研究課題/領域番号 |
22K01327
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 武 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (70302784)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 主流派政党 / キリスト教民主主義政党 / 保守政党 / 社会民主主義政党 / 政党組織 / 中道右派政党 / 政党衰退論 / 政党政治 / ヨーロッパ政治 |
研究開始時の研究の概要 |
今世紀のヨーロッパでは、政党政治の中核を占めてきた中道左派・中道右派の主流派政党の衰退が指摘される。しかし、ポピュリスト政党との激しい競争にさらされている中道右派の方が、中道左派よりも衰退していない矛盾は未解明である。本研究は、従来の研究のように有権者の需要側の要因や政党システム上の要因ではなく、政党組織など供給側の要因に注目し、量的・質的分析と実験を組み合わせる新たな研究手法を用いて、ヨーロッパ内の衰退のバリエーションに接近する。このようなアプローチを取る本研究は、ヨーロッパを超えた現代の政党デモクラシーについて、組織面からの構造変化の条件の理解に貢献すると期待できる。
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研究実績の概要 |
本年度は、4年間の研究計画の1年目として、ヨーロッパの中道右派の主流派政党の選挙や組織に関する分析の基礎となるデータの収集、および政党の衰退や政党組織の変換に関する理論的枠組み構築のための研究動向の再検討を行い、予備的な分析をすすめるという目的に沿って、研究を行ってきた。 全体の枠組みおよび予備的分析を元にした中間成果については、研究期間開始前から進めてきた準備を活かして研究プロポーザルを投稿し、CES、EPSA、APSA、ECPRと一連の国際学会に採択された。2022年度前半はコロナ禍の渡航規制解除が十分進まなかったために参加を断念せざるを得なかったものの、論文準備を進めた成果を活かしてアップデートしたプロポーザルをを2023年度のCESに送り、再び採択され、報告予定である。 予定していたイタリアなどの現地調査についても断念せざるを得なかったものの、代わりにオンラインで収集可能なデータやデータセットの入手と、それらを踏まえた分析用のデータセットの構築、予備的分析を進めている。 研究については、2022年9月のイタリア総選挙関連の論考や報告等に反映して公表した他、イタリアに関連した有権者の党派性の変容に関する部分については、日本EU学会の研究大会でEU統合支持等に関連した部分を報告し、執筆した論文が査読論文として採択されて、2023年度前半に刊行が決定している。また、ドイツとイタリアの有権者支持の比較についても、EU統合支持等に関連した内容について論文を執筆して提出し、2023年度に論文集として刊行されることが決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中道右派の主流派政党の比較分析については、採択前から準備してきた予備的な考察を基に、関連研究テーマの先行研究の検討やデータの準備を進めてきた。 中道右派主流派政党の比較計量分析に不可欠な政党関係や選挙関係のデータセットを調査し、新規に公開されたものも含めて各種入手して、それぞれの特徴を検討している(PPDB, ParGov、CHES、V-Partyなど)。特に懸案となる政党組織のデータについては、近年のデータセット整備で、エキスパートサーベイや政党綱領に関する分析が可能となってきた。別途行っている政党組織の共同研究を通じて、データハンドリングや分析手法の選定などを進めてきた経験を活かして、収集したデータの分析を進め、分析の前提となるデータセットを作成している。合わせて質的な調査については、主にオンラインで情報収集を進めている。また、主流派政党の衰退に関する理論的考察については、主流派政党の有権者基盤や政党組織の研究に加えて、政党の制度化研究や政党システムの制度化研究など関連研究の理論的知見や分析手法の検討を進めてきた。 研究計画の内、中間成果報告のための国際学会での報告、および現地でのインタビューと資料調査は、新型コロナ感染の渡航制限等の事情で断念せざるを得なかった。この点については、代わりとなるオンラインでのデータや資料の収集や先行した論文執筆、関連テーマの分析と国内学会報告や査読誌への投稿・採択などの優先順位を再検討して研究を進めた。後述のように、中間成果報告や現地調査については、すでに2022年度末までに再設定を終えて準備している。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に当たる来年度は、引き続き主流派政党・中道右派政党の変化に関する理論的枠組や分析手法の検討を進めた上で、計量分析用のデータの整備、オンラインと現地調査を含む質的なデータ収集を進める。その上で、中間成果の公表を図り、コメントを踏まえて見直し、最終成果となる論文の公表に向けた検討を図る。 中間成果については、すでに前年度の考察を基盤に修正した論文プロポーザルが採択されて、2023年6月のヨーロッパ研究評議会(CES)のレイキャビク大会での報告を行うことになっている。ここで政党研究関係の専門家からのコメントを受けて修正し、英文査読誌への投稿を行う。可能であれば関連テーマで海外研究者との共同研究を推進したい。関連の政党政治の変化についての分析は、7月と9月に別の研究会での報告予定が決定している。さらに、日本政治学会ではテクノクラートと政党政治の関係から民主主義の変化を扱う報告と論文執筆を行う予定である。 海外での現地調査については、イタリアの調査を再設定して、7月に実施するべく手配を進めている。さらに、他国も含めて2月から3月の間に、再度ヨーロッパでの現地調査を設定すべく、予備的な検討を行っている。 データセットについては、ポピュリズム関係、政党綱領関係など個別分野のデータにも視野を広げて、本研究テーマの分析に必要なデータセットを拡充していく。 今後も新型コロナの感染状況やその他の事情による研究計画の修正が生じうることを予め想定して、代替となる国内での作業、対面開催ではないオンライン開催のワークショップでの成果報告の機会確保など、代替的な研究推進策を準備する。
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