研究課題/領域番号 |
22K01333
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
稗田 健志 大阪公立大学, 大学院法学研究科, 教授 (30582598)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 比較政治学 / 政党システム論 / 比較福祉国家 / 政治行動論 / 社会的投資 / 比較政治経済学 / 福祉国家 / 政党システム / 社会的投資国家 / ポピュリズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、しばしば政党システム論と比較福祉国家論という別々のサブディシプリンで検討されてきたポピュリスト急進右翼政党の台頭と福祉国家の再編成とを、有権者レベルの構造変化から統一した枠組みで説明しようとする試みです。ポピュリスト急進右翼政党の台頭については、これまで政党システム論が研究を蓄積してきたが、福祉国家論が政党システム論の理論展開を自らの議論に取り込むのは遅れた。そこで、本研究は、ポピュリスト急進右翼政党の台頭と福祉国家の「社会的投資国家」化が、主要な政治的対立軸が経済的左右軸から社会文化的対立軸へと転換しつつあるという同じ現象の帰結であるとする仮説をデータにより検証する試みである。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、先進工業民主主義国におけるグローバル化・脱工業化・技術革新といった経済の構造変動が政党システムのあり方と福祉国家のあり方にどのような影響を与えてきたのかを探ることにある。この問題設定に答えるためには、①経済の構造変動による有権者レベルにおける政策選好および政策的対立軸の変化、②有権者レベルの政策的対立軸の変化を反映した政党システムの変化、③政策的対立軸の変化による福祉国家をめぐる対立の質的な変化、以上の3つのレベルを探求する必要がある。そこで本研究課題は、各レベルでの量的データを用いた分析を通じて、ポピュリスト急進右翼政党の台頭を中心とする1990年代以降の政党システムの変化と、規模をめぐる争いから「事後的補償か、予防的投資か」という質をめぐる争いへと変化してきた福祉国家の再編成を統合的に理解することを目指している。 研究2年目となる2023年度は、研究の場所をハーバード大学ウェザーヘッド国際問題研究所に移し、本プロジェクトに集中的に取り組んだ。上記③のレベルにおける福祉国家の変容については、社会経済軸と社会文化軸という二次元に再編成された政党システム上の政権の政策位置が1970年代以降の育児休業制度の導入・発展プロセスにどのような影響を与えてきたのかを実証分析する論文をワーキングペーパーとして書き上げた。 また、上記①のレベルにおける、経済の構造変動によって生じた有権者レベルにおける政策選好のあり方を探る研究として、2023年10月に日本在住の市民を対象としたオンラインサーベイを行った。その結果、福祉改革の賛否の決定には年金政策が最も重要ではあるが、日本の有権者においても、社会文化的なリバタリアンの方が社会文化的権威主義者に比べ、社会的投資政策にプライオリティを置いていることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目となる2023年度は、有権者レベルにおける経済変動と政策選好・支持政党の再編成との関係について分析を進めることであった。そうした目標は概ね達成され、実際に日本の有権者を対象としたオンラインサーベイを実施することができた。既存の調査は福祉選好について、「政府の役割を重視し、再分配の規模を大きくするか」あるいは「市場の役割を重視し、再分配の規模を小さくするか」といった大まかな質問してこなかった。それに対して、本調査は社会政策を社会的補償政策と社会的投資政策に分け、個別の政策に対する選好・優先度をコンジョイント実験やトレードオフ質問、ポイント配分法といった手法で詳細に尋ねるという特徴を有する。加えて、西欧8カ国で実施されたオンラインサーベイ調査の質問票をレプリケートすることで、そうした国々の市民と日本の有権者の選好を比較することを可能にしている。本調査データを使用したワーキングペーパーはすでに複数執筆済であり、2024年度には複数の学会で報告することが決まっている。 加えて、社会経済軸と社会文化軸という二次元に再編成された政党システム上の政権の政策位置が、1970年代以降の育児休業制度の導入・発展プロセスにどのような影響を与えてきたのかを分析した。二次元政策空間における各政党の政策位置を選挙の際に出される政権公約集のテクスト分析から推定し、それを各単独・連立政権の政策位置へと集約するデータセットを構築し、OECDの公開している各種産休・育児休業制度(無給・有給・長期・男性向け等)の導入・拡充を示す指標を従属変数とする回帰分析を行った。その結果、政権の社会経済的な政策位置は影響せず、各政権の社会文化的対立軸上の位置がその指標の変化に統計的に有意に影響していることを示すことができた。この研究成果も海外の学会で報告することがすでに決まっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、これまで挙げてきた成果を各種学会で報告し、学術誌に投稿するとともに、複数年・複数国に渡るミクロレベルの世論調査データと、先進諸国の選挙時のイシュー・セーリエンスを新聞・TVのテクスト分析によって探ったデータを結びつけ、経済的左右軸と文化的リバタリアン-権威主義軸という2次元空間における有権者の政策選好と政党システムとの関係を分析する。
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