研究課題/領域番号 |
22K01279
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
小林 寛 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (30533286)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 洋上風力発電 / ケープ風力発電事業 / 行政機関主導型産学官連携 / 漁業行使権 / 受忍限度論 / 再エネ訴訟 / 脱炭素社会 / 日米比較 / 再生可能エネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
日米両政府が2050年までに実現しようとする「脱炭素社会」に不可欠な太陽光や風力などの再生可能エネルギーの普及促進には景観利益侵害や反射光・騒音による生活妨害などの新たな環境問題の発生を伴い(Green v. Greenとも呼ばれる),日米において再生可能エネルギー事業に対して差止めなどを求める訴訟(以下「再エネ訴訟」)が数多く提起されている。かかる再エネ訴訟に含まれる論点を網羅的に抽出・検討し,再生可能エネルギーの普及促進のためにはどのような法的手法をとることが最も適切なのか理論分析を行うことが本研究の概要である。
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研究実績の概要 |
2022年度は主として、洋上風力発電事業に関する再生可能エネルギー関連訴訟(以下「再エネ訴訟」という)を中心に日米比較考察を行った。 まず、日本における洋上風力発電に関する近時の裁判例の考察を行った。その結果については、信州大学経法論集13号75頁以下に発表した。 また、2022年7月2日に、(学会発表ではないが)中央大学日本比較法研究所「環境法政策の国際比較研究」グループ研究会において研究報告を行った(要旨:数多くの訴訟の提起により難局に直面し、開発事業者が2017年12月、事業からの撤退を表明したとされる米国のケープ洋上風力発電事業に係る一連の裁判例および日本の洋上風力発電工事差止請求事件(山口地下関支判平成30年10月2日(判例集未搭載)(結論:請求棄却)の分析を行い、円滑な洋上風力事業の推進に向けて、一定の示唆の導出を試みることを目的とする。考察の順序は、①ケープ洋上風力発電事業の概要、②同事業に関する裁判例の大きな整理、③マサチューセッツ州法の違反が争点とされた裁判例(373 F.3d 183 (1st Cir. 2004)、④環境法規制の違反が争点とされた裁判例(827 F.3d 1077 (D.C. Cir. 2016)、⑤洋上風力発電工事差止請求事件山口地下関支判平成30年10月2日(判例集未搭載)、⑥日米比較であった)。 さらに、考察対象を太陽光や陸上風力にも広げて考察を行い、2022年11月30日開催の第8回信州大学見本市において、「再エネをめぐる環境対環境(Green vs. Green)の改善と脱炭素社会(CN)の実現に向けて」と題する研究発表を行った(行政機関主導型産学官連携スタイル(ブロック島洋上風力発電事業参照)と迅速な条例や指導要綱などの制定・改正などの示唆を導出した)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要の通り、2022年度は、洋上風力発電事業に関する再エネ訴訟を中心に考察を行った。その成果については、拙稿「洋上風力発電に関する近時の裁判例:洋上風力発電工事差止請求事件(山口地下関支判平成30年10月2日(判例集未搭載)D1-Law.com判例体系ID28283521)」信州大学経法論集13号75頁~86頁(2022年9月)に発表した(漁業協調型洋上風力発電のための方策が構築されているかどうかおよびその内容は受忍限度論に基づく違法性判断にあたり考慮要素とされることや、ある洋上風力発電事業が漁業行使権を侵害することとなる場合は考えられ得るが、同事業により漁業被害が発生した高度の蓋然性を立証することは困難であると解されることなどを指摘した)。 また、日米比較考察については、日本比較法研究所(中央大学)の「環境法政策の国際比較研究」グループ研究会において、「洋上風力発電に関する最近の日米主要判例の分析―ケープ洋上風力発電事業等に係る裁判例を素材として―」(2022年7月2日)と題する研究報告を行い、地域共同体を構成する漁業者や住民など多様なステークホルダーに対する包摂的な働きかけや十分な関与が重要となるということなどを明らかにした。 さらに、上記第8回信州大学見本市(2022年11月30日)において、上記題目の研究発表を行い、上記のほかに、「国・地方公共団体のみならず大学などの研究機関が参加することによる再エネ事業に対する信頼性の構築・維持・向上」などを明らかにした。 以上の理由より、2022年度において、必要かつ十分な研究成果を発表することができ、本研究の現在までの進捗状況は、「概ね順調に進展している」と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、再エネ訴訟の日米比較考察を継続して遂行する。2022年度中の研究を通じて、洋上風力発電事業に係る再エネ訴訟に関する考察は概ね終え、2023年度には、「米国ケープ洋上風力発電事業の頓挫とブロック島洋上風力発電事業の成功」と題する論稿を発表する予定である。 また、2023年度は、太陽光発電事業や風力発電事業による絶滅危惧種を含む生態系に対する影響について法学的考察を行い、米国の裁判例を素材として、再エネ事業による生態系影響を低減する法的手法に関する示唆の導出を試みることによって、本研究をさらに推進する予定である。これについては、文献調査および聴取調査により、研究を進め、2023年度から2024年度にかけて論文を作成・公表することを計画する。
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