研究課題/領域番号 |
22K01285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
肥塚 肇雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授(任期付) (30295844)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | プラットフォーム / MaaS / 契約責任 / 被害者救済 / 自動運転 / 消費者 |
研究開始時の研究の概要 |
MaaS(Mobility as a Service)は、MaaSプラットフォームを介して利用者は鉄道、バス、タクシー及びマイクロモビリティ等の交通モードをスマートフォンのアプリ上で「検索→予約→決済」を一括で行うことになる。本研究は、レベル4の自動運転がMaaSに組み込まれた近未来社会を想定して、利用者がMaaSプラットフォーム上で予約し決済した後、自動運転バスの遅延により宿泊不能となったときの遅延損害または自動運転タクシーに乗車中の事故による人身損害が発生したという典型事例を基に、誰が責任を負うのか、被害者の損害はどのようにしててん補されるのかついて、契約法的視点から、考察する。
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研究実績の概要 |
まず、MaaSについて、従来の研究を踏まえた発展的研究として、現実空間移動を基礎として、仮想空間移動又は仮想時間移動の可能性について考察した。これは従来にはない考え方である。 次に、プラットフォームについて、文献調査を行い、プラットフォームの法的関係について考察している。プラットフォームでは、不可避的に個人情報を収集することになるため、保護法との関連性がある。MaaSにおいて契約責任を考えるとき、各交通事業者の代表がプラットフォ-ム外において、利用者との間で、旅客運送契約を締結することになると思われる。しかし、プラットフォームの内容次第では、各交通事業者を束ねる旅行代理店のような存在がプラットフォーム上で利用者と契約を行うことも考えられる。 被害者救済については、道路運送法等に係る陸上交通について考察している。利用者が人身損害又は物損を負い、交通事業者が旅客運送契約上の債務不履行責任を負う場合、損害賠償賠償請求権を行使することによって救済される途がある。併せて、陸上運送の手段である鉄道(及び軌道)や自動車(鉄道、バス及びタクシー)内で利用者が人身損害を負った場合、鉄道については、鉄道事業者は不法行為責任(民法709条)を負うが、バス事業者及びタクシー事業者は運行供用者責任(自賠法3条)を負う。利用者ではない第三者が鉄道等又は自動車に衝突されて人身損害を負った場合も709条又は自賠法3条に基づき損害賠償請求権を行使し得る。問題は、プラットフォーマーが、このような人身損害について責任を負うかという点である。現在のところ、プラットフォーム上なすべき事項をなしていない等の注意義務違反等の過失があったとしてもそれと人身損害との間には因果関係が認められないように思われる。ただ、遅延や乗り遅れ等の損害はプラットフォーマーが負うべき場合があるように考えている。 さらに研究を深めていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
進捗状況は必ずしも著しく進んでる訳ではないが、研究の概要はおおむね把握できているように思う。ただ、これまでの研究は、ベーシックな基礎的研究に取り組んできた。 今後、取り組みたいテーマは、MaaSに組み込まれた交通機関の事故により被害者が被った人身損害について、プラットフォームにおける責任の範囲が誰にどこまで及ぶのかについて、自動車の場合、レベル4になると、法的に責任を追及できるかどうかは別として、システム責任を想定できるので、当該システム責任とプラットフォーマーの責任とがどのような関係にあるかは検討すべき課題であり、解明が困難な問題である。すなわち、システムとプラットフォームとが密接なデータ連携基盤で結びついていた場合には、切り離せないことから、プラットフォーム上の不具合が自動車事故に結ぶつくことがありうるからである。典型例は、セキュリティフォールが生じたことによるサイバー攻撃である。 このような問題についての一定の見解を導くためには、まだまだ時間がかかりそうである。 引き続き、このような問題にもチャレンジしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終的な到達点としては、MaaSにおける責任問題は、従来の伝統的な近代私法の原則の中に落とし込んで解決し得るものか否かについて一定の結論を導くというものである。とくに、MaaSに組み込まれた交通機関、すなわち、鉄道、バス及びタクシーのうち、バス及びタクシーがレベル4で自動運転化された場合、利用者に人身損害が生じたとき、プラットフォームを介在させると、責任主体が誰なのかが極めて漠としてくる。責任主体が漠としてくると、近代法の原則に基づいて処理することが遠くにあるように思われてくる。 デジタル化による人身損害の法的処理は、被害者救済の観点と、技術開発及び事故再発の防止の観点とで分けていくべきかもしれない。 今後は、このような点にも意識して、研究を進めて行きたい。
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