研究課題/領域番号 |
22K01280
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
樋笠 知恵 信州大学, 医学部, 助教(特定雇用) (60923290)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 人工呼吸器 / トリアージ / 義務の衝突 / 違法性阻却 / 人間の尊厳 / 患者の意思 / 治療中止 / 緊急避難 / 自己決定権 / 正当化 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、COVID-19の感染爆発により人工呼吸器が不足した医療機関において行われているトリアージについて、患者の明示的な意思が確認できない場合には、①義務の衝突に基づいた正当化、②緊急避難による正当化、 患者の意思が明白である場合には、③治療中止による正当化、④ガイドラインによる正当化を試みる。この4つの構成により、自己決定権に配慮した形で、患者の人工呼吸器を取り外し、救命可能性が高い別の者に付け替える医師の行為を正当化する理論を構築することを試みる。 本研究は、患者の自己決定権の実現を可能にしつつ、医療資源の配分をめぐる実務的な運用に貢献するための理論構築を行うものである。
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研究実績の概要 |
ドイツのトリアージ法が依拠する憲法裁判所の判例は、ドイツ基本法の障害者差別に関する規定に依拠しており、平等権という位置付けは同様であるものの、例示列挙に 「障害」という文言を欠く我が国と人権とは根拠が若干異なる。とはいえ、トリアージにおける差別のリスクを浮き彫りにしたこと、医療従事者が極限的な決定を強いられている状況にあることを理解したこと 、立法の必要性を示すことでトリアージに関する法的安定性を高めたこと、医療資源が乏しい場合に、「臨床的な成功の見込み」を医療資源が不足する場合の決定的な割当て基準とすることが憲法上許されることを、初めてかつ明確に宣言したことには意義があると分析した。 また、呼吸器の付け替えに関する医師の行為を正当化するにあたり、緊急避難(ドイツにおける免責的緊急避難も検討材料にした)、義務の衝突(作為と不作為を一致させるための行為論についても研究した)について検討を深めた。 作為/不作為という現象類型的な区別から離れ、規範的な管轄という視点で医師の管轄を捉えて把握するドイツの理論を分析した。 国内の医療機関でトリアージ関連(広く治療中止も含む)のヒアリングを行って、現場の問題意識を抽出した。 また、命の優先順位として自動運転におけるジレンマ状況(トロリー問題への対処)との異同も検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツの医師会の現地調査・ヒアリングについて遅れているが、文献調査と意見交換は進めている。ドイツ集中治療・救急医学会(DIVI)、ドイツ呼吸器内科学会(DGP)、医学倫理アカデミー(AEM)、ドイツ緩和医学会(DGP)の指針の分析と、現地でのアンケート調査の開始時期が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
日本の医学界・倫理コンサルテーション調査、日本の医学界・トリアージ方針調査も同様に行う。 そのうえで、大学病院を始めとする医療関連機関に対するアンケート調査を通じて、トリアージ・治療中止の実務に関する(疾病を特定しない)調査を行う。また、ドイツ集中治療・救急医学会(DIVI)、ドイツ呼吸器内科学会(DGP)、医学倫理アカデミー(AEM)、ドイツ緩和医学会(DGP)の指針を(現地でのヒアリングを含め)研究し、さらに、ドイツで問題となっている障害を理由としたトリアージについて検討する。 また、本年度行った医療従事者へのヒアリングを踏まえ、やはり現場で使えるガイドライン等の行動の指針が必要であると再認識したため、訴訟に発展した場合、医療従事者はどのような場合に免責されうるかという点につき、現状の4理論を踏まえ、民事と刑事それぞれに寄与すべき理論構築を目指す。
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