研究課題/領域番号 |
22K01283
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴木 將文 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (90345835)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 知的財産法 / 国際私法 / 民法 / 国際経済法 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、以下のような論点につき、検討する。 ①属地主義の内容(属地主義の実質的内容が何であるかを明らかにする。) ②特許権侵害法理における越境的行為の扱い(直接侵害、間接侵害及び共同不法行為の各観点からの、越境的行為に係る違法行為認定方法を明らかにする。) ③民事救済措置のあり方(損害賠償、差止め等について、国外の行為への適用可能性を明らかにする。)
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研究実績の概要 |
本年度は、研究テーマについての研究を進めるとともに、以下の研究成果公表の機会を得た。 第一に、サプライチェーンにおける特許権侵害の問題をテーマとするシンポジウムを、2022年度工業所有権法学会の研究大会で企画・実施し、そこで総論及び複数主体が関与する侵害についての報告を行った。これは、必ずしも越境的な事例を想定した検討ではないが、その検討の基礎となる課題についての分析であり、本研究にも非常に有意義であった。なお、報告内容については、同学会年報に論文を掲載予定である(2023年6月刊行予定)。 第二に、研究テーマに直接かかわる事例に関する裁判例について、詳しい検討を行い、その成果を研究会で報告するとともに、論文として公表した。 具体的には、一つは、L-グルタミン酸製造方法事件に係る東京地裁判決(東京地判令和2.9.24平28(ワ)25436号)である。これは、越境的取引に係る譲渡の申出、外国で生じた損害についての損害賠償算定等、本研究の対象とする論点を正面から取り上げている。もう一つは、ドワンゴ対FC2事件に係る東京地裁判決(東京地判令和4.3.24令元(ワ)25152号)及び知財高裁判決(知財高判令和4.7.20平30(ネ)10077号)である。この事件は、ネット配信される動画にコメントを同時に表示するサービスに係る物の発明と方法の発明に係る特許との関係で、サーバーが外国に所在する被告らのシステムが問題となった事例である。本事件では、特許制度に係る属地主義の意義が問われており、本研究にとっても、基礎的な論点について検討するうえで好適な検討対象となった。 第三に、国際的な研究活動として、EUの特許制度の動向に関する国際シンポジウムを開催し、欧州の専門家との意見交換を行ったほか、東南アジア等の研究者との意見交換も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度、日本工業所有権法学会において、本研究のテーマに関連するシンポジウムを企画し、報告を行う機会を得た。また、本研究テーマに直接関係する重要な裁判例(東京地判令2.9.24、東京地判令4.3.24等)に関する検討を行い、その成果を研究会で報告するとともに、論文として公表することができた。さらに、ドイツ等の研究者及び実務家との間で、本研究テーマに関し、意見交換をすることもできた(2023年3月の国際シンポジウム)。これらを通じて、本研究における基礎的な事項、すなわち、特許権の属地主義、特許発明の実施行為の地理的限界に関する解釈、複数主体が関与する行為と特許権侵害の関係、サプライチェーンにおけるライセンスのあり方及び消尽についての考え方、間接侵害論、外交で発生した損害についての損害賠償可能性、比較法研究等について、検討を深めることができた。具体的には、例えば、属地主義の下でも、侵害行為の一部が外国で実行される事例について、柔軟な法解釈によって特許権侵害を肯定する余地が十分にあることが、理論的検討及び比較法研究によって、明らかになった。また、複数主体が関与する特許権侵害について、理論的な類型化を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、前述のドワンゴ対FC2事件の控訴審判決(知財高裁特別部判決)が5月末に出されたことから、その分析を行い、論文として年度内に公表予定である。また、6月に開催される日本工業所有権法学会のシンポジウムにおいて、越境的な行為による特許権侵害の問題が取り上げられる予定であり、その結果を(場合によっては批判的に)踏まえつつ、理論的及び実務的な検討を進める予定である。さらに、標準必須特許を素材として、国際的な特許紛争の動向をフォローする。また、海外(欧州、米国及びアジア)の研究者との意見交換も継続的に実施する。これらを通じて、特に、属地主義の限界、発明実施行為の解釈、間接侵害論等に焦点を当てつつ、研究を深化し、その成果を公表する。さらに、2024年度は、越境的な侵害行為に対する救済措置のあり方、国際的な侵害訴訟の審理・判断体制のあり方等の検討を行うとともに、研究の総まとめとしての論文の公表と研究成果公表のための研究会の開催を予定している。
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