研究課題/領域番号 |
22K01357
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分06020:国際関係論関連
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研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
吉本 秀子 山口県立大学, 国際文化学部, 教授 (00316142)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 沖縄返還 / 琉球列島米国民政府 / 沖縄返還協定 / 冷戦 / 冷戦史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、1972年5月の「沖縄返還」で解散した米国政府の沖縄統治組織「琉球列島米国民政府(USCAR)」(以下、「米国民政府」)が返還前にどのようにその業務を日本政府や他の米国機関に移管したかを明らかにする。米国側の一次史料を分析し、以下の「問い」を実証的に解明にすることを目指す。1) 米国民政府はどのような業務を①日本政府、②発足予定の沖縄県庁および③県内市町村、④企業に移管したのか。2) 米国民政府が日本側に移管せず、返還後も米国側の管理とした業務は何か。これにより、本研究は、返還前と返還後がどのように連続し、どのように不連続だったのかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
1972年の日本復帰後も沖縄県には米軍基地がそのまま残されたことから、沖縄返還とは何だったのかという疑問が提示され続けている。 そのなかで、同年5月の沖縄返還までに解体されたのが、米国の統治組織だった「琉球列島米国民民政府(USCAR)」(以下、「米民政府」とす る)である。本研究は、この統治組織の解体過程に着目し、1)米国政府はそれまで米民政府が担当していた統治業務をどのように仕分けし、日本政府 および沖縄県に移管しようとしたか。2)さらに、その中で日本側に移譲されなかった業務は何だったか。この2点を米国側の一次資料に基づき解明することを目的としたものであった。 2年目にあたる2023年度は、これまでに米国公文書館から持ち帰った米陸軍省の沖縄返還期における資料を分析するとともに、当時の関係者の記した手記・書籍、その他の参考文献の検討を実施した。沖縄返還については多くの先行研究の蓄積があるが、本研究が着目する琉球列島米民政府の実相に関する先行研究が少ない状況にあった。そこで、本研究は、沖縄返還期の米民政府とその上部組織の一次資料に依拠しながら、在沖縄の高等弁務官のもとで統治業務の日本への移管に関する仕分け作業を担当した米民政府の解体過程を記録した文書類を分析した。これにより、米民政府が、米軍の活動を後方で支援しながら、沖縄住民の統治を行うという軍事的色彩の強い行政を行なっていた実態を明らかにすることができた。 その成果として明らかになったのは以下の3点である。1)米国が返還後も日本側に移譲しなかった統治業務があった。2)沖縄返還協定において、日本政府は、米国が統治時代に発令した布告・布令・指令などの軍法類の効力を返還後も存続させることを承認した。3)これにより、日本政府は米国の占領特権の制度化を後押しすることになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに収集した資料の分析により、本研究が目指していた米民政府の解体過程を米国側の一次資料で分析するが可能になった。また、日米双方の資料のデジタル化が当初の予想以上に進み、ネット等で目的の資料を閲覧することが可能になったことも地方に住む研究者としては大きな意味を持つ。日本国内にも米国資料のコピーはあるが、本研究に関しては東京、沖縄まで資料収集に出かけていかなければならなったが、ネット経由で閲覧できるものが増えた。 さらに、本研究の成果の一部として、論文「沖縄返還にみる占領特権の制度化」を執筆、近刊予定の書籍『日本復帰50年 琉球沖縄史の現在地』(東京大学出版会、2024年6月)の一部(第1章の部分)として公表できる見込みである。 また、本研究のもう一つの目的であるグローバル冷戦という枠組みの中で沖縄返還を位置付けるために、二次資料を中心とした検討を行い、沖縄返還がその後の日米関係に与えた影響を分析・考察することができた。その過程で、隣接領域の研究者らと昨年度に続き、交流することができた。グローバル冷戦史からみた沖縄返還と考えるという本研究の当初の目的を踏まえると、前述の分担執筆書の刊行により、隣接領域の研究者と共同で成果を公表できることになったことは意義のあることだと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる2024年度は、本研究のもう一つの目的であったグローバル冷戦史の中で、米国の沖縄占領統治および沖縄返還が、その後の日米関係と東アジア地域に与えた影響について考察する。これまでに持ち帰った一次資料および関連する二次資料を、返還前の時期に焦点を当てて分析を進めるだけでなく、さらに、第二次世界大戦、特に沖縄戦からの連続的な流れの中で捉え、沖縄戦から続く占領統治が、沖縄返還によってどのように制度化されたか、占領統治の残滓はどのようなものだったのか、について考察を進める。 特に、返還期の資料から見えてくる米民政府の統治政策の実態について、代表研究者が過去に収集してきた資料を含めて分析の対象として、米国の沖縄統治の実相について、さらなる解明を目指していく。 また、代表研究者がこれまでに雑誌論文として公表してきた関連の著作をグローバル冷戦という視野で捉え直すとともに、昨年度までの成果として代表研究者も分担執筆した書籍『日本復帰50年 琉球沖縄史研究の現在地』(歴史学研究会編、東京大学出版会、2024年6月)が刊行予定になったことを受け、この本で共著者から提示されたグローバル冷戦の中の沖縄住民の闘争という視点を踏まえて、本研究の課題である琉球列島米国民政府(USCAR)の存在と返還時における解散、さらに、その歴史的意義を明らかにすることを目指す。
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