研究課題/領域番号 |
22K01297
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分05070:新領域法学関連
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研究機関 | 南山大学 (2023) 福岡大学 (2022) |
研究代表者 |
實原 隆志 南山大学, 法務研究科, 教授 (30389514)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | GAFA / SNS / 情報法 / 情報 / 表現 / ドイツ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、SNSで投稿された「不適切」な投稿に対する、SNS事業者による削除等の措置の規律のあり方を明らかにすることである。事業者と利用者の利益を適切に調整するためには、SNS事業者が利用規約において規約違反となる基準や規約違反の投稿に対する制裁的措置を明確に定め、そうした措置に先立つ手続も定め、かつ、適切な内容をもって定める必要があり、そうした利用規約に基づいて個別の紛争事例において当該措置の合法性を司法の場で検討する際には、アカウント保有者の属性や投稿時期、制裁の種別などが指標とされるべきであることを、ドイツの議論を参照しながら明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究は、SNSで投稿された、「違法」ではないものの「不適切」な投稿に対する、SNS事業者による削除等の措置の規律のあり方を明らかにすることを目的に行っている。そして、最終的には、SNS上の違法とまではいえない投稿に対する、SNS事業者自身による判断に基づく削除等の措置を規律する必要性とその内容・手法を明らかにすることを目的として研究を進めている。 2022年度に、議論の枠組みの設定を目的に、事業者と利用者の利益の法的な位置づけを検討したのに続き、2023年度はSNS事業者の定める利用規約のあり方の検討を進めた。ドイツ民法上の「規約の透明性」(ドイツ民法307条1項2文)、「法律の基本的な考えとの整合性」(同条2項1号)、「不相当な不利益」の有無(同項2号)などに関する議論、これらの規定に関する2020年7月のBGHの判決とそれに先立つ下級裁判所での諸判決やそれに関する議論を確認した。加えて、EUのデジタル・サービス規則をめぐる動向を、ドイツ国内の2021年7月のBGHの判決も踏まえて追った。 8月下旬から9月上旬にかけてドイツ国内(ミュンヘン、パッサウ)にて現地調査を行い、ドイツ語文献の収集や関係者へのインタビュー調査を行った。 これらの研究を通じて、ドイツではデジタル化が憲法論や人権論にもたらす影響が検討されるに至っており、国内でも「デジタル立憲主義」をめぐる議論が盛んになっていることを確認できた。これらの研究を業績として公表するには至らなかったが、本研究を進展させる研究は進めることはできたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2023年度においては本研究における関心に基づく研究を進展させることはできたが、勤務校が変わり、所属も法学部から法務研究科に変わったために、転勤や授業準備にかなりの時間を要することになった。それに伴い、今年度の研究成果を公表するための準備に充てる時間を中心に、本研究を進めるための時間に制限が加わった。そのため、当初の計画よりも遅れが生じることになった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、まず、2023年度に行った研究の成果の公表やそのための準備を進めたい。研究のテーマとしては、司法の場での規律の在り方を明らかにすることを目的に、利用規約の適用場面で用いられるべき指標の検討に移りたい。なかでも、利用規約を具体的な紛争において司法の場で適用して、当該措置の合法性を検討する際に用いられるべき指標について検討する。いつ・誰が(何が)・どのように・どこでといった、観点で、投稿時期、アカウント保有者の属性、コンテンツの種別、表示場所等が指標となる可能性を中心に検討する。そして、本研究全体の総括として「事業者と利用者の利益の法的な位置づけ」・「利用規約のあり方」・「利用規約の適用場面で用いられるべき指標」の全体を研究成果として公表できるように研究・整理を行う。そして、ドイツ国内での研究調査を、2024年度も勤務校での授業のない、8月下旬ごろに行いたい。 ほかにも、本研究の申請時以降の議論動向も踏まえ、EUのデジタル・サービス規則やデジタル市場規則をめぐる動向や、日本国内で展開されている「デジタル立憲主義」にも検討対象を広げたい。
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