施し、国内動向の把握・検討も併せ行うことを計画している。 第4に、上記の共同研究等に加え、研究会での報告および文献調査の継続等を踏まえて、研究業績となる論文(日本語または英語)を令和5年度以降、継続して公表し、研究成果を発信する。
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