研究課題/領域番号 |
22K01272
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 東京都立大学 (2023) 山形大学 (2022) |
研究代表者 |
小笠原 奈菜 東京都立大学, 法学政治学研究科, 教授 (40507612)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 消費者保護 / 過失相殺 / 不当勧誘 / 説明義務違反 / 消費者契約 |
研究開始時の研究の概要 |
消費者契約において、事業者は、不適切な勧誘により契約締結を成功させてしまえば、損害賠償責任を負う結果となったとしても、過失相殺がなされるため、消費者が拠出した資金の一部を手元に留めることができる。このことは、不当勧誘の防止へのインセンティブが働かないということにもつながる。裁判所が不明確または不合理な理論構成により過度の過失相殺を行なっている問題については、1990年代から指摘されている。しかしながら、現在においてもこの傾向は続いている原因として理論構成が明確化されていないことが考えられる。したがって、本研究は、消費者契約において過失相殺を制限するための理論構成を提示することを目的とする。
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研究実績の概要 |
消費者契約において、事業者による不適切な勧誘により消費者が出費をし結果的に損失が発生した事案が裁判で争われた場合に、事業者に責任を負わせる判断がなされても、過失相殺がなされることが多い。すなわち、事業者は、不適切な勧誘により契約締結を成功させてしまえば、損害賠償責任を負う結果となったとしても、消費者が拠出した資金の一部を手元に留めることができる。このことは、不当勧誘の防止へのインセンティブが働かないということにもつながる。裁判所が不明確または不合理な理論構成により過度の過失相殺を行なっていることにより事業者のやり得を許してしまっているという問題については、1990年代から指摘されている。しかしながら、現在においてもこの傾向は続いている原因として理論構成が明確化されていないことが考えられる。したがって、本研究は、消費者契約において過失相殺を制限するための理論構成を提示することを目的とする。 2023年度は、これまでの研究成果から得られた分析視角に基づき、ドイツの金融取引被害などの取引的不法行為に関する判例を分析した。その結果、消費者などの情報提供を受ける側が、相手方が専門家であった場合など、相手方に「信頼」を抱く場合については、原則として過失相殺が否定されていることが明らかになった。成果を、滝沢昌彦ほか編『社会の多様化と私法の展開: 小野秀誠先生古稀記念論文集』「取引的不法行為における「信頼」による過失相殺の制限」に公表した。他に「国際取引法研究会」で報告を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツ法の議論を日本法に取り入れるためには、実務上の問題の異同についても把握する必要があるため、日本法と同様に、裁判例として現れない法律相談に関する情報を収集、分析をすることを2023年度に予定していた。しかしながら、勤務先の異動などがあり十分な時間がとれず、ドイツでの情報収集を行なうことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は引き続き、ドイツの学説及び裁判例を調査、検討する。ドイツでは、契約の目的物について不適切な説明がなされた結果、当事者が望まなかった契約が締結された場合の金銭調整として、説明義務違反を根拠として、反対給付の縮減(売買代金の減額など)という金銭調整が行われてきた。過失相殺(共働過失:ドイツ民法254条)については、日本法と比較的よく似た規定を有し、原則として、加害者の故意責任は過失相殺(共働過失)の主張を排除するというルールがかなり明確に形成されており、また、説明義務と関連付けたうえで制限について論じられている。さらに、ドイツ法の議論を日本法に取り入れるためには、実務上の問題の異同についても把握する必要があるため、日本法と同様に、裁判例として現れない法律相談に関する情報を収集、分析をする。情報収集は勤務校の長期休暇中にドイツにて行なう。 2025年度は、ドイツ法の議論を基に、消費者契約における過失相殺の制限が日本法において可能か否かを検討し、論文執筆を行なう。論文は『東京都立大学法学会雑誌』へ投稿する。さらに研究成果が関連分野の研究者において広く共有されるよう、「国際取引法研究会」「東北大学民法研究会」「消費者法判例研究会」にて報告を行う。
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