研究課題/領域番号 |
22K01344
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
原田 久 立教大学, 法学部, 教授 (70275460)
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研究分担者 |
若林 悠 大東文化大学, 法学部, 准教授 (80843250)
山田 健 静岡大学, 人文社会科学部, 講師 (80906694)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 各省設置法 / ESS / 建設院設置法 / クロス・ナショナルな連合 / セクショナリズム / CCS / ライン・オーガニゼーション / 電気通信省設置法 / 電気通信機構共同委員会 / GHQ / 民間通信局 / 民間運輸局 |
研究開始時の研究の概要 |
各省設置法は中央省庁にとって最も重要な行動基準であり、その形式や内容は戦後日本の行政に大きな影響を与え続けてきた。占領期における各省設置法の立案過程には、各省設置法に上位する内閣法や国家行政組織法の立案過程を主導したGHQの民政局のみならず他の局も積極的・継続的に関与した。にもかかわらず、先行研究では、民政局以外の各局の関与の実態や当該関与がもたらした影響が明らかにされてきたとは言いがたい。 そこで本研究の目的は、GHQの各局による各省設置法の立案過程への関与が同法の形式・内容にもたらした影響を解明するところにある。
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研究実績の概要 |
2023年度は、国立国会図書館、外務省・外交史料館及び国立公文書館が所蔵する、連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の民政局(GS)及び経済科学局(ESS)の史料や関連する日本政府側の史料を収集して、占領期においてほぼ全ての府省等が GHQ/SCAPから機構改革を迫られる中でなぜ建設院(後の建設省)についてだけ改革がなされなかったのかを解明した。 河川や道路など主要な建設行政を所管する内務省国土局は、戦前から各省に分散している建設行政を一元化する“大”建設省を早くから構想し、建設行政を担当するESS・産業課の了解も得ていた。しかし、GHQ/SCAP のうちESSやGS以外のGHQ各局は“大”建設省構想に当初から異論を示していた。また、建設行政機構の改革は、戦後しばらくは ESS・労働課が担当する公共事業における要員調達問題としてフレーミングされていた。そのため、昨年度研究した逓信省・電気通信省設置法の立案過程とは異なり、内務省国土局とESS・産業課の間に“大”建設省設置に向けた「クロス・ナショナルな連合」(ペンペル1987)が形成されなかった。つまり、①所掌事務を巡るGHQ/SCAP内部のコンフリクトと②組織拡大を目指す日米間の「クロス・ナショナルな連合」の未形成という二つの要因が“大”建設省構想の実現を阻み、結果として部局数が限定され所掌事務の少ない“小”建設省の設置につながったのである。 “小”建設省の設置は、内務省国土局と運輸省、農林省及び商工省といった官庁間で戦前から生じていたセクショナリズムをGHQ/SCAPが結果として容認したという点で、その後の日本の省庁間関係に深い影を落とすことになった。公共事業を巡るセクショナリズムは、主権回復後もしばらく止むことがなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度では、研究代表者(原田 久)は、国立国会図書館、外務省・外交史料館及び国立公文書館が所蔵する連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)の民政局(GS)・経済科学局(ESS)の史料や関連する日本政府側の史料を収集し、分析を行った。また、その過程で研究分担者との中間研究会を開催した(1月27日(土))。そこでは、研究代表者は「各省研修体制の形成」について、研究分担者の若林 悠氏(大東文化大学)は「気象庁と政策評価制度-制度化過程の側面史-」について、そしてもう一人の研究分担者である山田 健氏(静岡大学)は「技術官僚における戦前と戦後-港湾政策をめぐる連続と断絶-」についてそれぞれ発表し、議論を行った。その結果、研究代表者は、各省設置法に関する主たる研究成果を論説「建設院設置法制定の政治過程」(立教法学110号)と題する論文にまとめ、公表した。加えて、若林氏は、上記報告を論説「気象庁と政策評価制度―組織的価値の制度化過程の側面史」(大東法学33巻2号)として公表した。 また、研究代表者は、上記研究成果の一部を用いて、韓国行政学会(KAPA)・夏季国際大会(6月)において研究報告「Rethinking the Administrative State: In the Case of Japan」と題する国際学会報告を行うとともに、日本政治学会において河合晃一氏(金沢大学)と共同で「自治行政と自治財政の機関哲学」(9月)と題するポスター報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
逓信省・電気通信省設置法の制定及び建設院・建設省設置法の制定という二つの政治過程に関する分析からは、占領期における行政機構の設置・維持・拡大に影響を与える二つの要因を抽出することができた。すなわちそれは、「クロス・ナショナルな連合」(ペンペル1987)の形成が設置法制定を促進させる一方で、他省との間での所掌事務に関するコンフリクトが設置法制定を滞らせるというものある。 そこで、2024年度は、当該仮説を検証すべく、逓信省・電気通信省や建設院・建設省と同じ事業官庁の一つである農林省、とりわけ水産庁設置法の政治過程についての研究を行う。より具体的には、2022年度及び2023年度に続き、国立国会図書館や国立公文書館が所蔵する連合国最高司令官総司令部(GHQ/SCAP)・天然資源局(NRS)や民間運輸局(CTS)の一次史料や関連する日本政府側の史料を収集する。これらの史料に基づいて、研究代表者は、占領期における水産行政機構再編の政治過程を、主として「クロス・ナショナルな連合」間のコンフリクトが設置法の制定を停滞させた時期と「クロス・ナショナルな連合」が設置法の制定を促進させた時期という二つの時期に分けて研究を進める。水産行政機構再編の政治過程は、「クロス・ナショナルな連合」間のコンフリクトと「クロス・ナショナルな連合」の形成の二つが、設置法制定を伴う行政機構再編を停滞させたり加速させたりした点で興味深い事例を提供する。また、研究分担者の若林 悠氏(大東文化大学)は通商産業省設置法に関する研究を、そしてもう一人の研究分担者である山田 健氏(静岡大学)は港湾行政を中心とした運輸省設置法に関する研究を、それぞれ進めていく。
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